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ミシャルの傷を治療したクロディクスはゼリヌと共に去っていたシャルル達を見送ってから手のひらに残る残滓をしばらく眺めていた。

呪われてからより強くなったクロディクスの魔力には殆ど言っていいほど出来ない事はなかった。
人を蘇らせたりといった禁忌に手は出した事はないものの、縛りごとはないクロディクスの魔法で治療したミシャルの傷には、その傷を受けた時のミシャルの感情が色濃く残っていた。

頬の傷や首の擦り傷のようなものから背中の鞭の痕まで、その呪いにも似たミシャルへ向けられた憎しみは傷となっても尚、ミシャルの身体に残っていたようだった。

クロディクスには目が黒い瞳という以外ミシャルは普通の令嬢と変わらないように見えていた。
受けるべき教育すら受けていないという割に、自分で学ぶ機会が得られると途端に様々なことを吸収してみせるミシャルは覚えが悪い訳でもなかった。

食事の時は顕著に知らない事を知って煌めく瞳は卑屈なミシャルよりよほど彼女らしい表情でクロディクスにもそんな表情を見せるミシャルは好ましく映っていた。

「傷に残ったものが呪いというわけでもないのか」

もしかしたらという思いもあって傷を治療したクロディクスは近くでミシャルの呪いが見つからないか探ろうとした。
ベッタリとこびり付いた執拗な傷についていた感情が呪なのかと思えばそうではなかったようで、クロディクスが治療中に感じていた不愉快な感情にミシャルは全くと言って気が付いていないようだった。
碌に人と関わらないで生きていたクロディクスにとって久しぶりに感じた不気味さと不愉快な感情は人間らしさを思い出させると共にどこか高揚感を抱かせた。

ミシャルが来てからクロディクスは変わりつつある変化を楽しみ始めていた。

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