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人と関わり、学ぶのは一生。
学生の間は勉学と皆共通して学ぶものがあるけれど、社会に出たら仕事によって様々だ。
資格だけではない、他にも学ぶべき事は多々ある。それが自分の成長、更には昇進にも続いていく。
――嫌だ。
真っ先に出た感情はそれだった。
今でさえ、やっと話せるような人が出来たとは言え、やっていける自信なんてない。やっと楽しめる趣味を見つけたようなものなのに、またも仕事というレールの上で自己を亡くして生きていくのかと思えば、お先は真っ暗にしか思えないのだ。
生きるって……難しい。
人生にリタイアという逃げ道があれば良いのにと、死に希望を抱きそうになる。
「まぁ……なるようになるさ! だから趣味とか好きな事でストレス発散するんだから!」
どうして、そう考えられるのだろう。
どうして、そう楽観的になれるのだろう。
なるようになる、なんて考えられない。先を考えては不安になって、怖くなって……視界が闇に覆われていくようなのに。
「……好きな事」
唯一の希望。
心が晴れやかになる事。
そして……それがストレス発散となり、生きる目的ともなる。
「……うた……」
ポツリと口から零れた言葉に、明里さんがにっこりと笑う。
明里さんもそうなのだろうか。明里さんの場合ならば夢や目標にもなりえるけれど。
同志、仲間と言うには烏滸がましいかもしれないけれど、私の中では確実に親近感を覚える事だ。
「明里さん……一緒に歌いませんか!? 前みたい配信で!」
あの楽しさ、爽快感。
全てを忘れて打ち込む熱情に、終わった後の達成感。
それは何にも代えられないもので、今でも思い出すだけで心が躍る。
だからこそ……勇気を振り絞って提案したのだけれど、明里さんは申し訳なさそうな顔をした。
「ごめん……流石に今の時間は無理だな……」
「あ……」
騒音問題。
防音室があるわけでもない、アパートの一室。叫べば叫ぶだけ周囲に音は漏れ聞こえるだろう。
どうやら明里さんは近所の人達が何時くらいまでなら部屋に居ないとか、だいたい把握しているそうだ。そして、会話する事のある住人とは時間帯について相談したりもしたそうで……。
……立派な、大人としてやっている。
ちゃんと周りに馴染んで生活しているのだ。
……私と違って。
勝手に同じだと思って、そして勝手に裏切られたと感じてしまう私は何て自己中心的なのだろうと思うけれど、痛む心に間違いはなくて……。
「そうだよね……ごめん……」
重い心を抱えながら、私は家と呼ぶ場所へ戻った。
学生の間は勉学と皆共通して学ぶものがあるけれど、社会に出たら仕事によって様々だ。
資格だけではない、他にも学ぶべき事は多々ある。それが自分の成長、更には昇進にも続いていく。
――嫌だ。
真っ先に出た感情はそれだった。
今でさえ、やっと話せるような人が出来たとは言え、やっていける自信なんてない。やっと楽しめる趣味を見つけたようなものなのに、またも仕事というレールの上で自己を亡くして生きていくのかと思えば、お先は真っ暗にしか思えないのだ。
生きるって……難しい。
人生にリタイアという逃げ道があれば良いのにと、死に希望を抱きそうになる。
「まぁ……なるようになるさ! だから趣味とか好きな事でストレス発散するんだから!」
どうして、そう考えられるのだろう。
どうして、そう楽観的になれるのだろう。
なるようになる、なんて考えられない。先を考えては不安になって、怖くなって……視界が闇に覆われていくようなのに。
「……好きな事」
唯一の希望。
心が晴れやかになる事。
そして……それがストレス発散となり、生きる目的ともなる。
「……うた……」
ポツリと口から零れた言葉に、明里さんがにっこりと笑う。
明里さんもそうなのだろうか。明里さんの場合ならば夢や目標にもなりえるけれど。
同志、仲間と言うには烏滸がましいかもしれないけれど、私の中では確実に親近感を覚える事だ。
「明里さん……一緒に歌いませんか!? 前みたい配信で!」
あの楽しさ、爽快感。
全てを忘れて打ち込む熱情に、終わった後の達成感。
それは何にも代えられないもので、今でも思い出すだけで心が躍る。
だからこそ……勇気を振り絞って提案したのだけれど、明里さんは申し訳なさそうな顔をした。
「ごめん……流石に今の時間は無理だな……」
「あ……」
騒音問題。
防音室があるわけでもない、アパートの一室。叫べば叫ぶだけ周囲に音は漏れ聞こえるだろう。
どうやら明里さんは近所の人達が何時くらいまでなら部屋に居ないとか、だいたい把握しているそうだ。そして、会話する事のある住人とは時間帯について相談したりもしたそうで……。
……立派な、大人としてやっている。
ちゃんと周りに馴染んで生活しているのだ。
……私と違って。
勝手に同じだと思って、そして勝手に裏切られたと感じてしまう私は何て自己中心的なのだろうと思うけれど、痛む心に間違いはなくて……。
「そうだよね……ごめん……」
重い心を抱えながら、私は家と呼ぶ場所へ戻った。
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