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55.外堀ですか

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「一生目覚めないと思うわ。馬鹿だし。」
「反省するなら王妃様が怒ってる間に直ってるでしょうし…」
「いや、案外10年とかかも?」
「30年後、髪の毛がなくなってから目覚めれば面白いですね」
「それは年齢を重ねた者への嫌味か、セイン」

悪夢は本人が反省するまで繰り返し見続けるとマユが言ったら、何年後に目覚めるかと王妃様や両親、カイン兄やセイン兄が賭けでもしそうな勢いで年数予測を立て始めた。
輝く空気とは正反対な会話だと思う。


おぉおおおおお…

感嘆の声が響く。
それは人間も獣人も関係がなかった。
竜王様に乗って、マユが精霊を輝かせ、人間の目にも分かるようにして大地を潤していく。
食物が育ち、民がすぐに暮らしやすくなるように。
綺麗な水が飲めるように。
その光景に人種など関係なく見惚れている。

「獣人との関係制に至っては今更な気がしますけどね。はい次いきますか」

わざわざ仲の良さを見せつける必要もないけど一応、と付け足して言ったリスタにより仕切られて工程が進められる。
マユからリスタは大丈夫というお墨付きを貰っている為、特に何がどうと言う事もなく、宰相子息として働いてもらう感じだ。
傍目から見て、何か今の方が生き生きとしている気がする。
本心は自身にしか分からないという事か。

「詐欺だー!」
「力ある者が上に立つのです。当たり前でしょう」
「残念だったな!」

叫びながらラルド様の元へ行くカイル兄に両親が声をかける。
どうやら兵を気絶させていく人数を競っていたようで、それは当主の座をかけて行っていたようだ。
カイル兄は単純に、多く人数を気絶させたら俺の勝ち!くらいに考えていたようで、母から父を超えたのならば当主で良いでしょうと言われて愕然としていた。
父は引退し、言わずもがな、ルフィル国で獣人達と戦い遊び尽くす気らしく、カイル兄が羨ましがったのも当然だろう。

レイドワークの当主として、ラルド様の隣に立ち、民の前に出る。
盛大な歓声が響く。
獣人達が我先にと手を叩き、焦ったように人間達も拍手をする。

「「「「「ラルド様万歳!竜王、聖女御夫妻万歳!」」」」」
「なに!?」
「聖女様がご結婚!?」
「ラルド~!いつの間に~!」
「獣人離れどころか親子になったのか~!」

城に居て見ていた兵達だろうか、何人かの声が重なって聞こえた後、人間達は驚き、獣人達は笑い合ってる。

「ちがっ!……ぐっ!」

頭上で竜王様らしき声が聞こえたかと思うと、その口を植物のような蔦で巻きつけられ喋れなくなった竜王様と、笑顔で手を振るマユが見えた。
おめでたい事だと私達も笑顔を作り、マユが否定しないなら自分が言うべきことでもないというような感じで、誰も否定をしない。

竜王と聖女は夫婦となり、ラルド様は養子となる事は決定事項として、精霊を通じて各地へ瞬時に広がった。
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