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34: ヤーーフーー!

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けここ!(ヤッタァ!オレニノッタ!)

勝ち誇った鳴き声をあげる韋駄天丸に乗って、イオンウーウァとラートンが街道脇を進む。

ぎょるるるるけこここけこ…!((ハシルゾー!))((トブゾー!エッ?トバナイノ??ハシルノ??))((コッカラハハシルンダヨー!ハシルゾー!))((マジカーハシルゾー!))

その先に犇めいているのは沢山のグリフィンと豹紋リザードランナー、バジリスクランナー、ランニングサラマンダー達で、皆、今か今かと地面を掻いて出発を待っていた。

「うわぁ!沢山いるのね!」

「バドワイザ商会の保持する牽獣の数はこんなものじゃないけど、僕の可愛い奥さんと一緒に見た中では一番大群だねぇ♪
王都だけじゃなく、隣国王都やもっと遠い外国にも運ぶから、ルート毎に最適な牽獣が集まってるんだよ!皆走りたくてウズウズしてるだろう?可愛いよね!
まぁ、一番可愛いのは、リザードランナー達を見て喜んでくれてる僕の可愛い♡可愛い♡奥さんだけどね♡♡」

「いっぱいいるわ!皆素敵!!
ねぇラー様!私も一人でリザードランナーやグリフィンに乗れる様になりたいわ!!一緒にラー様と乗るのも好きだけど、一頭ずつ乗って二人で一緒にお散歩したりもしたいの!!小さな頃から、一人で乗馬するのが夢だったの!」

イオンウーウァが目を輝かせて言えば、ラートンはその様子をそれはそれは嬉しそうな顔をして見つめ、弾ける笑顔と筋肉で応えた。

「勿論だよ!僕の可愛い番さん♡♡嬉しいな♪番さんの小さい頃からの夢を知れるなんて!夢を叶えてあげられるなんて!リザードランナーとグリフィンに乗れれば馬もペガサスもケルピーも乗れるから、僕と一緒に何処でも行けるようになるね♡♡楽しみだなぁ!!」

その言葉に、イオンウーウァも嬉しそうに笑う。
すっかり封じ込めてしまっていた幼い頃の記憶が蘇ったのが、とても嬉しく、そして、それを知ってか知らずか、ラートンが小さな頃の夢を知って喜んでくれたのが更に嬉しかったのだ。

「ヤーーフーー☆お前達!!茹で卵はしっかり食べたか?水はしっかり飲んだか??!そろそろ出るぞーー!」

ぱしりぱしりとリザードランナー達の逞しい腿を平手で景気良い音をさせて叩きながら一人の使用人が彼等の健康状態等の最終チェックを行っていた。

「嬉しいな♪僕もね、小さい頃から牽獣達に乗るのが大好きだったんだ♡僕達、小さい頃から中々気の合う二人だったんだね♡♡
…………君が、ご両親を失くしてしまって得られなかった分の幸せと愛情も、僕で良ければ幾らでも補充してあげる♡だから、沢山我が儘言って僕をてんてこ舞いにさせてね…♡」

(ヤーーフーー!って知ってる!良くお馬さんごっこの時にママが言ってた!)

使用人の掛け声に衝撃を受けたイオンウーウァは、ラートンが明るく喜んだ後、彼女の頭頂部にそっと願うように呟いた言葉を聞いてはおらず、がばりとラートンに向き直った。

「ぅぉっ「ラー様!ヤーーフーーって何!?」



すんでの所でイオンウーウァに顔面頭突きを喰らわされるのを回避したラートンが焦りの声を上げる。

ラートンのそんな急な動きに対応しようとたたらを踏んだ韋駄天


(オレノウエデナンダカイソガシイナ…。)

と呆れつつ嘆息し、ラートン&イオンウーウァの動く初キスプレイス明けの明星丸は

(アイカワラズダナァ…。)

と荷物を背に乗せられながらそんな二人を生温かく見守っていた。




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