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27.戻って来た

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「アリシア!無事だったのね!」

ディル様のおかげで、半日かからず領地に付いた。
カイル兄様は103、私は96と魔獣討伐数に関して買った負けたの話をしている所へ、母が父を押しのけてアリシアの元へ駆けつけ抱きしめた。
その格好は返り血が染み付いていたが、アリシアやカイルも同じような格好になっている。
ただ一人、いや一匹?ディル様は相変わらず綺麗な銀髪の毛皮が風になびいている。
多分、精霊により綺麗にしてもらっているのだろう。

「お父様!報告がございます」

押しのけられて悲しそうに私と母を見ている父に、兄が話しかけた。

「いや、うん…私も家族再会の抱擁を…」
「王妃様を含めて王都の三割程の人口がこちらに移動しています」
「は?」
「え?」

兄の報告に目と口をこれ以上ない程開き驚く両親。
それもそうだろう。
独立するまでは計画にあったし、多少人口が出入りすることも念頭にあったが、王妃様が移動してくるうえに三割とは予想外である。

「馬車のようですが、明日には到着する予定ですね」
「そなたは…いやいい!まずは準備だ!バルタ!」

ディル様が人型になり言葉を紡いだが、誰だと言う前に準備を優先する父は、執事のバルタに王妃様とディル様の客間を準備することと、移動してくる民のためにまずは簡易的な家の準備をし、それでも家の数が足りないようであれば屋敷の解放、そして食料確保を指示した。

「カイル、アリシア、戻ってきたところ悪いが、その方の紹介含め報告をしてくれないか」

父が辺境伯ならではの厳しい顔つきで言うが、私と母は眉をひそめた

「旦那様。皆様返り血に塗れており、絨毯だけでなくソファまで汚すおつもりですか?」

私達が苦言を呈する前に執事のバルタが言ってくれた為、身を清めてからの報告となった。
そのため、一旦ディル様は応接室にて待っていただく事になり、その間に急いで身支度を整える。



報告ついでに食事も、という事で食堂にて一同が会し、今まであった出来事を報告しあう。
密かに私と仲良くしていることを知っている両親はマユが脱走して来た事に、安堵の笑みを浮かべた。
獣人に対して差別意識はなくとも怖い存在かもしれないと、その存在と触れたことがなかった為の恐ろしさはあったが、ディル様の人柄や私の保護をしてくれた観点からも良い印象しかなくなったようだ。
ラルド様の事も含め、驚きはしたものの、ラルド様を国王に押し上げる事に関しては、明日王妃様が到着してから王妃様の態度を見て話をしてからになると、あらかたこちらの説明が終わったところで、ふと思っていた疑問を述べる。

「ちなみに、お母様達はどうして返り血に塗れているのですか?」
「王都の羽虫が攻めてくる前に保存食を作ろうと肉を調達していたのよ。それでも足りなくなるわね。畑の数を今から増やしたところで収穫がすぐではないから、しばらく肉で食いつなぐしかないわね」

まさかの食料問題が大きいことが浮上した。
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