33 / 57
33
しおりを挟む
「あ~……そんな事が……」
私から話を聞いた明里さんは頭を抑えて項垂れ、考えこんだ。
即答でどちらが悪いと言うわけでもなく、無条件に私の考えに肯定する事もない明里さんには更に信頼という感情が込み上げる。
否定はされたくないと思うけれど、頭ごなしに肯定して欲しいわけでもないからだ。
……どこか冷静になれている自分は、少しは成長しているのだろうか。
自分では分からないけれど、そんな事を少し望みながら明里さんの反応を伺っていれば、溜息をついて話始めた。
「とりあえず少し位なら居ても良いけど、自分の感情に整理をつけたらちゃんと戻りなよ?」
「もちろん」
少しだけでも居られるならありがたい。
まだ母親から逃げられる程、自立しているわけでもないのだ。
「……自分で自立出来ているなら問題ないけど、未成年だと部屋を借りるのも難しいし……収益化も」
言われて気が付いた。
全ては十八歳以上になっていた筈だ。親の承諾等があれば別だけれど、しっかり稼ぐとなれば難しいだろう。
「……何とか他で出来ないかな」
「今のうちに再生数を伸ばしたり、名前を売ったり……? そういえばバイトでも親の同意書なかったっけ?」
「……自分で……」
「まぁそうなるよね」
自分で責任が取れない、親の庇護下に居る学生としては厳しい所だ。
いっそ高校生じゃなければ別なのだろうかとも思うけれど、それでも未成年には変わりない。
――中途半端な年齢。
そんな風に感じてしまう。
自由に選びたいと思うのに、自由に選べない。
これから先、将来に向けて考えていきたいのに、全てにおいて親の同意がなければ難しい。かと言って、トラブルに見舞われた時、対処できる程、社会を知っているわけでもないし知識があるわけでもない。
そして……無知ゆえに選択を誤る時があるのも確かだ。
私は私の選択が間違っているとは思わないけれど。
それでも……こうやって家を出る事は良いと思っているわけでもない。
「少しでも私の話を聞いてくれるなら……」
話し合いという、お互いがお互いの意見を言い合って、聞く。
それだけでも出来たならばと思うけれど、他人を自分の意に染めて動かす事なんて出来ない。
親であれ、所詮は他人。自分とは別の人間なのだから。
「何か……聞いてると本当に毒親としか思えないもんねぇ……」
遠い目をする明里さん。明里さんも色々と思う事はあるのだろう。
親に自分の道を閉ざされる……そんな悔しい事はない。
きっと歌に出会わなければ、そんな事すら私は思わなかったのだろうけれど。
私から話を聞いた明里さんは頭を抑えて項垂れ、考えこんだ。
即答でどちらが悪いと言うわけでもなく、無条件に私の考えに肯定する事もない明里さんには更に信頼という感情が込み上げる。
否定はされたくないと思うけれど、頭ごなしに肯定して欲しいわけでもないからだ。
……どこか冷静になれている自分は、少しは成長しているのだろうか。
自分では分からないけれど、そんな事を少し望みながら明里さんの反応を伺っていれば、溜息をついて話始めた。
「とりあえず少し位なら居ても良いけど、自分の感情に整理をつけたらちゃんと戻りなよ?」
「もちろん」
少しだけでも居られるならありがたい。
まだ母親から逃げられる程、自立しているわけでもないのだ。
「……自分で自立出来ているなら問題ないけど、未成年だと部屋を借りるのも難しいし……収益化も」
言われて気が付いた。
全ては十八歳以上になっていた筈だ。親の承諾等があれば別だけれど、しっかり稼ぐとなれば難しいだろう。
「……何とか他で出来ないかな」
「今のうちに再生数を伸ばしたり、名前を売ったり……? そういえばバイトでも親の同意書なかったっけ?」
「……自分で……」
「まぁそうなるよね」
自分で責任が取れない、親の庇護下に居る学生としては厳しい所だ。
いっそ高校生じゃなければ別なのだろうかとも思うけれど、それでも未成年には変わりない。
――中途半端な年齢。
そんな風に感じてしまう。
自由に選びたいと思うのに、自由に選べない。
これから先、将来に向けて考えていきたいのに、全てにおいて親の同意がなければ難しい。かと言って、トラブルに見舞われた時、対処できる程、社会を知っているわけでもないし知識があるわけでもない。
そして……無知ゆえに選択を誤る時があるのも確かだ。
私は私の選択が間違っているとは思わないけれど。
それでも……こうやって家を出る事は良いと思っているわけでもない。
「少しでも私の話を聞いてくれるなら……」
話し合いという、お互いがお互いの意見を言い合って、聞く。
それだけでも出来たならばと思うけれど、他人を自分の意に染めて動かす事なんて出来ない。
親であれ、所詮は他人。自分とは別の人間なのだから。
「何か……聞いてると本当に毒親としか思えないもんねぇ……」
遠い目をする明里さん。明里さんも色々と思う事はあるのだろう。
親に自分の道を閉ざされる……そんな悔しい事はない。
きっと歌に出会わなければ、そんな事すら私は思わなかったのだろうけれど。
12
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
【完結】探さないでください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
私は、貴方と共にした一夜を後悔した事はない。
貴方は私に尊いこの子を与えてくれた。
あの一夜を境に、私の環境は正反対に変わってしまった。
冷たく厳しい人々の中から、温かく優しい人々の中へ私は飛び込んだ。
複雑で高級な物に囲まれる暮らしから、質素で簡素な物に囲まれる暮らしへ移ろいだ。
無関心で疎遠な沢山の親族を捨てて、誰よりも私を必要としてくれる尊いこの子だけを選んだ。
風の噂で貴方が私を探しているという話を聞く。
だけど、誰も私が貴方が探している人物とは思わないはず。
今、私は幸せを感じている。
貴方が側にいなくても、私はこの子と生きていける。
だから、、、
もう、、、
私を、、、
探さないでください。
【完結】番を監禁して早5年、愚かな獣王はようやく運命を知る
紺
恋愛
獣人国の王バレインは明日の婚儀に胸踊らせていた。相手は長年愛し合った美しい獣人の恋人、信頼する家臣たちに祝われながらある女の存在を思い出す。
父が他国より勝手に連れてきた自称"番(つがい)"である少女。
5年間、古びた離れに監禁していた彼女に最後の別れでも伝えようと出向くと、そこには誰よりも美しく成長した番が待ち構えていた。
基本ざまぁ対象目線。ほんのり恋愛。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
番を辞めますさようなら
京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら…
愛されなかった番
すれ違いエンド
ざまぁ
ゆるゆる設定
妻の死で思い知らされました。
あとさん♪
恋愛
外交先で妻の突然の訃報を聞いたジュリアン・カレイジャス公爵。
急ぎ帰国した彼が目にしたのは、淡々と葬儀の支度をし弔問客たちの対応をする子どもらの姿だった。
「おまえたちは母親の死を悲しいとは思わないのか⁈」
ジュリアンは知らなかった。
愛妻クリスティアナと子どもたちがどのように生活していたのか。
多忙のジュリアンは気がついていなかったし、見ようともしなかったのだ……。
そしてクリスティアナの本心は——。
※全十二話。
※作者独自のなんちゃってご都合主義異世界だとご了承ください
※時代考証とか野暮は言わないお約束
※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第三弾。
第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』
第二弾『そういうとこだぞ』
それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。
※この話は小説家になろうにも投稿しています。
【完結】愛していないと王子が言った
miniko
恋愛
王子の婚約者であるリリアナは、大好きな彼が「リリアナの事など愛していない」と言っているのを、偶然立ち聞きしてしまう。
「こんな気持ちになるならば、恋など知りたくはなかったのに・・・」
ショックを受けたリリアナは、王子と距離を置こうとするのだが、なかなか上手くいかず・・・。
※合わない場合はそっ閉じお願いします。
※感想欄、ネタバレ有りの振り分けをしていないので、本編未読の方は自己責任で閲覧お願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる