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 そうか、アプリをしていない人も居るのか。
 ……ならば、これが初めて記念になる。全てにおいて。
 嬉しさが心に広がる。
 明里さんも楽しそうに、曲の準備を始めて、完了したのか私に視線で合図してきた。

 ♪♬~♪

 流れてきた曲。
 画面には明里さんが歌詞だけでなく楽譜のようなものまで出してくれた。

「「~♪~~♪♪」」

 二人で歌いだす。
 明里さんのハモリにつられないように、自分の音程を頑張って貫こうとすれば自然と声は大きくなり、それに伴って明里さんの声も大きくなる。
 楽しい、楽しい、楽しい!
 精一杯、楽しんで歌いきる。

「ありがとー! あ、投げ銭もありがとう!」
「投げ銭……?」

 歌っている間にもコメントが上がって、中には色がついていたようなものもあったけれど、歌う事に精一杯だった私は結局読めずじまいだった。

「あ、投げ銭ってのはね……」

『え、知らないの!?』
『初心者どころじゃないやつ!?』
『完全な原石だー!!』
『推せよ育てよ!』
『アプリのフォローしにいく!』
『私も!!』

 コメントが湧く。
 そして明里さんから投げ銭の説明を聞いた私は……。

「え……えぇえええーーー!?」

 こっそり提示された金額に、驚愕の声をあげる。
 だって、まだ配信して数分だ。というか歌ったのだって一曲だけなのだ。
 だけど……多分、高校生の平均お小遣いよりは上だと思う。
 流石、明里さんのファンといった所だろうか……明里さんはお仕事だと言っていたし。

「ちゃんと半分こね♪」
「えええええ!!!????」

 まさかの半分提示に、またも驚愕の声を上げてしまった。

『ウケる』
『ライちゃん、ピュアすぎる(笑)』
『まぁ初めての配信で投げ銭されるとかないと思うしねぇ』
『これが此処の日常(笑)』

 完全に皆、明音さんに投げているのに、私までお零れを貰って良いのだろうか。
 しかし皆が聞いている配信中にそんな事言って良いのか。
 ぐるぐると思考が目まぐるしく回って、何て返して良いのか分からなくなり、口からは言葉にならない声だけが漏れる。

「ライちゃん、何か色々と混乱してるから、この隙に曲を勝手に選んじゃおう♪」

『流石、明音たん(笑)』
『初心者に対して鬼(笑)』

 視聴者たちと会話を進めていく明里さん。
 もう、こうなればヤケだ! 歌え! 歌ってしまえ!
 何を言って良いのか分からないのであれば、歌声を紡いでしまえば良いのだ!
 一人だったら無言の空間かもしれないけれど、今は明里さんが居る為、思いっきり甘えてしまっているようなものだけれど。
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