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「では1つ目、ティルトン伯爵家の簒奪を企てた者の報告します」

 そういって従者は1つの書類に目を通した。
 まだ、あの場から数日だと言うのに、色々と動いたのだろう。国の上層部になればなるほど、早く行動しないと手遅れになる事は多々ある。だからこそ高位貴族は先を見て機敏に動くのだろうけれど。

「処刑と国外追放が決定いたしました」

 坦々と放たれた声。しかし、私と王太子殿下は驚く事すらしなかった。
 元義母は伯爵家の簒奪を企てたとして処刑されて当たり前。シェリーに関しても同じ処罰が下されるかと思ったのだけれど、シェリーはあくまで居候の立場だった。簒奪を目論んだとしても、色々な書類でそれが叶わないという浅はかな行いすぎた為、国外追放となったと従者が説明した。
 ……もう生きてはいないだろう。幼い頃に伯爵家へやってきた時から、甘い生活を送り続けていたのだから。それは実質、処刑と違わないのではないか。

「そして、エリック・コルダは侯爵家から破門となりました」
「知っている……イルの所へいち早く報告と謝罪に来たからな」

 そうなのだ。
 お父様に謝罪へと行ったコルダ侯爵は、そのままお父様と共に私の元へと謝罪に来た。実の父として思う所はなかったのか問うと、コルダ侯爵は苦悶の表情を少し見せながらも教えてくれた。
 少しでもチャンスを与えたかった事。しかし、貴族としてだけでなく、婿養子になるならば自分で気が付かねばならない。だからこそ時間を与える、自分が反対するという形で、自らが動き調べ、気が付く事を望んでいたと。
 まぁ、王城で王太子殿下の婚約パーティであそこまでしては、いくら実の息子だろうと……守りたい存在であろうと、自分は貴族だ。心の鬼にしての処罰を下したと言った。
 それを聞いていたお父様は苦虫を嚙み潰したような表情をしていたけれど。どこか分かるところもあるのだろう。同じ親として。

「あぁ、ならティルトン家が侯爵家になったのも知っておりますね」

 従者の言葉に、私は猫の姿のまま項垂れた。これが俗に良くゴメン寝、だろう。
 何故か我が伯爵家は侯爵家へと格上げになったのだ。
 元々、国の攻防を担っていたけれど、格上げなんて面倒くさい事に先祖代々興味がなかった為に断っていたそうだ。……分かる。研究さえ出来たら良いのだもの。過ぎたる権力や地位、金なんて面倒なだけ。
 だけれど、今回の事があった上に、次期王太子妃を輩出するという事で逃れられなくなったらしい。否、お父様はティルトン伯爵家が乗っ取られそうになったという家督責任を盾に逃れようとしたらしいけれど。……家の恥を、逃れる為に使った所で、国王陛下は逃してくれなかったようだ。
 これでティルトン伯爵家は、更に国に対し縛られる事になるだろう。
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