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59: 目指すは御馳走!ホールの端を目立たないように。
しおりを挟む「あー……ネオン、何か凄く見られてるな…。」
さわさわと人の囁き合う声、突き刺さる視線。
俺は初めての夜会の雰囲気に気圧され、ジュリアとヒソヒソと会話した。
「う……やっぱりピンク少なかったかな…?」
「いや、そこじゃねーだろ。」
じゃあドコ。
「……ほら、あの何回か来てたピンクの豹柄のタキシード有ったろ。誰も繁華街で何回も着てたとか知らないんだし、あれにした方が良かったんじゃないか?それと靴、蛍光イエローはダメだったよ、やっぱさー。」
そんなダメ??確かに、レッドカーペットとの相性は最悪だったけど…。
ジュリアの言葉に、俺はさっと自分の装いを見直す。
蛍光イエローのメダリオンシューズ、モノクロアニマルのパンツ、ミックスカラーアニマルのジャケット。
ジャケットから覗くシャツは艶やかなゼブラ柄を浮かび上がらせた黒で、カラーはゴツいトゲトゲが可愛い蛍光イエロー。
そして手袋!掌側は柔らかい革で、甲側は指先から手首まで全てメッシュになった超絶セクシーキュートなドラちゃんの新作なのだ♡そのメッシュから覗く爪はスカイブルーで、この対比がとっても可愛い♪ぁぁぁ癒されるぅ~♡
髪型はいつもの片側編み込みで、今日は垂らして菫色からスカイブルーに染めた側に、シルバーの豹柄をラメで描いてあるのだ!
美容師トリカラー渾身の仕事に、服を配達ついでに俺の着付けとネイルを担当してくれたドラちゃんが飛び跳ねてブラボー!と叫んだ位の力作だ。……何だか元気が出てきたぞ♪
「ヨシ!美味しいもの食べに行こう♪」
「今、自分の服見て元気出しただろ。なぁ。プフッ…。ゲンキンなヤツだな、ネオンは。」
そう言って笑うジュリアは、落ち着いたローズブラウンのゴブラン織に所々金糸の刺繍が入った上下、純白のシャツで、靴は俺に合わせてオークブラウンのウィングチップだ。
そこに「幾らなんでもコレじゃネオンとお揃い感が出ない…」ってんで急遽ドラちゃんに頼み込み、靴底の側面と土踏まず部分にピンクと黒の豹柄を、礼服にもピンクと黒の豹柄生地をパイピングで入れている。
ふわりと胸元を飾るタイとチーフも織でゼブラ柄が艶かに浮かぶ、俺の黒シャツの色違い生地だ。
何だか、いつものジュリアより少し大人の色気が下がり、売り出し中の若手歌手感が出た気もするが、相変わらず格好良くて…俺は何だかドキドキしながらジュリアとホールの端を進んだ。
「あれが噂のブレーカー家のΩ……ん?どっちだ??」
「……家門の色を着てますし、背の高い方では?随分派手な平民βを連れてますわね。…踊り子かしら?」
「……まぁ、見て!褐色の肌に黒髪だなんて、随分他のブレーカー家の皆さんと違いますのね…。でも、色男だわぁ~♡本当にΩ?どう見ても上位αだなんて、流石ブレーカー家のΩね…ほぅ♡」
「まぁぁ、パートナーにこの国の貴族は髪を染めないんだって教えてあげなかったのかしら?…それにしても綺麗な色に染まるのね…サラサラ揺れるのに銀の紋様が崩れないのはどうやってるのかしらね…」
「素直に私も染めてみたいって仰ったら?半分だけなら、大きな髪飾りを付けてるのと大差無いでしょうよ。…でもホント、あの髪に模様描くのどうやるのかしらね…?」
「色はどうかと思うけど、私はあの手袋が気になるわぁ~…♡それに、あの靴、あんな色に綺麗に染めるなんて至難の業よ…何処のブティックかしら。」
子息子女達が何と無く固まる奥の方へ行く間、様々な紳士マダムが囁き合い、俺達を視線で突き刺してきた。
だけど、繁華街で互いにそこそこ有名人だった俺達はそんな視線には結構麻痺していて。
そんな事よりチャリリと軽い音を立てて揺れる、お揃いのブレスレットとこの日の為にドラちゃんが作ってくれたお揃いピアスの音が嬉しくて周りの声なんて全然耳に入っていなかった。
だから、まさか俺の服にピンクが少なすぎてジュリアが俺だと勘違いされてるなんて全く気付かなかった。
まぁ確かに、ちょぉっと俺の服、ピンク少なかったし、カジュアル過ぎたかもね~♪てへへ…
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