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7: 女将、磨き上げる
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「まぁ、番様とってもお似合いです♪」
虫除けにと、全身に塗り付けていたという紺色の染料になる薬草の根の汁。
この汁に染まった肌の色を落とすために、香油だ!蜂蜜と砂糖と小麦粉を混ぜるのだ!いいや、茶殻と石鹸の泡で優しく擦るのだ!と上を下への大騒ぎ、挙げ句の果ては近くの薬師堂のオババ迄連れてきて知恵を借りる始末だったが、その甲斐あり、白い肌を取り戻したイオンウーウァは見違える様に美しくなっていた。
「僕の奥さん!見たい!もーいーかい??」
忙しくしている合間をうろちょろうろちょろしては、イオンウーウァに話しかけたり、何とか側に居ようとしていたラートンは、グーマとイオンウーウァの許可の元、「いくら番とは言え、未婚のお嬢様の肌を見せるわけにはいきませんからね♡」と女将に椅子に縛られ、目隠し替わりに頭に枕カバーを被せられてバスタブ横に設置されていた。
端から見れば誘拐された人質だが、本人はとても嬉しそうにイオンウーウァに湯加減やら湯の温度の好み、入浴剤の好み、好きな色等、様々な話題を提供し、長風呂にも関わらずイオンウーウァを退屈させないという重大任務をこなした。
そんなラートンが、着替え終わった気配を察してびちびちと跳ねる。
「僕の奥さん!可愛い人!番さん♡♡もーいーかい??」
声と記憶からクローゼットの方にヨチヨチと前傾姿勢で縛られたまま歩いてきたのを見て、女将は上体だけでなく足も縛り付けるべきだったか、と少しだけ後悔した。
「……もーいーよ♪」
ブチブチィッ!!「わぁ♡♡女神がいるー♡♡♡」
ふと、幼い頃、かくれんぼをした記憶を思い出したイオンウーウァが呟くと、途端にラートンは弾けんばかりの自慢の筋肉に物を言わせて縄を引き千切って拘束を脱し、枕カバーを取って嬉しそうにイオンウーウァを見つめた。女将もメイドもドン引きである。
「やぁ、僕の奥さんは世界で一番美しいと思ってたけど、更に更に美しくなるなんて…!間違えて天使が天上に連れてかないように見張ってなきゃだね♡」
女将と精鋭メイド達は、最後の仕上げとイオンウーウァにファスファスとパフィームを吹き掛けながら、これが番フィーバーかと歯の浮く様な台詞に身震いしたが、ラートンの歯の浮く台詞は兎も角、今のイオンウーウァはとびきり美しいと揃って考えた。
中程から緩やかにウェーブを描き出す灰紫がかった深緑の髪は深林の朝靄に煙る梢の様で、その深い穏やかな緑に映える白い肌、湯上がりで薔薇色の頬と赤く形の良い唇、ラートンがおどけるたびに無口ながらもくるくると表情を変える、煌めく鮮やかな菫色の瞳。
香油で艶を出さなきゃカサカサの肌だし、すこーし小太りが過ぎるが、これから食生活や運動などでその辺りを解消すれば素材は抜群に美人だ、と女将は思った。
対するラートンは熊や龍、獅子、虎などの大型獣人男性達の様に200を優に越す長身…とはいかないし、種族の特性なのか少し前傾姿勢になってしまう癖と、全身筋肉達磨な上に更に上半身と身長の割に長い腕にたっぷりついた筋肉のせいでずんぐりして見えるが、180半ばというアナグマ獣人の中ではかなりの長身に、ふさふさと豊かな金髪、少し垂れ気味の紫紺の瞳が可愛い甘いフェイス……。
ちょっと団子鼻で、金茶色の揉み上げもふさふさだし、胸毛腹毛背中毛腕毛足毛脛毛など全身ふっさふさだが……、まぁまぁ王子様っぽいし、嬉しそうにイオンウーウァに寄り添う姿は童話の王子様とお姫様の様で中々お似合いの二人ではないかと女将は満足の鼻息をむふーーん♡と吐き出した。
精鋭メイド達も同意見で、一同は疲れた体をゆっくりと伸ばしながら自分達が作り上げた美しいお姫様と、そのシンデレラストーリーと達成感に暫し酔いしれた。
虫除けにと、全身に塗り付けていたという紺色の染料になる薬草の根の汁。
この汁に染まった肌の色を落とすために、香油だ!蜂蜜と砂糖と小麦粉を混ぜるのだ!いいや、茶殻と石鹸の泡で優しく擦るのだ!と上を下への大騒ぎ、挙げ句の果ては近くの薬師堂のオババ迄連れてきて知恵を借りる始末だったが、その甲斐あり、白い肌を取り戻したイオンウーウァは見違える様に美しくなっていた。
「僕の奥さん!見たい!もーいーかい??」
忙しくしている合間をうろちょろうろちょろしては、イオンウーウァに話しかけたり、何とか側に居ようとしていたラートンは、グーマとイオンウーウァの許可の元、「いくら番とは言え、未婚のお嬢様の肌を見せるわけにはいきませんからね♡」と女将に椅子に縛られ、目隠し替わりに頭に枕カバーを被せられてバスタブ横に設置されていた。
端から見れば誘拐された人質だが、本人はとても嬉しそうにイオンウーウァに湯加減やら湯の温度の好み、入浴剤の好み、好きな色等、様々な話題を提供し、長風呂にも関わらずイオンウーウァを退屈させないという重大任務をこなした。
そんなラートンが、着替え終わった気配を察してびちびちと跳ねる。
「僕の奥さん!可愛い人!番さん♡♡もーいーかい??」
声と記憶からクローゼットの方にヨチヨチと前傾姿勢で縛られたまま歩いてきたのを見て、女将は上体だけでなく足も縛り付けるべきだったか、と少しだけ後悔した。
「……もーいーよ♪」
ブチブチィッ!!「わぁ♡♡女神がいるー♡♡♡」
ふと、幼い頃、かくれんぼをした記憶を思い出したイオンウーウァが呟くと、途端にラートンは弾けんばかりの自慢の筋肉に物を言わせて縄を引き千切って拘束を脱し、枕カバーを取って嬉しそうにイオンウーウァを見つめた。女将もメイドもドン引きである。
「やぁ、僕の奥さんは世界で一番美しいと思ってたけど、更に更に美しくなるなんて…!間違えて天使が天上に連れてかないように見張ってなきゃだね♡」
女将と精鋭メイド達は、最後の仕上げとイオンウーウァにファスファスとパフィームを吹き掛けながら、これが番フィーバーかと歯の浮く様な台詞に身震いしたが、ラートンの歯の浮く台詞は兎も角、今のイオンウーウァはとびきり美しいと揃って考えた。
中程から緩やかにウェーブを描き出す灰紫がかった深緑の髪は深林の朝靄に煙る梢の様で、その深い穏やかな緑に映える白い肌、湯上がりで薔薇色の頬と赤く形の良い唇、ラートンがおどけるたびに無口ながらもくるくると表情を変える、煌めく鮮やかな菫色の瞳。
香油で艶を出さなきゃカサカサの肌だし、すこーし小太りが過ぎるが、これから食生活や運動などでその辺りを解消すれば素材は抜群に美人だ、と女将は思った。
対するラートンは熊や龍、獅子、虎などの大型獣人男性達の様に200を優に越す長身…とはいかないし、種族の特性なのか少し前傾姿勢になってしまう癖と、全身筋肉達磨な上に更に上半身と身長の割に長い腕にたっぷりついた筋肉のせいでずんぐりして見えるが、180半ばというアナグマ獣人の中ではかなりの長身に、ふさふさと豊かな金髪、少し垂れ気味の紫紺の瞳が可愛い甘いフェイス……。
ちょっと団子鼻で、金茶色の揉み上げもふさふさだし、胸毛腹毛背中毛腕毛足毛脛毛など全身ふっさふさだが……、まぁまぁ王子様っぽいし、嬉しそうにイオンウーウァに寄り添う姿は童話の王子様とお姫様の様で中々お似合いの二人ではないかと女将は満足の鼻息をむふーーん♡と吐き出した。
精鋭メイド達も同意見で、一同は疲れた体をゆっくりと伸ばしながら自分達が作り上げた美しいお姫様と、そのシンデレラストーリーと達成感に暫し酔いしれた。
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