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8: 到着

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その後、隙あらばイオンウーウァと一緒に過ごそう、一緒に寝ようとするラートンを数人がかりでふん縛って一夜を明かし、番フィーバーという伝説をホテルに残してアナグマ一行はサピエンを出国。

人族の国の中でも獣人との交流が一番盛んと言われているホサルート国を超高速スピード(ラートンによる超高速音声ガイド付)で駆け抜け、モフーラ国へ辿り着いた一行は、騎馬警備隊が緊急事態かと並走しながら訊いてくる程のスピードでバドワイザ領バドワイザ本邸へと到着した。


「はぁぁ、やっと終わった…。やっと着いた…。スモモ村から商人の護衛に付いたチームが羨ましい位の強行軍であった……。」

グーマがヨボヨボと馬車から出れば、本邸の侍女長にしてグーマの姉アナと執事長にしてグーマの兄バジャーが血相を変えて飛んで来た。

「「グーマ!一体何があったの??」」

(ああ、そうか。予定よりとんでもなく早い帰還だからトラブルだと思ってるのか。)

二人の心配そうな顔を見て察したグーマは直ぐに訂正をしようと思ったが、強行軍でバッキバキの体の痛みに思わず顔が歪み、更に心配させるはめになった。

「ぅ!……違うんふぁ…ねーはん、いてて…若様に運命の番がッ!!兄さん!そこいたい!イダイィィ!!」

「何だ、特に怪我をしてる訳では無いな。アナ、只の疲労だ。薬湯の用意をしてやってくれ。」

心配したアナの肝っ玉バストにぎゅうぅと抱き締められ、兄にドスドスと秘孔を突く勢いで怪我の有無を調べられ、グーマは悶絶しつつもイオンウーウァの事を伝えた。
そこにイオンウーウァを抱き抱えたラートンが弾丸の様に馬車から飛び出てくる。

「アナ!バジャー!只今!しまった!僕の奥さんの部屋を用意してって伝令魔法飛ばすのを忘れてたよ!仕方ない☆から僕の部屋に奥さんを案内してっ♡♡」

「ダメですダメダメダメ!!お隣もダメです!……ちゃんと客間にご案内しますから、番様、安心なさって♪」

何とか同室になろうと言う魂胆が見え見えのラートンを、アナが護身用にと持っていた麺棒を振りかざして追い払い、イオンウーウァをさっさと客間に案内していく。

「ああ、僕の奥さん!僕の奥さんが離れていくぅぅ!!」

「若様は執務室へどうぞ、急ぎの決裁が数点……」

「イヤァァァ!僕の奥さーーん!!」

獣人同士の運命の番の場合、婚前というか出逢った瞬間に愛が高まってベッドインすることも少なくないが、人族は番を認識できない。
その為、グーマはあっという間にイオンウーウァを丸め込んで確保し本邸まで連れて来はしたが、それはあくまでラートンにゆっくり口説かせる為だった。

流石にまだ何も判っていない様なイオンウーウァの純潔を、なし崩しに奪う様な真似はさせられない。
そう考えて、グーマは番フィーバーなラートンを使用人達と一緒に引き剥がし、アナにイオンウーウァを客間に案内させたのだが、冷静なバジャーはその際微かにイオンウーウァがラートンと離れがたい表情を見せたのを捉え、そんなに、若様だけの一方的な想いでも無いようだ…と独り言ちた。


そうして客間に案内されたイオンウーウァは、アナ厳選の侍女とメイドに風呂に入れられ、出され、マッサージスペースに転がされ、ゴッドハンド達によるハードにしてテクニカルな種々の手入れを施されると、寝巻きを着る間も無く布団に潜り込んで寝てしまった。

服を着せる間も無かったのは非常に気になるが、きっと旅の疲れが出たのだろうとアナ達がそっとベッドにかけられたカーテンを閉じると、そのまま翌日の朝になっても起きてこなかった。

朝だとメイドが声を掛ければ、布団から出たくないと更に布団に潜り込む。
そんなイオンウーウァに、メイドが弱り果てているとラートンが部屋に飛び込んできた。


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