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10: ネオン・ブレーカーは酔いまひぇーん。

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「フフフン♪失恋失恋失恋しーたぁーー!」

今日も今日とてピアノをノイジーにジャジーに叩き弾き、俺、ネオン・ブレーカーはゴキゲンなスイングに酔いしれていた。

もう、失恋即興ソングはなんかもー俺の定番と化し、キャバレーやバーに来たら挨拶代わりに披露する感じである。

「ちょっとネオン~。今日あんたに会いに金髪碧眼のイケメン君が来たわよぉ?」

「ほへ。」

ゴキゲンスイングしてたら、友人にして人気踊り子の恋心が声を掛けてきた。
振り向いた瞬間、彼の双子の兄である乙女心に口に何かを突っ込まれる。

マカロン……いや、クリームが多いからトゥンカロンとか言うヤツか??甘ーい♡うまーい♡♡

ラズベリーの酸味と鼻に抜ける菫の薫りに俺がうっとりしてると、乙女心がそんな俺の鼻をムギュッ!と摘まんだ。このドS!

「あんたに渡そうと思ってたみたいだったから、お裾分けよ。大分溶けてるけど。」

うん。メルティー。

「ネオンが何処に住んでるか知りたがってたわ。取り敢えず、大家さん、家賃振込なんで何処に住んでるか知らないんですぅ~って言っといたわ♪」

と、恋心。
俺は二人に礼を言い、ピアノを悩ましげに轟かせながら考えた。

うーーん。困ったぞ。

「ま、いっか。何とかなるなる♪ほら、恋心、乙女心!踊れよ!お前らダイヤモンド好きだろ!?」

俺は一回じゃらじゃらっと鍵盤を撫でてから、二人の大好きな曲を奏でた。

途端に、二人が嬉しそうにコツコツとピンヒールを踏み鳴らして中央に躍り出る。


「ダイヤモ~ン♪ダイヤモ~~ン♪」

デカイ店みたいにトランペットやクラリネットは響かないけど、俺のピアノだけで奏でるのも中々オツな感じで。

乙女心と恋心が楽しそうに踊る度、衣裳が照明に煌めいて無数のダイヤモンドを纏っているように、いや、寧ろ二人がダイヤモンドの精であるかの様に見せた。


「Diamonds are a boy's !best!friend!!タァララララッタッタラ~♪ティップァニー♪」

「「ネオン!うるせーぞー!」」「音痴は黙ってピアノだけ弾きなーー!!」


今日も歌って踊ってピアノ弾ける俺への声援が方々から飛んで来た♪


ええ?やだなぁ、酔ってないよ??






「ぅぇへへへへへへへへへへ………よってまひぇ~…ん……」

「いや、酔いすぎでしょ。アンタね、皆が優しいからって人の店を居心地良い実家扱いしないでよね!」

此処は馴染みのキャバレー"テルカズヨシダ"。
俺はいつもの様に此処で飯喰って、違う店に遊びに行って、またこの店に帰ってきてゆっくりしてるところだ。
どくんどくんと俺を包み込むように脈打つ自分の鼓動と火照りが気持ちいい。

因みに、キャバレーの名前はどっかの国の巨大なモノを作った古代勇者で、マスターの名前はテルカズヨシダではない。デビーさんだ。でもデビーさんて呼ぶと怒る。

「実家って……。何ぃ?世間一般の生家はそんな居心地良いものなのぉ?それともぉ、平民限定の概念?」

俺は邸宅でこんなに居心地良い思いはしたことない。
だって、親兄弟が居るんだよ?普通、居心地悪くない?何か緊張するし警戒するよね。

「ちょっと、そんな事言って"自分は可哀想な貴族令息ですよ"アピールしたって何にもでないんだからね!」

なんて言いながら、ガリガリ音がしたかと思うと、シャーベットが目の前に置かれる。

出るじゃん……。

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