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11話 チアルタ鳳凰録(下ノ巻)

キキョウ その3

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夜明けと共に私達は神獣が飛んで行った方角に急いで向かったがそこは既に地獄絵図だった。

城下町は火の海になりかけていて街の外では魔物の軍勢が押し寄せてきていた。

『な…どういうこと…? 結界が弱まっているというの!?』
『……ハッ!  姫様! 先程フィーネを封印石に注いでしまわれたせいでは!?』
『なっ!?』

嘘でしょ…? 結界は常に気を抜いても随時発動してる状態なのに…フィーネを少し注いだ程度で結界が緩むなんて…そんなこと有り得る?

いいえ、きっとなにかの間違いだわ、絶対そうよ!
私の結界が緩むなんてあるはずがない!
私はこの国の領主なのだから! 


『勇者共は神獣を必ず弱体化させるからそこで一気に……』

『姫様!』

聞き覚えのある男の声に気が付き振り返るとそこには我が国の召喚勇者タクヤが切羽詰まった顔つきでこちらに立っていた……勇者タクヤ…早いわね、まだ神獣を手に入れていないのに。


『姫様ご無事で良かったです… ここは危険ですので』

タクヤが1歩踏み出した瞬間シオンが私の命令よりも早くに動きだしタクヤに向かっていった。

『くっ!  』
『姫様、ここはシオンにお任せを 姫様は神獣を!』
『わかったわ』

私は神獣の元へとかけ出すと赤いマフラーをし変な格好をしている女が神獣を水の球体に封じ込めていた。


『よし! 捉えた!』
『そうは行かないわよ』
『なっ! タクヤは!?』
『貴方たちは私の計画の邪魔を許す訳には行かないのよ』
『計画…?』

私は女に向かってフィーネを込めて人蹴りをあびせた

『ぐっ!』
『邪魔はさせないから、そう……全ては私の望みの為にね』

私は笑みを浮かべ神獣の元まで歩み寄ったがそれも虚しく初代勇者ジン・トオヤマによって阻まれてしまった。

『姫さん、少々おいたがすぎたようじゃな』
『どきなさい! 命令よ 勇者如きが私に意見するな!』
『ワシには誰が封印を解いたかすぐにわかったぞ、あまりワシらを甘く見るなよ?』
『ふん! それがどうしたって言うのよ! 私は願いを叶えてもらうために神獣を封印から解き放ったのよ!それの何が悪いのよ!』
『……やれやれこれで封印獣が解き放たれたのも3匹目・・・か』
『何をごちゃごちゃと……いいから早くどきなさい!』

こいつは何がしたいのか何が言いたいのか全く分からないわ、足留めのつもり?

『姫さん、鳳凰に願い事をするのはオススメせんぞ』
『は? 何が言いたいのよ』

まさかのコイツも願いを? 
だけど私の思惑とは裏腹に違う答えが返ってきた。


『鳳凰は気に入った契約者の願いを叶えると引替えに心臓を捧げなければならん、無論自信のな。』
『デタラメを抜かすな!』

私は気づけば初代勇者に向かって魔法攻撃を放ったがそれも虚しく弾かれてしまった。

『うそ…最大火力よ…?』
『勝負ありじゃ、お前さんの負けじゃよ キキョウ殿。』

負けた?……私が?    この私がフィーネを使った戦いで負けてしまったというの?

私はただただ呆然とするしか無かった。



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