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「……それ……」

十年前。舞。その時に会った知らない男の子。
あれはロドさんだったのか、そう聞こうとしたが、驚きで喉が詰まり言葉が出てこない。
そんな私の様子に少し微笑みを向けると、ロドさんは懐かしそうに目を細め、更に話し始めた。



少女は無料で振舞われているという米麹から作った子どもでも飲めるという甘酒を手渡してくれた。
気遣い、行動する。相手を見て、気づく。とても自分より幼い少女がする事だと思えなかった。
自分と反映した為か、同情心か、守らなければならない。そんな思いが浮上したのが分かった。
身体が守られているのは分かる、けれど心までは守られているわけではない。

「あ、舞が始まるよ。空間の歪みを正すと言われる舞が……」
「……空間の歪み……」

あの全身を襲う不快感は空間を抜けたという事か。
自分は違う世界へ迷い込んだと言う事なのか。
だとしたら、その歪みを正すと言う舞が行われれば、向こうの世界へ帰れなくなるのか?それとも強制的に戻される?そうなれば、もうこの少女と会う事はなくなるのか?
考えをまとめようとしたが、危険のない今この状況に落ち着き疲労が出てきているのか、頭が回らない。
もういっそなるようになれば良いと思い、少女を見つめると、その目は先ほどまでとは違って、力強く光り輝いていた。

「私も……十年後……」

——守りたい——
一転して抱いた想い。
希望、望み、目標。生きる為に輝いたその瞳を守りたいと、切に思った。

シャラン

鈴の音が鳴る。
不快な感覚が全身を這いずり回る。歪みから送り込まれた異物もまとめて排除するような舞なのだろう。

——必ず——
——必ず——

また会えるよう、少女と自分に楔を打つ。
舞はずっと伝えられてきただろう中で、少しずつ形を変えているのだろう、細くだが、確実に繋ぐ楔を打つ事が出来た。これが完全な形なのであれば、きっと全てを排除していただろう。

「また会おうね」

聞こえるか聞こえないか。自分の身体が強制的に戻される瞬間に、少女にそう呟いたが、少女は舞に釘付けだった。そんな姿に少し悲しさを覚えながらも、絶対に手に入れるという気持ちだけを持って、元の世界に戻った。





「えっと……」

ただ、それだけ。言ってしまえば、たったそれだけの事なのだが、想いの丈は伝わってきた。
死んだような瞳、生きる希望。確かにそうであったと思う事に気恥ずかしさも覚える。

「その時からずっと見ていたんだよ?」

打ち付けた楔の繋がりで、ずっとずっと私の成長を見ていたと言われ、更に顔が真っ赤になる。
知らない所からずっと見られていたのだ。
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