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02.

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「あぁああ!もう嫌になる!」

ライドリー伯爵邸にやってきた、クラドリー侯爵令息であるガラルにわめきたてるその姿は、淑女らしくはないが、リズのそんな姿を見ていてもガラルはクスクス笑っているだけだ。

「相変わらず、弟への愛で自虐的になっているね」
「自分の醜い感情を一番知ってるのは自分自身でしょ」

ガラルの言葉に、頬を膨らませながらリズは答える。
侯爵家と伯爵家で、家柄は違えども二人は幼馴染であり、更に婚約者同士でもあるのだ。
ただ、二人の間には心友という言葉がピッタリで、恋愛とは少し違う。
リズも美しい緑の髪に深い紫の瞳をしており、小柄なのに出るところは出ていて、それなりにモテている。
ガラルもガラルで侯爵家の跡取りな上に文武両道。程よく筋肉がついた身体に、漆黒の髪と瞳に心奪われる令嬢も多く居る程だ。

すでに家族のように一緒に居る事で、ガラルが煩わしい縁談から逃げる為という意味もあり婚約を結んだというのは知っている。だからガラルはリズの恋心の事を知っているが、それはそれとして暖かく見守ってくれている事に感謝はしているし、何よりガラルには自分自身の素を曝け出す事が出来るので、リズとしても助かっている。

「ねぇガラル。手を出して」
「ん?」

言われて、すんなり掌を上に向けながら机の上に出すガラルの手に、自分の手を乗せる。

「リズ!??」

幼馴染と言えど、もうお互い良い年齢な為か、ガラルは若干頬を赤らめて焦るが、リズはガラルの手に触れるだけでなく、撫でたり、握ったりしている。

「……やっぱ……違うわ」
「え?」

ガラルは、なすがままの状態から、やっと開放されたかと思えば、リズはそんな事を口ばしる。

「ドキドキしないの!」

力強く、リズが訴える。

「この前、ダレンのハンカチが落ちてね!拾おうと思ったら、ダレンも拾おうとしたらしくて、手が触れてしまって……その時の心臓の音と言ったら!呼吸も苦しくなるし、パニックになるし!何とか平静を装ったけれど……もうしばらく興奮してたのよ!顔……赤くなってなかったかしら……」

思い出しているのか、うっとりとした表情で頬に手を添えるリズを見て、ガラルは苦笑する。

「えーっと……一応、僕はリズの婚約者なんだけど?」
「全く何も感じなかったわ」
「ですよねー」

分かってた、と言わんばかりにガラルは頷く。
ダレンと手が触れた時を思い出して、またも興奮し始めたのか、顔が赤くなり始めたリズに落ち着いてもらう為、ガラルはポットに入っている紅茶を自らリズのカップに注いだ。
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