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「ライちゃんは今人気急上昇中の子です~! みんなよろしくね!」
「えっ、ちょ……明音さんっ」

 観客が誰も居ない。拍手や歓声がないコントか。
 もしくは滑って観客が静かになった空間か。
 二人だけで誰も居ない場所へと向かって話すのに、不安が込み上げるし、どう答えて良いものか分からなくなってパニックが沸き起こってきた時、画面に流れる文字が目についた。

『あ~! 知ってる!』
『前に明音さんとコラボしてたよね!』
『え、どこで!?』
『歌うまライちゃん! どこで知り合ったの?』
『歌ってー!』

 批判的な内容なんてなくて、誰も彼もが受け入れてくれるようなコメントに心がギュッと掴まれるようだ。

「あ……ありがとう……」
「あっ! ライちゃんが皆の優しさに感動して泣いちゃってる~!」

 自然に涙が一粒零れ落ちた。
 どこかで怖かったのだろう。不安だったのだろう。
 未知の世界へと足を踏み入れるのは、誰かと一緒でもそれなりの恐怖を伴うものだ。

『えー!?』
『大丈夫! 明音ファン達は優しいよ!』
『歌うま大歓迎!』

 心が温かくなる言葉。
 明音さんのファン達は、とても良い人達ばかりだ。それは明音さんが良い人だからだろうか。

「歌おっか! 何にしよう?」

 いくらコメントがあったとしても、話すのは私達二人だけ。
 普通の会話……というのもあまりした事がない私だけれど、会話であれば相手も話す。
 ただのコメントというのは無機質で、その言葉をそのまま受け取るしか出来ないわけで……初めて配信をする私は未だに戸惑いがある。

「え……っと……」

 こちらが話さないと、ただの無言が流れるだけだ。変なプレッシャーがある。
 どう返そう。何を言おうかと頭が混乱していれば、明音さんが助けてくれる。

「ライちゃんは初配信で戸惑ってま~す! まぁ、そういう時は歌うに限るよね!」

『そーだー!』
『歌配信なんだから歌うべし!』
『歌っていれば話す必要なし!』
『コメントは読んで欲しいけどね~』

 ……歌で、繋がる。
 歌えば、それで良い。
 心に少しだけ安堵が広がる。無理に話さなくて良いんだと。

「じゃ……じゃあ、明音さんと初めてコラボした曲とか……」

 初めての配信。記念となるものなら、同じく記念になった初めて明里さんとコラボした曲なんてどうだろうと、呟くように言葉へと出した。

「アプリにも居る人なら知ってるよね~! それにしよっか! 生歌だよ!」

『賛成~!』
『アプリ民じゃない人にも紹介してくれー!』
『アプリ取れ(笑)』
『生歌わくどき』
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