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カチャリ
思った以上にドアの開く音が響いて、心が竦み恐怖心や不安が沸き起こってくる。
けれど、母に会いたくないという一心で足早に家へと入り、すぐさま部屋へと向かう。
「智子!?」
バタンッ!!
ガチャリ
母の声が聞こえたけれど、私は無視して部屋へと入り込むと鍵をかけて、ベッドへダイブした。
「はぁ……はぁっ」
呼吸が苦しい、涙が溢れる。
「智子!? ちょっと開けなさい!」
息が……しにくい。手足が痺れて、鼓動が早くなる。
母の声を聞きたくない。
私はイヤホンを耳につけて、ベッドに潜り込む。
拒絶反応が凄まじくて、今はそっとしておいて欲しいのだ。
音楽をかけて、じっとうずくまってゆっくり息を吐きながら呼吸が収まるのを待つ。
――過呼吸。
過換気症候群とも呼ばれている。
気が付けば常に私と共にあり、日常的に起こるものという認識でしかない。
とても苦しいけれど、死ぬわけではないし病院へ行く程ではないと思い放置している。
――なんか、もうどうでも良い。
いっそこのまま息が止まってしまえば良いのにと思える苦しみを耐えながら、母が遠のいていく足音が微かに聞こえ、呼吸が戻った時には眠りへとついた。
起床時間は何時もの通り朝六時位だった。目覚ましをかけているわけでもないけれど、染み付いた日常のリズムは狂う事がないのだろう。
母はまだキッチンに居る頃だろうと思い、私はアプリを開く。
「わ……」
ヒットランキングに自分の歌が乗っているのを見て、生きていて良かったなんて思う私は単純なのだろう。
だけれど……嬉しい。
好きな事で、ランキングに乗れる喜びが溢れる。
テストや模試で高得点をたたき出して順位が上がる事に比べたら、全く違うのだ。
プレッシャー、嫌な事へ突き進んでいる証とは正反対で……。
勉強をせずに、こうしてゆっくりした時間を過ごすのは何年ぶりだろう。とても自由を感じる。自分らしさを感じてしまう。
「……あれ?」
ふと、メッセージが届いている事に気が付く。
開けると明里さんからで、私が好きそうなおすすめの曲と言って何曲か動画配信サイトのURLが貼られていた。その全てが「歌ってみた」な事に笑いが漏れる。
どうやら私の声に似ているタイプの歌い手さんと呼ばれる人達のようだ。
イヤホンをかけて音楽を聴く。
――っ!!
病んだ、暗い曲。
心の闇を吐き出すような、心揺さぶられる歌詞と不協和音。
「……」
全く知らない曲、なのにとても心惹かれる曲。
一体、この曲は何なのだろう、誰の歌なのだろうと私はタイトルの検索をかけた。
思った以上にドアの開く音が響いて、心が竦み恐怖心や不安が沸き起こってくる。
けれど、母に会いたくないという一心で足早に家へと入り、すぐさま部屋へと向かう。
「智子!?」
バタンッ!!
ガチャリ
母の声が聞こえたけれど、私は無視して部屋へと入り込むと鍵をかけて、ベッドへダイブした。
「はぁ……はぁっ」
呼吸が苦しい、涙が溢れる。
「智子!? ちょっと開けなさい!」
息が……しにくい。手足が痺れて、鼓動が早くなる。
母の声を聞きたくない。
私はイヤホンを耳につけて、ベッドに潜り込む。
拒絶反応が凄まじくて、今はそっとしておいて欲しいのだ。
音楽をかけて、じっとうずくまってゆっくり息を吐きながら呼吸が収まるのを待つ。
――過呼吸。
過換気症候群とも呼ばれている。
気が付けば常に私と共にあり、日常的に起こるものという認識でしかない。
とても苦しいけれど、死ぬわけではないし病院へ行く程ではないと思い放置している。
――なんか、もうどうでも良い。
いっそこのまま息が止まってしまえば良いのにと思える苦しみを耐えながら、母が遠のいていく足音が微かに聞こえ、呼吸が戻った時には眠りへとついた。
起床時間は何時もの通り朝六時位だった。目覚ましをかけているわけでもないけれど、染み付いた日常のリズムは狂う事がないのだろう。
母はまだキッチンに居る頃だろうと思い、私はアプリを開く。
「わ……」
ヒットランキングに自分の歌が乗っているのを見て、生きていて良かったなんて思う私は単純なのだろう。
だけれど……嬉しい。
好きな事で、ランキングに乗れる喜びが溢れる。
テストや模試で高得点をたたき出して順位が上がる事に比べたら、全く違うのだ。
プレッシャー、嫌な事へ突き進んでいる証とは正反対で……。
勉強をせずに、こうしてゆっくりした時間を過ごすのは何年ぶりだろう。とても自由を感じる。自分らしさを感じてしまう。
「……あれ?」
ふと、メッセージが届いている事に気が付く。
開けると明里さんからで、私が好きそうなおすすめの曲と言って何曲か動画配信サイトのURLが貼られていた。その全てが「歌ってみた」な事に笑いが漏れる。
どうやら私の声に似ているタイプの歌い手さんと呼ばれる人達のようだ。
イヤホンをかけて音楽を聴く。
――っ!!
病んだ、暗い曲。
心の闇を吐き出すような、心揺さぶられる歌詞と不協和音。
「……」
全く知らない曲、なのにとても心惹かれる曲。
一体、この曲は何なのだろう、誰の歌なのだろうと私はタイトルの検索をかけた。
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