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第一章

13.各々の過ごし方

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「ナイフとフォークは外側から使って下さい。持つ時はくぼみ以外で。食事中、音を立ててはいけません。これは基本的な事になります」

 食事中もお勉強。
 ナイフとフォークを使えば、どうしても食器同士が合わさりカチャリという音が鳴ってしまう。箸という文化で生きて来た私にとって、金属製のものをどう扱えば良いのか分からない。どうしても音が鳴ってしまう。
 更に言うなら、右手にナイフ、左手にフォーク。……左手で食べるという事にも慣れない。持ち替えてはいけないとか、どれだけ厳しい世界だ。

「全ては慣れです」

 枢機卿は涼しい顔をして言うけれど、どれだけの時間がかかるのだろうか。その頃には、箸の使い方を忘れていそうだ。
 恵は涼しい顔をして音を立てる事もなく食べている。……これが育ちというものなのだろうか。英才教育でも受けてきたのか。
 キィも少しずつ慣れていっているようだ。若さって凄い。

「午後は神力の使い方だったわよね。それまで自由にさせてもらうわ」

 食べ終えた恵は、そのまま食堂を出て行き、その後ろをロランが追いかけて行く。
 恵の姿を見る事は滅多にない。どこに閉じこもっているのかは分からないけれど、神力の使い方を学ぶ時だけは出てくるのだ。

「私も」
「キィ様、少しは休んだらどうですか?」

 そう言って、食事を終えたキィも食堂から出て行こうとし、ウィルが後ろから溜息をつきながら声をかけていた。
 まだ幼いのに、目の下にはクマが出来上がっており、廊下で度々姿を目にする時は大量の書物を抱えていたりする。寝る間も惜しんで勉強をしているのは明白だ。
 慣れ親しむつもりはないけれど、キィの方からもどことなく私達に対して拒絶するような壁を感じる時がある。

「キィ様は聖女を目指しているようですね」
「そうなんですか」

 枢機卿の一言に、大した興味もなく返す。なりたいなら、なれば良い。私には関係ない。
 琴子も同じなのか、特に何といった反応も示さない。
 それに対して、枢機卿は少し寂しそうな表情を見せたけれど、私には関係のない事だ。

「私も文字の勉強をしてきますね」

 食べ終えた琴子も、また勉強をするようなのだが耳の痛い問題だ。
 ……文字。勿論、ここは日本語で書かれた書物などない。
 鑑定という生活魔術で何なく雰囲気的な解読は出来ているけれど、しっかり読み込むには文字を覚える必要がある。
 ……キィや恵は覚えて、書物を理解出来ているのだろうか。

「……私も……」

 このままこの世界で暮らすのならば、文字を覚えない事には苦労すると理解している私も、少し勉強しよう。
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