8 / 51
7
しおりを挟む
「あの子は随分不遇な生活をしていたようだぞ」
リュークが現れるまで烏と会話していたクロディクスはミシャルの境遇を聞き、見窄らしい格好をしていたミシャルに納得した。
烏によるミシャルの境遇は姿からも分かるほどにひどい扱いだった。
身体に傷をつけ、継ぎはぎだらけのドレスを着ていたミシャルがなぜそんな目に合うのかクロディクスは疑問に思いつつ聞いていた。
だが、それだけだった。
ミシャル以上に不幸な者はいるのだからとミシャルの境遇には全くクロディクスは興味を持たないで、本題を探るように烏に伝えた。
そんな矢先にリュークが現れ、場をかき乱した彼に嫌がらせのような夕食の準備を命じたクロディクスは1人物思いに耽る。
なぜミシャルがクロディクスの結界を通り抜ける事が出来たのか。
クロディクスの結界は条件の対象以外を通さない物だった。
たとえ神であっても条件から一つでも外れるものなら通る事は出来ないほど強力な結界の筈だっだ。
ミシャルが通り抜けてみせたこの時までは。
この屋敷に仕掛けた結界の条件は2つ。
一、呪いをもつものであること。
一、クロディクスに害をなさないということ。
つまり、この結界を通り抜けた時点でミシャルは呪いをかけられていて困ってここに来たのかとクロディクスは当たりをつけていたのだが、ミシャル自身は呪いをうけた形跡もなければ、困っている様子もないようだった。
ただ、人生に絶望して死を望む令嬢でしかなかった。
結界自体に綻びがあるのかと、クロディクスは一度結界を検分してみたが、問題は何ひとつ見つからなかった。
屋敷を覆う結界には誰かが通った痕もなければ、通り抜けた後に結界を繕った形跡もなかった。
そうなってくると答えはたった一つ、ミシャル自身が知らない間に呪いを受けている事になる。
だが、クロディクスの目に見える範囲では呪いの残滓を感じる事も出来なかった。
いつ死んでもおかしくないほど疲弊はしているものの、呪いは大なり小なり受けた者に負の要素を付加する性質があったが、ミシャルにはその様子がまったく見受けれなかった。
クロディクスの力を持ってしてもわからない、呪いを持っているのかはたまた別の力を持っているのか。
平凡な貧しい思いをしてきた令嬢にしか見えないミシャルにクロディクスはますます興味を抱いた。
もしや、この身を不死に追いやった呪いを解く手掛かりになるのではないかと、クロディクスはミシャルに期待をしていた。
胸に刺さる呪いの塊でもある弓矢はクロディクス以外に見える者は今までいなかった。
矢を見る事が出来る者がこの矢を抜けるのであれば、クロディクスはこの世から解放されて死ぬ事が出来る。
長年の願いが叶うかも知れない。
突然降って沸いた僥倖にクロディクスは頬を緩め、深くソファーに身を沈めた。
耳につけた飾りが音を立てて揺れる。
なにはともあれ、まずはミシャルの力を見極めるねばならなかった。
時間は掛かってもクロディクスには無限に時間はありあまっていた。
あの子がこちらに気を許して秘密の一つや二つを話してもらうのを待つか、ミシャル自身を隅々まで検分させて貰うのを待つか。
どちらにしてもクロディクスはミシャルを当分の間そばに置く事を決めていた。
リュークが現れるまで烏と会話していたクロディクスはミシャルの境遇を聞き、見窄らしい格好をしていたミシャルに納得した。
烏によるミシャルの境遇は姿からも分かるほどにひどい扱いだった。
身体に傷をつけ、継ぎはぎだらけのドレスを着ていたミシャルがなぜそんな目に合うのかクロディクスは疑問に思いつつ聞いていた。
だが、それだけだった。
ミシャル以上に不幸な者はいるのだからとミシャルの境遇には全くクロディクスは興味を持たないで、本題を探るように烏に伝えた。
そんな矢先にリュークが現れ、場をかき乱した彼に嫌がらせのような夕食の準備を命じたクロディクスは1人物思いに耽る。
なぜミシャルがクロディクスの結界を通り抜ける事が出来たのか。
クロディクスの結界は条件の対象以外を通さない物だった。
たとえ神であっても条件から一つでも外れるものなら通る事は出来ないほど強力な結界の筈だっだ。
ミシャルが通り抜けてみせたこの時までは。
この屋敷に仕掛けた結界の条件は2つ。
一、呪いをもつものであること。
一、クロディクスに害をなさないということ。
つまり、この結界を通り抜けた時点でミシャルは呪いをかけられていて困ってここに来たのかとクロディクスは当たりをつけていたのだが、ミシャル自身は呪いをうけた形跡もなければ、困っている様子もないようだった。
ただ、人生に絶望して死を望む令嬢でしかなかった。
結界自体に綻びがあるのかと、クロディクスは一度結界を検分してみたが、問題は何ひとつ見つからなかった。
屋敷を覆う結界には誰かが通った痕もなければ、通り抜けた後に結界を繕った形跡もなかった。
そうなってくると答えはたった一つ、ミシャル自身が知らない間に呪いを受けている事になる。
だが、クロディクスの目に見える範囲では呪いの残滓を感じる事も出来なかった。
いつ死んでもおかしくないほど疲弊はしているものの、呪いは大なり小なり受けた者に負の要素を付加する性質があったが、ミシャルにはその様子がまったく見受けれなかった。
クロディクスの力を持ってしてもわからない、呪いを持っているのかはたまた別の力を持っているのか。
平凡な貧しい思いをしてきた令嬢にしか見えないミシャルにクロディクスはますます興味を抱いた。
もしや、この身を不死に追いやった呪いを解く手掛かりになるのではないかと、クロディクスはミシャルに期待をしていた。
胸に刺さる呪いの塊でもある弓矢はクロディクス以外に見える者は今までいなかった。
矢を見る事が出来る者がこの矢を抜けるのであれば、クロディクスはこの世から解放されて死ぬ事が出来る。
長年の願いが叶うかも知れない。
突然降って沸いた僥倖にクロディクスは頬を緩め、深くソファーに身を沈めた。
耳につけた飾りが音を立てて揺れる。
なにはともあれ、まずはミシャルの力を見極めるねばならなかった。
時間は掛かってもクロディクスには無限に時間はありあまっていた。
あの子がこちらに気を許して秘密の一つや二つを話してもらうのを待つか、ミシャル自身を隅々まで検分させて貰うのを待つか。
どちらにしてもクロディクスはミシャルを当分の間そばに置く事を決めていた。
86
お気に入りに追加
2,219
あなたにおすすめの小説
婚約破棄したので、元の自分に戻ります
しあ
恋愛
この国の王子の誕生日パーティで、私の婚約者であるショーン=ブリガルドは見知らぬ女の子をパートナーにしていた。
そして、ショーンはこう言った。
「可愛げのないお前が悪いんだから!お前みたいな地味で不細工なやつと結婚なんて悪夢だ!今すぐ婚約を破棄してくれ!」
王子の誕生日パーティで何してるんだ…。と呆れるけど、こんな大勢の前で婚約破棄を要求してくれてありがとうございます。
今すぐ婚約破棄して本来の自分の姿に戻ります!
さげわたし
凛江
恋愛
サラトガ領主セドリックはランドル王国の英雄。
今回の戦でも国を守ったセドリックに、ランドル国王は褒章として自分の養女であるアメリア王女を贈る。
だが彼女には悪い噂がつきまとっていた。
実は養女とは名ばかりで、アメリア王女はランドル王の秘密の恋人なのではないかと。
そしてアメリアに飽きた王が、セドリックに下げ渡したのではないかと。
※こちらも不定期更新です。
連載中の作品「お転婆令嬢」は更新が滞っていて申し訳ないです(>_<)。
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
噂好きのローレッタ
水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。
ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。
※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです)
※小説家になろうにも掲載しています
◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました
(旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)
前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています
矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜
――『偽聖女を処刑しろっ!』
民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。
何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。
人々の歓声に包まれながら私は処刑された。
そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。
――持たなければ、失うこともない。
だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。
『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』
基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。
※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)
いらないと言ったのはあなたの方なのに
水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬
◇いいね、エールありがとうございます!
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる