40 / 57
40
しおりを挟む
「……でも、これ確かに本人からの……」
「智ちゃん、何か勘違いしてない?」
「……え?」
箸をおいて、冷たい目で私を見つめる明里さん。目の前に居る明里さんは、本当に明里さんなのかと困惑してしまう。
あんな目で見られた事もないし、こんな冷たい声で話しかけられた事もないのだから。
「自分のフォロワーの数、分かってる? 所詮無名でしょ。有名になったとか勘違いしてない?」
「そんなわけ……」
「歌始めたばっかの癖に、理想ばっか追い求めて。結局全てから逃げてるだけなのに?」
……そんな風に思っていたの?
確かに、その通りかもしれない。
地に足をつけていないのだから。でも……有名になっているとか思ってはいない。
きちんと自分の力量くらい理解している。
「ごちそうさま。くだらない話で食欲失せた」
「明里さん……」
私の声なんてまるで聞こえないかのように、明里さんはどこかへ出かけて行った。
……くだらない……なんて。
当然のように、おめでとうと言ってもらえると思っていた。
喜んでもらえると思っていた。
認めてもらえると望んでいた。
その全ては叶わず、むしろ毒を吐かれたようで。
「……ひゅっ」
息がしにくくなったかと思えば、過呼吸に襲われる。
涙が溢れるのは、苦しいからか。それとも悲しさからなのかも分からなくて……。
目の前にある茶碗を叩き割りたくなる衝動。そしてその破片で自分を傷つけたくなる衝動が……否、そうじゃない。
――希死念慮。
私は必死でそれに抗う。
嫌だ……嫌だ! 嫌だ!!
私は生きたい。私は歌いたい。
連Pさんの曲をどうしても歌いたいんだ!!
「うわぁあああんっ!!」
必死で自分の感情と戦い、何とか抑えこもうとすれば叫び声が口から出て来た。
同時に、涙も止めどなく溢れる。
泣いて。
泣いて。
泣いて。
泣き叫んで。
希死念慮を洗い流すように。
自虐ではなく、悲しい辛いという思いをきちんと吐き出すように。
私は、ただひたすら泣き叫んだ。
――どうして!
泣いていれば、そんな思いが胸に広がる。
どうして、そんな事を言うの!
どうして、そんな冷たくなったの!
それが本音なの!?
どうして、私に優しくしたの!?
答えの出ない「どうして」が沢山沸き上がる。
「……どうして……」
嗚咽が収まった頃、言葉として出たけれど、それでも頭の中が整理される事はない。
明里さんの考えなど、明里さんでしか分からないのだ。他人の私がのぞけるわけでもない。
泣き疲れたのだろう私は、そのまま意識が朦朧とし、眠りの世界へと落ちて行った。
「智ちゃん、何か勘違いしてない?」
「……え?」
箸をおいて、冷たい目で私を見つめる明里さん。目の前に居る明里さんは、本当に明里さんなのかと困惑してしまう。
あんな目で見られた事もないし、こんな冷たい声で話しかけられた事もないのだから。
「自分のフォロワーの数、分かってる? 所詮無名でしょ。有名になったとか勘違いしてない?」
「そんなわけ……」
「歌始めたばっかの癖に、理想ばっか追い求めて。結局全てから逃げてるだけなのに?」
……そんな風に思っていたの?
確かに、その通りかもしれない。
地に足をつけていないのだから。でも……有名になっているとか思ってはいない。
きちんと自分の力量くらい理解している。
「ごちそうさま。くだらない話で食欲失せた」
「明里さん……」
私の声なんてまるで聞こえないかのように、明里さんはどこかへ出かけて行った。
……くだらない……なんて。
当然のように、おめでとうと言ってもらえると思っていた。
喜んでもらえると思っていた。
認めてもらえると望んでいた。
その全ては叶わず、むしろ毒を吐かれたようで。
「……ひゅっ」
息がしにくくなったかと思えば、過呼吸に襲われる。
涙が溢れるのは、苦しいからか。それとも悲しさからなのかも分からなくて……。
目の前にある茶碗を叩き割りたくなる衝動。そしてその破片で自分を傷つけたくなる衝動が……否、そうじゃない。
――希死念慮。
私は必死でそれに抗う。
嫌だ……嫌だ! 嫌だ!!
私は生きたい。私は歌いたい。
連Pさんの曲をどうしても歌いたいんだ!!
「うわぁあああんっ!!」
必死で自分の感情と戦い、何とか抑えこもうとすれば叫び声が口から出て来た。
同時に、涙も止めどなく溢れる。
泣いて。
泣いて。
泣いて。
泣き叫んで。
希死念慮を洗い流すように。
自虐ではなく、悲しい辛いという思いをきちんと吐き出すように。
私は、ただひたすら泣き叫んだ。
――どうして!
泣いていれば、そんな思いが胸に広がる。
どうして、そんな事を言うの!
どうして、そんな冷たくなったの!
それが本音なの!?
どうして、私に優しくしたの!?
答えの出ない「どうして」が沢山沸き上がる。
「……どうして……」
嗚咽が収まった頃、言葉として出たけれど、それでも頭の中が整理される事はない。
明里さんの考えなど、明里さんでしか分からないのだ。他人の私がのぞけるわけでもない。
泣き疲れたのだろう私は、そのまま意識が朦朧とし、眠りの世界へと落ちて行った。
21
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
わざとじゃないから許してくれるわよね?
来住野つかさ
恋愛
黒衣のマデリーンは何故一人で祭壇に立ったのか?
ありふれた結婚式の始まりの時。お祝いのため待ち構えていた参列者の前に現れたのは、黒衣の娘。花嫁は純白の衣装を着るものなのに何があった、と人々は騒ぎ出す。そんな中、黒衣の娘――マデリーンが祭壇に進み出て説明を始める。両家の人間が誰も来ず、自分だけが黒衣で現れたのかを。
悪役令嬢の私が転校生をイジメたといわれて断罪されそうです
白雨あめ
恋愛
「君との婚約を破棄する! この学園から去れ!」
国の第一王子であるシルヴァの婚約者である伯爵令嬢アリン。彼女は転校生をイジメたという理由から、突然王子に婚約破棄を告げられてしまう。
目の前が真っ暗になり、立ち尽くす彼女の傍に歩み寄ってきたのは王子の側近、公爵令息クリスだった。
※2話完結。
妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。
しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹
そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる
もう限界がきた私はあることを決心するのだった
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。
彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。
それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。
そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。
公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。
そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。
「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」
こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。
彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。
同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。
聖女の妹によって家を追い出された私が真の聖女でした
天宮有
恋愛
グーリサ伯爵家から聖女が選ばれることになり、長女の私エステルより妹ザリカの方が優秀だった。
聖女がザリカに決まり、私は家から追い出されてしまう。
その後、追い出された私の元に、他国の王子マグリスがやって来る。
マグリスの話を聞くと私が真の聖女で、これからザリカの力は消えていくようだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる