14 / 27
14
しおりを挟む
「じゃあとっとと死になさいよ!」
「ミオ様?」
女性がそう叫んだ瞬間、ハイルさんの声が扉の向こうから聞こえた為、女性は舌打ちした瞬間に消え、息を飲んだ。驚きすぎると人は声も出なくなるんだと思いながら、女性が居た場所に人型の紙がヒラヒラと舞い落ち、燃え、そして消えた。
呪術……その言葉が脳裏に過ぎった。
燃えカス等の痕跡すら残さずに消えた、その一点を見つめていると、お仕着せを着た女性が入室し、ハイルさんはドアの向こうでこちらを見ないように背を向けている。
女性の寝起きを見ない配慮なのだろう。私が起きているという事を伝えられると、今日はロドさんと一緒に朝食を摂れないという事をハイルさんは伝えに来たようで、私に伝え終わるとロドさんの部屋へ向かったようだ。
働かない頭でも、すぐに痣の事は思い出せた。私は寝巻きのままなのも気にせず、隣のロドさんの部屋へ飛び込んだ。
「ロドさん!」
私に対し驚いた顔をしたハイルさんだが、特に咎める事もなかった為、私はそのままロドさんのベッドサイドへ向かい、顔をのぞきこんだ。
「っ!」
息を飲んだ。顔半分にまで広がっている痣がとても悍ましく、トライバルのような模様は確実に何かを締め上げているようにしか見えなかった。
動く、痣……。
思わずロドさんにかかっているシーツをめくると、はだけている胸元から痣が見えた。
心臓に刺さっていた鎖鎌は、深く深く……根元まで刃を埋めているほどになっていた。
「キャアアッ!!」
それだけでなく、徐々に周囲を蔓のような痣が動き伸びて侵食する様を目の当たりにし、思わず悲鳴をあげてしまった。
「……ミオ?」
私の声に、苦しそうな表情で汗を流しながらロドさんが目をうっすら開けた。
「っ!何をもたもたしてるんですか!」
あまりの恐怖と驚きで、思わず声を張り上げた。こんな声を張り上げた事なんて今まで生きてきた中では、ない事なんじゃないだろうか。
胸の中が熱くて、怒っているのだろうか、でも無意識に流れ落ちる涙が次から次へと頬を濡らしている。
「早く生贄にしてくれれば良いじゃないですか!私の元気とか関係なく血肉を求める事はできないんですか!?」
「ミオ?」
ハイルが焦っているのも、ロドさんが悲しそうに表情を歪めているのも、今の私は気がつかない程、感情が昂ぶっていた。
「早く私を殺してください…………」
切実に願うように捻り出した言葉。
このまま不安に怯える日々も嫌だ。
ならば早く……終わらせたい。
私もロドさんの苦しみも。そして……
私に存在意義を下さい。
「ミオ様?」
女性がそう叫んだ瞬間、ハイルさんの声が扉の向こうから聞こえた為、女性は舌打ちした瞬間に消え、息を飲んだ。驚きすぎると人は声も出なくなるんだと思いながら、女性が居た場所に人型の紙がヒラヒラと舞い落ち、燃え、そして消えた。
呪術……その言葉が脳裏に過ぎった。
燃えカス等の痕跡すら残さずに消えた、その一点を見つめていると、お仕着せを着た女性が入室し、ハイルさんはドアの向こうでこちらを見ないように背を向けている。
女性の寝起きを見ない配慮なのだろう。私が起きているという事を伝えられると、今日はロドさんと一緒に朝食を摂れないという事をハイルさんは伝えに来たようで、私に伝え終わるとロドさんの部屋へ向かったようだ。
働かない頭でも、すぐに痣の事は思い出せた。私は寝巻きのままなのも気にせず、隣のロドさんの部屋へ飛び込んだ。
「ロドさん!」
私に対し驚いた顔をしたハイルさんだが、特に咎める事もなかった為、私はそのままロドさんのベッドサイドへ向かい、顔をのぞきこんだ。
「っ!」
息を飲んだ。顔半分にまで広がっている痣がとても悍ましく、トライバルのような模様は確実に何かを締め上げているようにしか見えなかった。
動く、痣……。
思わずロドさんにかかっているシーツをめくると、はだけている胸元から痣が見えた。
心臓に刺さっていた鎖鎌は、深く深く……根元まで刃を埋めているほどになっていた。
「キャアアッ!!」
それだけでなく、徐々に周囲を蔓のような痣が動き伸びて侵食する様を目の当たりにし、思わず悲鳴をあげてしまった。
「……ミオ?」
私の声に、苦しそうな表情で汗を流しながらロドさんが目をうっすら開けた。
「っ!何をもたもたしてるんですか!」
あまりの恐怖と驚きで、思わず声を張り上げた。こんな声を張り上げた事なんて今まで生きてきた中では、ない事なんじゃないだろうか。
胸の中が熱くて、怒っているのだろうか、でも無意識に流れ落ちる涙が次から次へと頬を濡らしている。
「早く生贄にしてくれれば良いじゃないですか!私の元気とか関係なく血肉を求める事はできないんですか!?」
「ミオ?」
ハイルが焦っているのも、ロドさんが悲しそうに表情を歪めているのも、今の私は気がつかない程、感情が昂ぶっていた。
「早く私を殺してください…………」
切実に願うように捻り出した言葉。
このまま不安に怯える日々も嫌だ。
ならば早く……終わらせたい。
私もロドさんの苦しみも。そして……
私に存在意義を下さい。
21
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
この度、青帝陛下の番になりまして
四馬㋟
恋愛
蓬莱国(ほうらいこく)を治める青帝(せいてい)は人ならざるもの、人の形をした神獣――青龍である。ゆえに不老不死で、お世継ぎを作る必要もない。それなのに私は青帝の妻にされ、后となった。望まれない后だった私は、民の反乱に乗して後宮から逃げ出そうとしたものの、夫に捕まり、殺されてしまう。と思ったら時が遡り、夫に出会う前の、四年前の自分に戻っていた。今度は間違えない、と決意した矢先、再び番(つがい)として宮城に連れ戻されてしまう。けれど状況は以前と変わっていて……。
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
外では氷の騎士なんて呼ばれてる旦那様に今日も溺愛されてます
刻芦葉
恋愛
王国に仕える近衛騎士ユリウスは一切笑顔を見せないことから氷の騎士と呼ばれていた。ただそんな氷の騎士様だけど私の前だけは優しい笑顔を見せてくれる。今日も私は不器用だけど格好いい旦那様に溺愛されています。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
君の小さな手ー初恋相手に暴言を吐かれた件ー
須木 水夏
恋愛
初めて恋をした相手に、ブス!と罵られてプチッと切れたお話。
短編集に上げていたものを手直しして個別の短編として上げ直しました。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする
矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。
『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。
『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。
『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。
不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。
※設定はゆるいです。
※たくさん笑ってください♪
※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる