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76: ジュリア、囲まれた!

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「よぉ。ちょっと来いよ。」

ここ数日、何と無く見張られてる気配があったが、振り向いた先に居たのが数人の不良ぶったお坊ちゃん方で、思わず面食らう。

「……もしかして、俺に言ってる?」

以前なら時々、俺と仲良かった子に振られたヤツとかが絡んできた事は有ったけど、最近は俺も大人しくなったというか……ネオンとベッタリなもんで…パッと思い付く心当たりは無かった。

つい、そんな心当たりの無さが口を突いて出ただけだったのだが、どうやら坊ちゃん達の精神を逆撫でしてしまったらしい。"ザ・街の不良"みたいな格好をしているが、格下から"はい"と"いいえ"以外言われた事ない貴族坊ちゃんの匂いがする。嫌な予感。

「ネオン・ブレーカーを傷付けたくなきゃ、大人しく着いてこいよ。…それとも、目の前で殴って見せなきゃ言う事聞けねぇよーなバカか?」

まさかのネオン絡みかよ。言われてみれば、外見はネオンよりちょっと老けて見えるし内面はネオンより随分子供っぽく見えるが、同じ年頃かも。
ネオンはΩで少し線が細いせいか、コイツらみたいなαより1~2歳年下に見えるし、精神年齢幼い所もあるけど基本的に繁華街に入り浸ってて耳年増と言うか精神年増だからな。
なんてつい、ネオンと比べてニヤけそうになる顔を引き締め、俺はざっと坊ちゃん達を見渡した。

全部で七人。中央にリーダー格三人で、俺を逃がさない様に両脇を二人ずつ塞いでいる。気配を探った所、これで全員の様だ。
騎士を目指してるのか、そこそこ腕に自信は持ってそうだが、実戦経験は皆無の自惚れ八割って所か……。貴族は後から身分を傘に着て色々仕掛けて来るから面倒は起こしたくないんだが、ぶん殴らなくても何とか抜け出せそうではある。

なんて、ハナからネオンが捕まってるとは信じていない俺は呑気に構えてた。だが、リーダーらしき坊ちゃんの言葉に肝が一気に冷える。

「アイツ、学園にはカツラ被って来てたんだなぁ。教授が呼んでるって言ったらホイホイ着いてきたぜ。」

まさか、カツラとイメチェンがバレてたとは。ネオンの口振りから全然気づかれてなさそうだと油断していた。

実家と殆どやり取りがなく実質放置されているとは言え、ネオンは侯爵家の子息だ。そう簡単に危害を加える事は出来ない。
そう思う一方で、Ωなんて、α達が口裏合わせれば何してもΩが誘った事にされてしまう、とも思う。

ネオンがそう簡単に捕まるとは思えない…けど、

確実にネオンが無事と判る迄は下手に動けない。

八割方ハッタリだとは思った。

だが、残りの2割の為に、俺は素直に坊ちゃん達に付いて行くことに。
軽く両手を上げれば、折角買ったブーケを叩き落として罪人でも引っ立てるみたく引っ張られ、グシャリ!と後ろで踏みつける音がした。

花には罪は無いのに、随分と気の荒い……。

花売り屋台の女将は俺が何処の誰だか知ってるし、先程チラリと目配せした時には微かに頷いて見せてくれたので、直ぐにファビオラやダンカンに報せてくれるだろう。

まさか、ネオンの友人踊り子玉綴りとビアホップが見てたせいで、いの一番にネオンに報せが行くなんて思ってもみなかった俺は、不良振った坊ちゃん達に囲まれながら、何処か呑気に大通りを後にした。

ーーーーー
ーーー



そうして、裏通りに停めてあった紋の無い、中級貴族が使ってた払い下げ馬車らしきものに押し込まれた俺は、くっさい麻袋を頭に被せられ、腕を後ろ手に、足首も拘束されてゴトゴトと何処かへ運ばれている。

馬車の設えに対し、ゴトゴトと揺れはずっと少ない。王都の中心を走っているのだろう。
こういった貴族の払い下げ馬車を使用するのは騎士団が多い。討伐や搬送、輸送などで馬車の使用と破損が多いので、丈夫な造りで安く買える払い下げ馬車を伝手で求める事が殆どなのだ。
貴族は貴族で、馬車をまだそう古くない内に新調する見栄と騎士団に支援という実績が手に入るしな。
多分ネオンと同じ王立学園の、騎士科の生徒なんだろう…とすれば、行先は誰かの実家の騎士団詰所の倉庫や鍛錬所等だろうか。なんて、推測してたんだが、馬車はゴトゴト進み、止まっては進み、又止まっては進み……。


「おら、降りろよ平民ヤロー。」

グイグイと乱暴に引っ張られ、腰を蹴られ、明らかに馬車から転がり落とそうとしてるのを躱してヨロヨロと降り立った先は……!

「簡単に逃げれると思うなよ。ヘヘッ」

どう見ても王宮ですありがとうございます。

「ヘヘヘッ此処が何処か知ったら、腰抜かすぜ!」

知ってます確かに滅茶苦茶驚いてますが幸い腰は無事ですありがとうございますですこの珍しい斜めに薄緑と金の筋がビッシリ走る大理石を使用した外壁この国で使用してるのは王宮だけだし王族しか使えないヤツです。

……っと、駄目だ、余りの衝撃に混乱して思考がぐちゃぐちゃになってしまった。

(それにしても困ったぞ……王宮なんかじゃ、そう簡単に脱出出来ない。)

王宮には誰でも入れる場所がある。
だが、そんな一般開放されている所は特に警備が厳しいし、此処は多分、近衛や王宮騎士団用詰所や鍛錬所、倉庫等が集まってる区画なのだろうとパッと見た様子から判断する。

こんな所に連れ込まれるとは予想外過ぎるが、多分絶対に騎士達にバレない自信があるのだろう。

(騎士の家門で小さい頃からこの辺りを庭にして育った坊ちゃん達ってトコか……。)

下手に逃げた先で騎士に囲まれたら…こちとら平民、問答無用で斬り捨てられても文句は言えない。思ったよりのピンチに、俺は必死に脳味噌に鞭打ち、無い知恵を絞り出そうと奮闘した。





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みんなの感想(7件)

一ノ瀬麻紀
2023.10.21 一ノ瀬麻紀

こんにちは。Xでフォローさせていただいている麻紀です。
30まで読ませていただきました。

かわいそうでちょっとしんみりしちゃうスタートだったけど、(でも、これって勘違い要素がふんだんに盛り込まれてますよね?)
いやぁー。ネオンが可愛い。
無自覚テロリストか? って感じですよね。

ジュリアとネオン、二人ともお互いにバレてるとは気付かずに、妄想の世界? に入り込んでるのがまた楽しい😁
結局は妄想が暴走じゃなくて、ちゃんと現実で、ヒートもなんやかんやと一緒に過ごして。
エロエロごちそうさまです💕

syarin
2023.10.21 syarin

麻紀さん、ありがとうございます!(⁠*⁠´⁠ω⁠`⁠*⁠)
わぁ、感想だぁ(⁠つ⁠≧⁠▽⁠≦⁠)⁠つ小躍りしちゃう♪
初めてのオメガバなので、ドキドキしながら書いてます(⁠人⁠ ⁠•͈⁠ᴗ⁠•͈⁠)読むのは好きなんですけど、書くとなるとw
続きも頑張りますー!

解除
鈴
2023.03.25

泥酔ネオンの暴れっぷりがとても可愛くて、ネオンが大好きになりました。お話のテンポが良いので手を止められずに一気読みしてしまいました(ㅅ´ ˘ `)♡
とても楽しい気持ちで読めたのでまた読み返します!
ジュリアどうなっちゃうのでしょう、心配なのにスゴくワクワクしてます✨

syarin
2023.10.21 syarin

わぁぁ!鈴さん!ありがとうございます!!
通知に気付けなくて、半年も放置してしまった。⁠:゚⁠(⁠;⁠´⁠∩⁠`⁠;⁠)゚⁠:⁠。ゴメンナサイ!
嬉しいです!ありがとうございます!
ちょっとバタバタしてますが、そろそろ落ち着いてくるので、続きも書こうと思ってます!
読んでくださってありがとうございます(⁠人⁠*⁠´⁠∀⁠`⁠)⁠。⁠*゚⁠+

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りんす
2022.12.28 りんす

ネオンのカラーコーディネートセンスが個性的すぎる……(゜゜;) 家色がピンクっていうのもなかなかだけど(汗) もちっとジュリアの意見も聞いてあげて~~!( >д<)、;'.・ 

syarin
2022.12.28 syarin

いつもありがとうございます(*´∀`)
オキナに褒められ?た結果、個性の塊にww周りも踊り子なんで派手ファッションばかりですしね(*ノ▽ノ*)
何だかんだで一番常識人な遊び人ジュリアですww
続きも頑張りますー*。・+(人*´∀`)+・。*

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