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37: 帰宅

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「おかえり~!ラートン!お嫁さん!久し振りに二人の顔を見れた気がするね!もう毎日飛び回っちゃって…、私は淋しいよ~。お嫁さんは今日も可愛らしいね♪ラートンたら幸せ者d「ギャァァウウウウ…!僕のイオンウーウァを見るな!近寄るな!父上あっちいけ!!」

好みが似ているであろう血が近い貴方が番ちゃんを褒めたらラートンが威嚇するって、何回囓られたら覚えるのかしらね……。番ちゃん♪今日もお疲れ様ねぇ~。さ、お夕飯に行きましょ♡」

バドワイザ邸についたラートンとイオンウーウァを、朗らかな笑顔で伯爵夫妻が迎える。

少し余計な事を言ってラートンに囓られているが、伯爵の言う通り、最近ラートンとイオンウーウァの二人は各地を忙しく飛び回っていた。

勿論理由は、ラートンが片時もイオンウーウァと離れがたく、そして体力を使いきって倒れる様に眠らないと色々我慢出来ないからである。

毎朝、夜明けと共に起きるラートンが、朝の鍛練やちょっとした書類仕事に朝食を終えて出掛ける直前にイオンウーウァは起こされ、メイドたちが目にも止まらぬ早さで身繕いし、韋駄天丸や明けの明星丸や馬車に乗せられて二度寝したり食事をしたりして目的地まで揺られていく。
最近、その様なスタイルがイオンウーウァの日常になりつつあった。

ラートンが仕事で行く先々にイオンウーウァも一緒に行き、その近隣で観光と種々のアクティビティ、グルメを楽しむのだ。
毎日がデートで、毎日が旅行だった。

そうして仕事とデートで充実した一日を送り、イオンウーウァを抱いたり背中に乗せたりして負荷をプラスした筋トレで体力を使い果たしてから入浴。
そして最後、寝る前にイオンウーウァをたっぷりマッサージして、イオンウーウァ成分をたっぷり補給したらベッドに飛び込んであっという間に眠りにつく。

これが紳士ラートンの大好き♡♡なイオンウーウァを襲わない為に編み出した秘策だった。

毎日、同じベッドで眠りにつくものの、抱き締めてキスを軽く交わすだけで耐えれるのは、偏にラートンの、襲う気が起きない様体力を0にする圧倒的努力と色々な忍耐の賜物だったのだ。


「今日は何処に行ってきたの?」

ラスカリー伯爵夫人の問い掛けにイオンウーウァは少し思い出すようにしながら答えた。

「えっと……チーズの産地のお山で……。」

「ああ、アルペソね♪じゃぁ、私の好きなウォッシュチーズとグーズの好きなミモレットと一緒に、アルペソのしょっぱーいブルーチーズもアペリティフに出しましょうか。」

「勿論、心得ております…。」

ラスカリーがニコニコと言えば、隣に付き従っていたメイドの一人がニッコリ返す。
どうやら、従業員にも土産として配られるブルーチーズが凄く楽しみなのを隠せない様子だった。

「フフフ、アルペソのブルーチーズは少し香りの強い草を食べる山羊の乳で作られててね、酔っ払うかと思う程に強い香りとしょっぱさ、そしてザラリとした青カビがたっぷりで……♡とっても美味しいのよ~♡♡って、番ちゃんは今日アルペソで沢山試食してきたんだったわね、どう?好みのチーズ屋さんはあった??」

ラスカリーの言葉にイオンウーウァがニッコリ頷けば、じゃぁ、今夜は貴方の好みも知れるのね♪嬉しいわ!っと笑いながら食堂の扉を開けた。

ラスカリーのその言葉を何だか嬉しく思いながら、イオンウーウァは口を開いた。

「ラスカリーお、お義母様…?……あの、実は……。」


「んまぁぁぁ!!!私の事をラスカリーおかぁさまって呼んでくれたわぁぁぁ!!!」

「な、何だってーーーーー!??」



イオンウーウァと呼んで欲しい。

イオンウーウァはそう伝えたかったのだが、ラスカリーとグズーリヤの絶叫に阻まれ、伝えるにはもう暫く待たなければならなかった。



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