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「あーっははははは!!」
「笑いごとではないのですが?」

 ジト目で睨む私とは対称的に、私の報告を聞いた師匠は、目に涙を浮かべ、お腹を抱えて笑っている。もういっそそのまま呼吸困難になるのではないかと思える程だ。

「お腹が筋肉痛になりそう~!!」
「そこまで!?」

 ならばいっそ、そのまま筋肉痛となって数日動けなくなれば良いのに!と思える。私の苦労を知らないで!
 結局、あれから私は抵抗に抵抗を重ねたけれど、王太子殿下の腕から逃げる事が叶わず、同衾したのだ。……猫だから同衾とは言わないのか?
 引っかいたり、噛みついたりする事も、さすがに根付いた淑女教育という常識の中で躊躇われ、気が付けば朝日が昇っていた。うん、そこで眠れた自分も凄いと思うよ?思うけれども!……笑いすぎではないか?

「しかし……王太子殿下からの寵愛が凄いね……今朝だって……はははははっ!」

 何とか笑いの波を終えただろう師匠が言葉を放ったが、結局今朝を思い出したのか、再度笑いが発生した。……もう、これはしばらく止まる事がないだろう。盛大に溜息を吐いて、若干軽蔑した眼差しで師匠を睨む。

 笑いの元凶となっている王太子殿下は、只今執務中だ。まぁこれはお決まりの日程らしく、私を迎えに来た師匠は、まず王太子殿下に許可を……と思ったらしく、執務室へ来たのだが。
 何故かそこに居る私。
 しかも膝の上にしっかり抱えられている。右手でサインを、左手で私を撫でる王太子殿下に、師匠は思わずポカンと口を開き、一瞬間があったのを覚えている。
 というか、師匠は一瞬で済んだけれど、従者や側近らしき人達は、二度見三度見していた。結局、何度目かの視線で確認しても変わらない現実に、全てなかったかのように振舞っていたのだけれど。
 そんな中で師匠が私を連れ出す許可を求めた時、王太子殿下の眉は少し跳ね上がるし、従者や側近は声なき悲鳴をあげていた気がする。全く持っておかしな話だとしか思えない。
 不機嫌そうながらも、私を師匠が派遣した護衛だと言う事を思い出したのか、許可をくれ、魔法棟へ逃げ出す事が出来ているのだけどね!

「結局、護衛って何ですか? 猫の振りはしてますけれど」
「しっかり溺愛されている愛猫のふりをしてくれ!」
「そこは否定したい」

 現状、溺愛されている愛猫だろうけれど、お断りしたい。
 猫の姿で、猫のままで、しっかり護衛として線引きして欲しいというか、ただそこで佇んでいたいのだ。衣食住が保証されているだけで御の字!それだけで十分なのだから!
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