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04: 失恋、失恋、失恋ーー♪
しおりを挟む軋む階段、ちょっと虫さんとか小動物が出入りするヒビだらけの壁。愛しき俺のボロアパート。
着いて直ぐ、俺は心を鬼にして断捨離を始めた。
オキナ・タカサゴの綺麗な金髪碧眼と凛々しい表情を描き写した姿絵、彼の色だったから買ってしまった小物達。
全部綺麗に部屋の中央に固めて置いて、呼んだ商人に引き取って貰う。
ついでに、もう着ない服も幾つか引き取って貰い、総額そこそこの臨時収入と、そこそこスッキリしたクローゼットを手に入れた。
何だかんだで俺のオキナコレクションはかなりボリューミーで、それが無くなった今、振り返ればクローゼット以外もかなりスッキリとしていた。
ーーーーー
ーーー
ー
「てなワケで失恋したんすよー。もうね、今日は飲むしか無い日でしょ?」
「ちょっとぉ、それもう5回目よぉ?飲んで良いしヨシヨシしてあげるから、ちゃんとお金払って帰れる程度にしときなさいね??」
「お金はあるんですよー!だってもー差し入れとかしねーしー、さっき色々売ったら割とお金増えたしー。………てなワケで失恋したんすよー??もうね、今日は飲むしか無い日でしょー?よーぉし!ピアノも弾いちゃう!そこどいてー??」
繁華街の裏通りにある俺のぼろアパートに程近い、いつも食堂代わりにしてるキャバレーのカウンターで、俺はマスター相手に管を巻き、酔いしれ、千鳥足。
ネオン、踊れる曲にしてね、と言う踊り子達を無視して俺はピアノを掻き鳴らした。ジャジーに、ナローに、ノイジーに。
「おおおれはーー今日ーー失恋しちゃったんだよーーん♪」
ついでに歌も唄っちゃうよ♪
「うるせー!音痴め!」「踊れない!」「そんな湿っぽい事を聴きにきてんじゃねーんだよ!」「引っ込んで水でも飲んどけ!」「今度一杯奢ってやっから今日はもう帰んなー!」
ヤイヤイと飛ぶ野次が、何だかんだで温かくて、俺は大声で泣きながら、その慟哭を掻き消すようにピアノを弾き続けた。
次の日から、と言いたいが次の日は明け方にキャバレーの閉店の為に叩き起こされて帰宅し、1日寝てたので…その次の日!
その次の日から俺は学園には地味な装いで通う事にした。
黒いズボンに白いシャツ。髪の毛は明るい金髪をキャスケットに突っ込んで隠し、1日授業を受けた後、街で既製服を数着、個人的制服と思って購入した。
黒のジャケットとズボン、白のシャツ。帽子代わりに茶髪のウィッグ。只管その組み合わせでローテーション。
正直言って地味というワケでは無かったが、凄く普通で、それまでが何かもうド派手だった俺はそれだけで別人になれた。
当然だが、オキナにはあの日以来一度も会いに行ってない。
彼とは学科が違うため、わざわざ会いに行かなければ全くすれ違いもしなかった。
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