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21: ジュリア、唾つけた♪

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匂いといい、量といい、奇跡みたいなヤツなのに…、皆にΩの振りしたβだと思われてるんだろうな……不憫なヤツ。




なんて事を考えてたら、コトリと目の前に紅茶が置かれた。
食い物なしのラプサンスーチョン……。

「こんなの、何も食べずに胃に入れたら胃を悪くすんぞ…?」

素で出された、高価な茶葉をふんだんに使った貴族らしい濃いめのラプサンスーチョンに少し怖じ気づいて言えば、してやったり、みたいなキラキラ笑顔が返ってくる。

イタズラに成功した子供みたいな顔しやがって……可愛いじゃねーか。

ふわり、とフェロモン以外の香りがネオンから漂ってくる。イランイランとジャスミンかな?他にも幾つかの花の香り。
フェロモンと相まってスッゴく可愛い匂いだ。凄く似合ってる。

風呂上がりの香水付けたてだからか、どの香りもビビッドに俺を誘い込む様で、むくむく膨らむ情欲に、俺は慌ててスモーキーな紅茶の薫りに集中した。

派手な蛍光イエローのジャケットからチラリと覗くデコラティブなカラー。さっきとは違うカラーだ。こいつ、αが居るのに風呂ン時カラーを外したのか、無防備過ぎんだろ…。ヤバいエロいダメだ。落ち着け、多分Ωとしての教育をちゃんと受けてないんだ。無自覚だ、落ち着け俺。

「うん、だから早く飲んで早く飯食いに行こうよ。もう俺腹ペコ♪」

ネオンの言葉にグッ!と覚悟を決めて呷れば、鼻から脳天から重厚でスモーキーな薫りが突き抜けてって、胃にズシンと琥珀の液体が重石みたいに居座る。ああ、濃いなぁ~!目が強烈に醒めるが、このまま昇天しそうでもある。

だが、ありがたい事に荒々しい修行に耐え抜いた僧みたいな薫りに獣欲が鎮められていく。

「くぅぅ~~!ありがとう、目が覚めたよww」

「うーー!空きっ腹に正山小種ラプサンスーチョンはやっばーい!」

礼を言って顔をあげれば、入れた本人も悶えてる。

お前の淹れ方は特に、な。


ガツンとした紅茶に背中を押され、俺達は笑いながらテルカズヨシダに駆け込んだ。




「マスター!お腹減ったー!」「ううう、何か食い物……!」

「ちょっとぉ!うちは食堂じゃないって、何度言ったら判るのよぉ!そんでアンタ!何しれっとネオンと一緒に居るの!?」

バタバタと駆け込んで口々にピイピイとエサを求める雛鳥の様な俺達に、屈強なマスターが眉を吊り上げて言った。

「今、正山小種を飲んだから、何だか凄くサーモンのサンドイッチが食べたいんだ♪ますたぁ~♪」

ちょっとわざとらしい程にぶりっ子してネオンがおねだりすれば、ブーブー言いながらもサクサクとマスターはパンを切り出す。


………これ、サンドイッチ出てくるんじゃね?

なんて思いつつ見てれば、案の定、素敵なアボカドとサーモンのクラブハウスサンドイッチが出てくる。

「手際良すぎ。もうこれ、魔法の域だろ。マスター実は指鳴らしただけでケーキとか出せるだろww」

なんて煽てれば、フフン♪とまんざらじゃなさそーに笑って紅茶も出してくれる。ゴチでーす♪

そうやって、仲良く紅茶とサーモンのサンドイッチを楽しんだ俺達は、それから毎夜、繁華街で一緒に過ごした。

ネオンの良く行く店、俺の良く行く店。
どっちにも顔出して、どっちにも、仲良いトコいっぱい見せつけて、めっちゃアピールする。

そぉら勿論、今俺口説いてるから近寄んなよっつーアピールですよ♡


そうして暫く経った頃、とうとう、その日が来た。

ネオンのヒートだ。


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