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57.自分らしく

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マユを悲しませないって言った!
マユを泣かせちゃダメって言った!
だからアイツ等に何もしなかったのに!
竜王が泣かせた!
おしおきだー!!!

精霊が竜王様におしおきをした理由をディル様が要約して教えてくれました。

「むしろ、あの涙の理由は竜王様なのかどうか…」
「物事を深く考えられるのは人間の特権だと思うよ。見たままで判別する、それが妖精だしね」
「裏で隠れて物事を進める人間とは大違いですよ」

そう言い、ラルド様はディル様を全面に押し出し背後に隠れるようにして扉を開けようとする。

「ラルド様…?」
「人間は即死する軟弱生物です」

言い切るラルド様に、仕方ないといった表情でディル様は率先して扉を開き中の様子を見る。
こちらに振り返り、小さく頷いたかと思うと扉を大きく開いた。
中には無傷のように見える挙動不審な竜王様と、俯き微動だにしないマユが佇んでいた。

「マユ…?」

恐る恐る声をかけると、機敏に動きこちらを見たマユが駆け寄り抱きついてきた。
声はあげずとも、沢山の涙を溢れさせて。
ただただ、私に強く抱きついている。

「マユ?涙の理由を教えてくれる?」

優しく問う。
きっとマユの事だから、マユなりの何かしら深い理由があるのだろう。
躊躇っているのか、泣いていて声が出ないのか、呟くような声が聞こえる。

「マユ、教えて欲しい。ちゃんとマユを教えて?」
「私…っ!……自分らしくありたくて……っ」

マユの背中を落ち着くように撫でる。

「ここに戻ってきて……あの馬鹿達と居て…思ったの………。こっちに来て、私の意思なんてなくて。人形のように、物のように……ただ居るだけで……私の感情も無視されて………」

鬼のような形相の竜王様と、無表情で剣に手をかけるラルド様が見える。
ディル様も密かに牙を剥き出しにしている…。

「今までの生活とは違って…常識も違って……前の生活を忘れられなくても、こっちの生活に当てはめて存在だけしなきゃいけなくて……。私は私で変わってないのに………私が分からなくなって」

マユが私を抱きしめる力が緩み、その顔を上げて私の顔をしっかり見る。

「あの時は生きるのに精一杯で気がつかなくて。アリシアは向こうの世界ごと私を受け入れてくれてたし、竜王様も私がやる事に心配はするけど反対はしなくて、ちゃんと見守ってくれた。だから、私の居場所はここ……ううん、私はここを居場所にしたいの。私が私として生きる場所として」

真っ直ぐに竜王様を見つめるマユ。
竜王様も、その目線に真剣に答えるように、逸らさずマユを見つめる。

「嫌なら断ってください…」

寂しそうに呟くマユだが、マユの意見を聞いて尚、私は気になる事があった為に尋ねる決意をした。

「マユ…貴方は竜王様が好きなの?貴方の国は自由恋愛だったのでしょう?」
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