5 / 6
5: 月猫の嫉妬と変態マイコー
しおりを挟む「仔猫君、君に祝福と加護を。…どうか、ムルーンな日々を送り給え……。」
アレキサンダー殿の歯がカシカシと俺の毛を櫛けずり、ざらざらの舌がつぁりつぁりと整えてくれる。
それと同時に、アレキサンダー殿のスーパーハイパーパーフェクトキャットな気が俺の中に流れ込み、祝福と加護を与えてくれる。むふふ、なんてムルーンなんだ。
あ、猫族の毛繕いや喉を鳴らす行為は他人の為にすると祝福と加護を与えてくれるんだ。
後、毛を相手に付着させたりするのも守護の効果がある。
猫同士だと、この毛の交換は絆を深め合う行為なんだが、ニンゲンはあちこちハゲてるから……可哀想なんでついつい、一方的に守護をかけちゃうんだよね……。
それなのに、どうしていつもニンゲンは守護を躍起になって外すんだろう。
お風呂とかいって毎日沢山のお湯で洗ったりするし。
そんなんだから頭の天辺しか毛が生えないんだよ。全く……。
キキも、もっと全身ふさふさしてたら、俺と毛の交換が出来るのになー……。
「俺が毛繕いしてあげてるのに、他のヤツの事を考えるなんて……仔猫君は意外と尻軽だな…。」
「は!はわまわゎゎゎちちちがゃぁゎゎゎ……!」
うわ!アレキサンダー殿の毛繕いがなんかもう、究極に自然すぎていつの間にか存在を忘れてた!ヤバい!
ちょっと拗ねたみたいに強めに毛繕いするアレキサンダー殿によって、俺はこの後、小一時間程全身を揉みくちゃに毛繕いされてしまった。ひぇぇ!な所まで舐められるし。アレキサンダー殿!俺はそんなに仔猫じゃないよ!
月猫特有のメインクーンより大きい体躯で、俺のまだ育ちきってない体をコロコロ転がされ、ちょっと屈辱的…。
アレキサンダー殿と居る時に余計なことを考えない。タルト、覚えた。
全身アレキサンダー殿の祝福と加護でピッカピカになった俺は月猫の庭園から出て、一般猫達の集う噴水広場に向かった。
アレキサンダー殿は、俺からのお返し毛繕いで御機嫌を直した後、月猫の集まりへ行くと言って去っていった。まぁ、そういって別のところに行くのが猫って生き物なんだが。
噴水広場に行けば、アレキサンダー殿の祝福と加護でピッカピカに光ってる俺は目立ったらしく、慌ててマイコーとTIGERが駆け寄ってきた。他の一般猫も遠巻きに俺を見てヒソヒソ髭を揺らして噂してる。フフン♪
「ちょっとちょっと!なんでアンタ月猫様とあんな親しげにしてるの!?どーゆー関係!?」
「な、な、タルトタタン、ちょっと俺にも毛繕いさせてくれよ!フン!フン!フンムーン!ぁぁ…これが月猫様の移り香…!芳しい!!凄いな!全身隈無く祝福と加護で覆われてる!はぁぁ……これが月猫様のオーラ…くんかくんか…はぁぁ。良い匂い…舐め舐めしたぁい♡」
TIGERがチワワみたいにうるさく喚いて何だかイラっとするも、マイコーが興奮の余りヤバい変態と化してて…あわわわわ…!
ジリジリ後退るも、カウチキャットらしいオレンジの巨体を揺らしてズイズイ来る。翡翠色の目がヤバい狂気を孕んでギラギラしてる。
気がつけば、周りを同じくギラギラした目で毛繕いの隙を窺ってる一般猫達に取り囲まれていて……。
「ヒェェェ…!来るにゃぁ……!!」
俺は恐怖の余り慌てて種族サークルのリンクを切り離した。
(ひ、ヒドイや!!タルトタタン!!ちょっとすりっとする位の加護分けてくれたって良いだろ!)
(そうよー!ヒドイわ!)
ご近所会話サークル経由でマイコーとTIGERから文句がくる。五月蝿いなぁ!
(俺だって分けてやるつもりだったさ!マイコーが変態過ぎるからいけないんだ!変態!変態!変態!へーんーたーいー!!)
(まぁいいや、鼻の穴は祝福を少し受けたから……。)
やっぱり変態じゃないか!
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
笛智荘の仲間たち
ジャン・幸田
キャラ文芸
田舎から都会に出てきた美優が不動産屋に紹介されてやってきたのは、通称「日本の九竜城」と呼ばれる怪しい雰囲気が漂うアパート笛智荘(ふえちそう)だった。そんな変なアパートに住む住民もまた不思議な人たちばかりだった。おかしな住民による非日常的な日常が今始まる!
下宿屋 東風荘 3
浅井 ことは
キャラ文芸
※※※※※
下宿屋を営み、趣味は料理と酒と言う変わり者の主。
毎日の夕餉を楽しみに下宿屋を営むも、千年祭の祭りで無事に鳥居を飛んだ冬弥。
そして雪翔を息子に迎えこれからの生活を夢見るも、天狐となった冬弥は修行でなかなか下宿に戻れず。
その間に息子の雪翔は高校生になりはしたが、離れていたために苦労している息子を助けることも出来ず、後悔ばかりしていたが、やっとの事で再会を果たし、新しく下宿屋を建て替えるが___
※※※※※
覚醒呪伝-カクセイジュデン-
星来香文子
キャラ文芸
あの夏の日、空から落ちてきたのは人間の顔だった————
見えてはいけないソレは、人間の姿を装った、怪異。ものの怪。妖怪。
祖母の死により、その右目にかけられた呪いが覚醒した時、少年は“呪受者”と呼ばれ、妖怪たちから追われる事となる。
呪いを解くには、千年前、先祖に呪いをかけた“呪掛者”を完全に滅するしか、方法はないらしい————
下宿屋 東風荘 5
浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*゜☆.。.:*゚☆
下宿屋を営む天狐の養子となった雪翔。
車椅子生活を送りながらも、みんなに助けられながらリハビリを続け、少しだけ掴まりながら歩けるようにまでなった。
そんな雪翔と新しい下宿屋で再開した幼馴染の航平。
彼にも何かの能力が?
そんな幼馴染に狐の養子になったことを気づかれ、一緒に狐の国に行くが、そこで思わぬハプニングが__
雪翔にのんびり学生生活は戻ってくるのか!?
☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*☆.。.:*゚☆
イラストの無断使用は固くお断りさせて頂いております。
時守家の秘密
景綱
キャラ文芸
時守家には代々伝わる秘密があるらしい。
その秘密を知ることができるのは後継者ただひとり。
必ずしも親から子へ引き継がれるわけではない。能力ある者に引き継がれていく。
その引き継がれていく秘密とは、いったいなんなのか。
『時歪(ときひずみ)の時計』というものにどうやら時守家の秘密が隠されているらしいが……。
そこには物の怪の影もあるとかないとか。
謎多き時守家の行く末はいかに。
引き継ぐ者の名は、時守彰俊。霊感の強い者。
毒舌付喪神と二重人格の座敷童子猫も。
*エブリスタで書いたいくつかの短編を改稿して連作短編としたものです。
(座敷童子猫が登場するのですが、このキャラをエブリスタで投稿した時と変えています。基本的な内容は変わりありませんが結構加筆修正していますのでよろしくお願いします)
お楽しみください。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
おっさん漫画家アンデットになる
兎屋亀吉
キャラ文芸
落ち目のおっさん漫画家藤堂力也は、ある日アンデットになってしまった。担当編集吉井氏は言う「漫画にしませんか?」。漫画雑誌の売り上げが伸び悩む時代、果たしておっさん漫画家は生き残れるのだろうか。
紡子さんはいつも本の中にいる
古芭白あきら
キャラ文芸
――世界は異能に包まれている。
誰もが生まれながらにして固有の異能《アビリティ》を持っている。だから、自己紹介、履歴書、面接、合コンetc、どんな場面でも異能を聞くのは話の定番ネタの一つ。しかし、『佐倉綴(さくらつづる)』は唯一能力を持たずに生を受けており、この話題の時いつも肩身の狭い思いをしていた。
そんな彼の行き着いた先は『語部市中央図書館』。
そこは人が息づきながらも静寂に包まれた綴にとって最高の世界だった。そして、そこの司書『書院紡子(しょいんつむぐこ)』に恋をしてしまう。
書院紡子はあまりの読書好きから司書を職業に選んだ。いつも本に囲まれ、いつもでも本に触れられ、こっそり読書に邁進できる司書は彼女の天職であった。しかし、彼女には綴とは真逆の悩みがあった。それは彼女の異能が読書にとってとても邪魔だったからである。
そんな紡子さんの異能とは……
異能を持たずにコンプレックスを抱く綴と異能のせいで気がねなく読書ができない紡子が出会う時、物語が本の中で動き出す!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる