8 / 18
08.神様と暮らします
しおりを挟む
神は生贄を欲した事も求めた事もなく、ただただそこに存在しているだけだった。
だけれど人間は何かと理由をつけたり対処をしたりしないと気が済まないようで、ある時代に水害や疫病で大変な事になった時、勝手に生贄という制度を作ったようだ。
それから定期的に国が勝手にココに若い娘を放り込んで行くようになったそうだ。
国に帰る事も出来ない身寄りのない娘達ばかりで、生贄というより保護をしていたそうだ。そして気がついた、誰かと一緒にいる生活。
死ぬ事なんてない、長い長い悠久の時間。大半は眠って過ごしているらしが、娘が贈られた時だけは起きて一緒に過ごしていたそうだ。
娘の寿命が尽きるまで。
神に比べて短い人間の寿命だけれど、その短い時間がとても楽しく、自分がいかに寂しかったのか痛感したそうで、また生贄が贈られる事を悲しく思う反面、楽しみでもあったと————
「そうだったのですか……」
神の話を聞いて思った。少なくとも今まで生贄となった娘達は生贄となった事が幸いだったのではないかと。
身寄りがないという事は明日の生活すら分からない者の中から選んでいた可能性が高い。
ならば神の元に保護されていたのならば多少は穏やかな生活が出来たのではないのだろうか。
……幸せだったかどうかは別として。
自分の生い立ちを思い出す。
住む場所もあって、三食食べる事が出来て、学ぶ事も出来たし、身体を清潔に整える事も出来た。
確かに恵まれていただろう、外聞的には。
ただ、自由とか意思とかなかっただけで、私が私である必要がなかっただけで。心は貧しかったと言える。
「……話し相手になるだけ……ですか?」
私の口から出た問いかけるような言葉に、神はキョトンとした顔をした後、意図を汲み取ったのか答えた。
「いや、神の居住区に人間を連れて行く事は出来ないから、この近くに住む場所を作ってはあるんだけど、自給自足生活になるよ。話し相手だけというわけにはいかないかな……もし嫌なら出て行っても大丈夫だし」
少し寂しそうに神は言う。
けれど、私の目標は家を出る事であったし、どこか遠くの辺境へ行って生活するのか、ここにするのかの違いだけである。
すでに場所も用意してあって、一人じゃなく誰かが居るとするならば……それは私にとっても良い事なのではないだろうか。
居ないように扱われている感覚は一人で居るのと同じようなものだったけれど、寂しさに慣れているわけではない。
「これからお願いします。神様」
礼をしながら言うと、神は笑顔になって答えた
「喜んで!」
だけれど人間は何かと理由をつけたり対処をしたりしないと気が済まないようで、ある時代に水害や疫病で大変な事になった時、勝手に生贄という制度を作ったようだ。
それから定期的に国が勝手にココに若い娘を放り込んで行くようになったそうだ。
国に帰る事も出来ない身寄りのない娘達ばかりで、生贄というより保護をしていたそうだ。そして気がついた、誰かと一緒にいる生活。
死ぬ事なんてない、長い長い悠久の時間。大半は眠って過ごしているらしが、娘が贈られた時だけは起きて一緒に過ごしていたそうだ。
娘の寿命が尽きるまで。
神に比べて短い人間の寿命だけれど、その短い時間がとても楽しく、自分がいかに寂しかったのか痛感したそうで、また生贄が贈られる事を悲しく思う反面、楽しみでもあったと————
「そうだったのですか……」
神の話を聞いて思った。少なくとも今まで生贄となった娘達は生贄となった事が幸いだったのではないかと。
身寄りがないという事は明日の生活すら分からない者の中から選んでいた可能性が高い。
ならば神の元に保護されていたのならば多少は穏やかな生活が出来たのではないのだろうか。
……幸せだったかどうかは別として。
自分の生い立ちを思い出す。
住む場所もあって、三食食べる事が出来て、学ぶ事も出来たし、身体を清潔に整える事も出来た。
確かに恵まれていただろう、外聞的には。
ただ、自由とか意思とかなかっただけで、私が私である必要がなかっただけで。心は貧しかったと言える。
「……話し相手になるだけ……ですか?」
私の口から出た問いかけるような言葉に、神はキョトンとした顔をした後、意図を汲み取ったのか答えた。
「いや、神の居住区に人間を連れて行く事は出来ないから、この近くに住む場所を作ってはあるんだけど、自給自足生活になるよ。話し相手だけというわけにはいかないかな……もし嫌なら出て行っても大丈夫だし」
少し寂しそうに神は言う。
けれど、私の目標は家を出る事であったし、どこか遠くの辺境へ行って生活するのか、ここにするのかの違いだけである。
すでに場所も用意してあって、一人じゃなく誰かが居るとするならば……それは私にとっても良い事なのではないだろうか。
居ないように扱われている感覚は一人で居るのと同じようなものだったけれど、寂しさに慣れているわけではない。
「これからお願いします。神様」
礼をしながら言うと、神は笑顔になって答えた
「喜んで!」
107
お気に入りに追加
4,081
あなたにおすすめの小説
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~
***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」
妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。
「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」
元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。
両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません!
あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。
他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては!
「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか?
あなたにはもう関係のない話ですが?
妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!!
ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね?
私、いろいろ調べさせていただいたんですよ?
あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか?
・・・××しますよ?
【完結】あなたに従う必要がないのに、命令なんて聞くわけないでしょう。当然でしょう?
チカフジ ユキ
恋愛
伯爵令嬢のアメルは、公爵令嬢である従姉のリディアに使用人のように扱われていた。
そんなアメルは、様々な理由から十五の頃に海を挟んだ大国アーバント帝国へ留学する。
約一年後、リディアから離れ友人にも恵まれ日々を暮らしていたそこに、従姉が留学してくると知る。
しかし、アメルは以前とは違いリディアに対して毅然と立ち向かう。
もう、リディアに従う必要がどこにもなかったから。
リディアは知らなかった。
自分の立場が自国でどうなっているのかを。
【完結済み】婚約破棄致しましょう
木嶋うめ香
恋愛
生徒会室で、いつものように仕事をしていた私は、婚約者であるフィリップ殿下に「私は運命の相手を見つけたのだ」と一人の令嬢を紹介されました。
運命の相手ですか、それでは邪魔者は不要ですね。
殿下、婚約破棄致しましょう。
第16回恋愛小説大賞 奨励賞頂きました。
応援して下さった皆様ありがとうございます。
本作の感想欄を開けました。
お返事等は書ける時間が取れそうにありませんが、感想頂けたら嬉しいです。
賞を頂いた記念に、何かお礼の小話でもアップできたらいいなと思っています。
リクエストありましたらそちらも書いて頂けたら、先着三名様まで受け付けますのでご希望ありましたら是非書いて頂けたら嬉しいです。
必要ないと言われたので、元の日常に戻ります
黒木 楓
恋愛
私エレナは、3年間城で新たな聖女として暮らすも、突如「聖女は必要ない」と言われてしまう。
前の聖女の人は必死にルドロス国に加護を与えていたようで、私は魔力があるから問題なく加護を与えていた。
その違いから、「もう加護がなくても大丈夫だ」と思われたようで、私を追い出したいらしい。
森の中にある家で暮らしていた私は元の日常に戻り、国の異変を確認しながら過ごすことにする。
数日後――私の忠告通り、加護を失ったルドロス国は凶暴なモンスターによる被害を受け始める。
そして「助けてくれ」と城に居た人が何度も頼みに来るけど、私は動く気がなかった。
政略結婚のハズが門前払いをされまして
紫月 由良
恋愛
伯爵令嬢のキャスリンは政略結婚のために隣国であるガスティエン王国に赴いた。しかしお相手の家に到着すると使用人から門前払いを食らわされた。母国であるレイエ王国は小国で、大人と子供くらい国力の差があるとはいえ、ガスティエン王国から請われて着たのにあんまりではないかと思う。
同行した外交官であるダルトリー侯爵は「この国で1年間だけ我慢してくれ」と言われるが……。
※小説家になろうでも公開しています。
【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。
曽根原ツタ
恋愛
ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。
ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。
その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。
ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる