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15.そして最期は
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「ふざけないで!!愛してなんていないくせに!!」
激昂し、叫ぶ。感情を全面に出した睨みつける私の表情に、両親は驚きの表情を隠せない。
「何を……言っているの?」
震え、信じられないものを見るかのように、声を絞り出し言う母。
「そいつか!神なんているわけがない!そいつに騙されているんだ!!」
怒りの矛先をシヴァに向ける父。
何を言っているんだろう……あぁ、いつもの事だった。
心が、表情が凍る。
聞かない、伝わらない、私の意思なんてない。
勝手に思い込んで、自由に捻じ曲げる。
「私は私の意思でここに居る事を望んだの」
たった一言、伝えたい言葉。
言いたい事は沢山あるけれど、今伝えたいのはこれだけ。
私は望んでここに居る。そしてこれからも。
真っ直ぐ両親を見て言い切った……が
「ありえないわ!そんな事!」
「言わされてるんだろう!そいつに!」
伝わらない。
何度……何度何度何度繰り返せば良いのだろう。
でも期待してしまっていたんだ。分かってもらえる、聞いてもらえる、伝わるって。
シヴァと暮らす中で、私は自分の意思が伝わる事を知ったから。だから余計に期待してしまったんだろう。
絶望とか、呆れとか、そういうのはもう一切なくて、ただただ心が冷えて何も感じない。
何とか説得しようと聖騎士が両親に何か言っていて。両親の護衛騎士は焦っている。
現実味がなく、ただの観劇を遠くから、いや、夢の中にいるような、そんな現実味のない心地でただ眺めていた。
「マリア……」
そんな私の様子に心配したのか、シヴァが私の手を掴んで顔を覗き込んできた。
「貴様!!!」
シヴァの頭の向こう。
父が聖騎士を振り切り、こちらに駆けてくる。
剣の手をかけ、刃が光る。
父を止めようと聖騎士は手を伸ばすも空を掴み
護衛騎士は焦ったのか母を庇うように立ち
父の剣がシヴァに向かい振りかぶる様まで全てスローモーションのようで——
私は咄嗟にシヴァを押しのけ、刃の前に出た。
身体に鋭い暑さが走り
生暖かい水に包まれる
呆然とした父が見えて
驚いた顔をしたシヴァが居て
平衡感覚がなくなったかのように身体が傾いていくようで
ゆっくりとゆっくりと、時間が進む
「マリアーーーーーーー!!!!!!!!!」
泣きそうな顔で、私の名前を叫ぶシヴァを抱きしめたくて。
でも身体が動かなくて。
だから大丈夫だよと声を出そうとして……私の意識は途切れた。
激昂し、叫ぶ。感情を全面に出した睨みつける私の表情に、両親は驚きの表情を隠せない。
「何を……言っているの?」
震え、信じられないものを見るかのように、声を絞り出し言う母。
「そいつか!神なんているわけがない!そいつに騙されているんだ!!」
怒りの矛先をシヴァに向ける父。
何を言っているんだろう……あぁ、いつもの事だった。
心が、表情が凍る。
聞かない、伝わらない、私の意思なんてない。
勝手に思い込んで、自由に捻じ曲げる。
「私は私の意思でここに居る事を望んだの」
たった一言、伝えたい言葉。
言いたい事は沢山あるけれど、今伝えたいのはこれだけ。
私は望んでここに居る。そしてこれからも。
真っ直ぐ両親を見て言い切った……が
「ありえないわ!そんな事!」
「言わされてるんだろう!そいつに!」
伝わらない。
何度……何度何度何度繰り返せば良いのだろう。
でも期待してしまっていたんだ。分かってもらえる、聞いてもらえる、伝わるって。
シヴァと暮らす中で、私は自分の意思が伝わる事を知ったから。だから余計に期待してしまったんだろう。
絶望とか、呆れとか、そういうのはもう一切なくて、ただただ心が冷えて何も感じない。
何とか説得しようと聖騎士が両親に何か言っていて。両親の護衛騎士は焦っている。
現実味がなく、ただの観劇を遠くから、いや、夢の中にいるような、そんな現実味のない心地でただ眺めていた。
「マリア……」
そんな私の様子に心配したのか、シヴァが私の手を掴んで顔を覗き込んできた。
「貴様!!!」
シヴァの頭の向こう。
父が聖騎士を振り切り、こちらに駆けてくる。
剣の手をかけ、刃が光る。
父を止めようと聖騎士は手を伸ばすも空を掴み
護衛騎士は焦ったのか母を庇うように立ち
父の剣がシヴァに向かい振りかぶる様まで全てスローモーションのようで——
私は咄嗟にシヴァを押しのけ、刃の前に出た。
身体に鋭い暑さが走り
生暖かい水に包まれる
呆然とした父が見えて
驚いた顔をしたシヴァが居て
平衡感覚がなくなったかのように身体が傾いていくようで
ゆっくりとゆっくりと、時間が進む
「マリアーーーーーーー!!!!!!!!!」
泣きそうな顔で、私の名前を叫ぶシヴァを抱きしめたくて。
でも身体が動かなくて。
だから大丈夫だよと声を出そうとして……私の意識は途切れた。
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