【R18】平凡Ω？いいや、俺は嫌すぎΩだ！

35: どうやら俺は、Ω知らずΩでもあったようです。

本当は、ジュリアの言いたいこと、何と無く判ってる。

要は家族なんだ。

男のΩも、女のΩも、β男女やα男女と同じ様に、皆家族として育てられてるんだ。
自分の力では守れないかもしれない、という貧困層で治安も不安な状況じゃない限り、手元で皆同じ様に育てられるんだろう。

でも、それを言うと、俺は家族として扱われなかったと云う事になる。
だから、ジュリアは凄く言葉を選んでるんだろう。


でも、大丈夫。
俺は確かにブレーカー家の家族として扱われている。だから、父上は俺にも他の皆と同じ様に教育したんだ。ちょっと皆、αだらけ過ぎて、Ωの扱い方が判らなかっただけさ……。

なんて、ぽそぽそと語りながら、俺は少しだけ滲んだ涙をジュリアのシャツに染み込ませて、暫くうりうりと胸筋を額で堪能した。

「確かにそうだな…。」なんて言いながら俺の背中を撫でるジュリアの指が気持ちいい。

そこから、今度はジュリアが色々話し出した。
所謂世間一般のΩのお話だ。

なんでも、ΩにはΩにしか判らない事もあるので、Ωの事を教えてくれるΩの教師を雇うのが通例なんだそうだ。

「確かに、αの家庭教師でも茶会や日常における貴族的なΩの立ち居振る舞いやマナー、タブーなんかを教えられるよ？…でも、それはあくまでαから見たΩの部分なんだ。」

「……αから見たΩの部分……。」

「ああ。少しは思い当たる部分もあるだろう？でも、ネオンが思っている以上に、ネオンは沢山の事を教えて貰ってないんだ。」

そう言われてパッと浮かぶのは、自慰だった。

「ヒート時、未婚の男性Ωは発情の熱を収める為に自らを慰めます。自慰行為とは、男根を手で擦って精液を排出させる行為です。しかし、男性Ωは時に、後ろの穴を自らの指で刺激して慰めたりもする様です。後ろの穴とは肛門で、男性Ωはここから赤子を出産します。…では、次の項目……。」

というさらりとした先生の説明(超早口)だけで、図解も何も無かったので、最初の頃は自慰すら何だか訳が判らなくて怖かったものだ…。あのままでは初めてのヒートはパニックになっていただろう。

幸い、一人暮らししてすぐに乙女心と恋心に自慰の仕方だとかヒートの感覚だとか色々体験談を聞いていたので、初ヒートもそれなりに乗り越えられたが…。

「自慰だけじゃないぞ…？」

何故心が読まれてしまうのか。

そこから、俺の脳味噌が余りの情報量に驚いて耳から出てきちゃうんじゃないかと思う位、ジュリアは沢山の事を教えてくれた。


その中の1つが、貴族のΩが誰にも貰われないとか有り得ないと云うこと。

「いや、平民Ωだって貰い手無いとか有り得ないな。Ωって引く手数多だからな。勿論、相手は皆αだ。」

まぁ、αを産みやすいって事なら、αとしたらΩの伴侶を探すか。

実は、Ωがαを産みやすいとは一切習わなかったので、俺は今日初めて知った事実に何だか感動している。
だって今まで、αを産むにはαとαから産まれたαと子作りする事が最重要だと習ってきたから。

「αとαで婚姻して多産するって、しかも産まれてくるのが殆どαって、はっきりいってネオンの家門位のイレギュラーだからな？」

だから、何で心を読めるのか。

「大体判る。」

あれ？俺もしかして声に出したりしてないよな？？

まさか、一人暮らしが長いせいで独り言で思考を垂れ流す癖とか付いちゃったんじゃ…？と怯える俺に、ジュリアが苦笑いしながら話を続ける。

「勿論、好いてる人物を望むように落とせるかどうかはソイツ自身による。だが、貰い手がないのは有り得ないんだよ。信念を持って独身を貫こうとしても難しいくらいに大量克つ執拗に縁談は舞い込むぞ♪」

だから、俺がΩ風香水にそっくりな大量フェロモンなせいでβと思われ、未だフリーでこうしてジュリアと出逢えたのは、本当に奇跡だったと嬉しそうにジュリアがキスの雨を降らす。

その染み入るような甘い快楽に、

(幼少から鍛えられたせいで中途半端に育ったこの体格が、もっと華奢なら…大量フェロモンでもΩだと思って貰えたんじゃないかな？)

なんて思ったけど、それは思わなかった事にして、俺もジュリアにキスを沢山返した。

「ネオンの家門はαばっかで、時々出てもβなんだろ？なら、ネオンが華奢な体格だったとしても、Ωみたいな見た目だからってΩの振りしてる、とか思われてたさ……。」

だから、何で心を読むかな？？？

「それより、お前の失恋相手との出会いは何だったんだ？どこの家のどんなヤツで、どれ位尽くしてどれ程好きだったかは失恋ソングで散々聞いたけど、昔の話は聞いてないんだ…。」

「…成る程、確かに。でも、オキナの事とか聞いて何か意味あるのか？」

「お前は終わった恋だと言うかもしれんが、俺的には未だライバルにして警戒相手なんでね。」

うひょーー！相変わらず俺の心臓を一突きにするジュリアに、鼻血が出そうです。

「へへへ…あれはえっと…母上に連れられてタカサゴ家のお庭でお茶を頂いた五歳の時の話で……。」

俺はバクバクする心臓を宥めながら話し始めた。