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 放課後、私は塾をサボると決めた。
 否、こんな状態で行っても勉強が出来ると思えない。
 気になって仕方がない私に、東さんと紺野さんも同意してくれた。
 羽柴さんは……一体、何を見つけたのか。
 皆が帰り静まり返った教室で、私達は顔を突き合わせて羽柴さんの言葉を待った。

「エゴサって知ってる?」
「エゴサ?」
「てことは、したことないんだね」

 エゴサ。エゴサーチの略で、ネット上で自分自身の情報を調べたりする事らしい。
 それがどういったものかよく分からないけれど、東さんは分かるのか頷いている。

「いちいち人の反応とか見てないしな~。エゴサする意味が分からない」

 写真のSNSをやっているという東さん。他人の視線なんて全く気にしていないのだろう。自分がしたいからやる、ただそれだけと言う姿がカッコいいと思う。

「それがどうしたの?」
「ちょっと、ライの事を調べてみたんだけど……」

 本題に入るように紺野さんが言えば、羽柴さんは自分のスマホ画面を皆に見せた。
 そこには昼間に見たのと同じような投稿が並んでいる。わざわざタグ付けをされているのは私へ通知が来ているのと同じものだ。
 過去にさかのぼってまで何かをいったり、投稿してあるものも同じように難癖をつけられている。

「アプリや動画投稿サイトにも同じようなコメントが並んでるみたい……」
「アンチって奴か。気にするだけ無駄だと思うけど」
「けど、いきなり一斉に湧いたようだよね」

 私はそれを見る勇気なんてなく、羽柴さんの報告だけを聞く。それでも心が抉れれるような、鋭い痛みが走る。
 ……平気でいられるわけなんてないのだ。
 今まで何もなかったのに。というか、無名で、たまたま知ってくれたような人達との交流だけだったのだから当たり前かもしれないけれど。
 ただ、歌っていただけ。
 下手だとか聞くに堪えないというなら聞かなければ良いのに。
 生意気だとか調子にのってるとか、そんなのどこから推測するのだろう。それも嫌なら見なければ良い。

 ――心がささくれだっていくようだ。

 「……可能性としては……考えたくないけど……遡ってみると言い出しているのは……」

 言いにくそうに羽柴さんが伝える。
 勇気を持って羽柴さんのスマホ画面をのぞき込んでみれば、見た事のある名前が並んでいる。
 それは全て、明里さんの配信で見た名前。アプリで明里さんの歌へとコメントしていた人達。
 そこから派生していくように知らない人達の名前が並んでいる。
 ……私、貴方達に何もしていないよねと言いたくなる。
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