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ワムナール・ガリバーの名を知らないダンサーなんてダンサーと名乗る資格はない。
幼いころから貴族のたしなみとして始めたダンスで才能を開花させ、世界の中でワムナールのダンス技術に勝てるものなどどこを探したっていない。
15でサラ・アルバリトとダンスパートナーを組み、美しい男女から織りなす世界最高のダンス技術は衰えることを知らず世界のイギリスを牽引する最高のダンサーだった。
それが今、ロイの前にいる。
「よろしく」
ロイはワムナールの美しい手をみた。
汚れることを知らない艶やかな手がロイのどんなに洗っても汚れ切っている手が汚してしまいそうで、握手すらできなかった。
なぜ、世界中を飛び回っているはずのワムナールがこのホールにいるのかというと、彼のダンスパートナーであるサラが練習中の事故でしばらくダンスができないということで、ワムナールはこのホールでサラの怪我が治る間働くことになったらしい。
確かにこのホールは富裕層の淑女が集まる格式だからホテルではあるが、それでもワムナールのする仕事ではないだろう。
「君、意外と失礼なんだね」
握手をしない様子のロイに呆れたようにワムナールは言った。
違う、と言いたかったが口を開き同じ空気を共有するだけでワムナールが汚れてしまいそうで、ロイはそのままその場を去った。
ーーーーーーーーーーーー
「ワムナール、すまない。彼には俺がよく言っておく」
「オーナー、俺は気にしないよ」
いくらこのホールの一番のダンサーと言っても育ちはよくない。
いや、ワムナールに勝てる人間などそう現れないだろう。
ワムナールもこんな雑多としたホールに長くいるつもりはない。ダンスパートナーのサラの怪我が完治しだいさっさと辞めるつもりだ。
ダンスを女との金絞りとみているやつらと慣れあう気はワムナールには毛頭なかった。
「オーナー、そろそろ準備をしますので失礼します」
適当な理由を言ってワムナールは支配人室から出た。
タバコの匂いが染みついたこの部屋なんて一時もいたくなかった。
自分用に与えられた準備室に入り準備を行う。
「ロイ・ロッソ…」
ワムナールは先ほどこのホールで一番人気と言っていたロイの顔を思い浮かべた。
確かに顔は整っており、黒髪とややブルーの瞳はきらめいていてまるで星のようだった。
その顔がワムナールの前では無表情でただ棒のように立っている姿はそれだけで様になっていた。
体格もそれなりにある。磨けばいいダンサーになるというのに本当にもったいない。
ーーーーーーーーーーーー
ああ、もったいない。
ロイ・ロッソの体格、手足の長さ。なぜなぜ!!!
「おいロイ・ロッソ」
「………」
「来い!」
「はっ!?」
仕事が終わったロイをワムナールは自分の準備室へと無理やり連れ込んだ。
意味が分からずロイのブルーの瞳は揺れている。
「おい、今から荷物をまとめろ。オーナーにここをやめると言え」
「はっ、なんで…?」
「お前のこの体格、動き、すべて天才的だ。この俺がいうのだから間違いない。今からでも遅くない、ちゃんとしたパートナーと組み教師に習えば俺の次にうまいダンサーになれる」
「ちょっ…」
「さっさと荷物をまとめろ。ああ、それは後でやらせよう、行くぞ」
「ちょっと待て!」
ロイは叫ぶように言った。
はっ、としてワムナールはロイの腕を離した。
服も髪も乱れているロイは頬を紅潮させながらワムナールに怒声を浴びせた。
「なんなんだ、荷物まとめろとかやめろとか…、俺の仕事に口だすんじゃねぇ!」
「こんなタバコや香水にまみれて踊るよりやるべきことがあるからだ」
「俺は知らねぇ!」
「待て!!」
部屋から出ていこうとするロイをワムナールは必死で止めた。
なぜわからない。この俺がここまで言っているのに。
暴れるロイをワムナールは壁に押し付けた。
そのままロイの腕をひねり動かなくする。
「いいか。よく聞け。お前には俺には及ばないが才能がある。ここにいるべきではない」
「なん、の、才能だよ…!」
「わからないのか? いいかよく聞け」
「っ!」
ワムナールはロイの燕尾服の上衣の中に手を入れた。
体のバランスは整っている。腹筋の出来も完璧だ。
「いいか。俺の手をよく感じろ。お前の体は――」
「うるせぇ!」
「アッ!」
固く拘束していたはずなのにうまくワムナールの手から抜け出したロイは振りほどいた反動でワムナールの顔を殴る。
殴られた衝撃で床に倒れたワムナールをロイは顔を赤くして怒鳴った。
「才能とか意味わかんねぇ。この変態が!」
荒々しく出て行ったロイの余韻が消えた後もワムナールは殴られた顔に手を抑えながらロイが出て行った先を眺めていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「なんだ、なんだあいつ…」
ロイはワムナールに乱された燕尾服を簡単に直し、同じ建物内の自室に戻った。
ワムナールに触られたあとが熱い。
「……くそっ」
あのワムナールのグリーンの瞳。
それに見つめられたらもう一生抜け出せないきがした。
幼いころから貴族のたしなみとして始めたダンスで才能を開花させ、世界の中でワムナールのダンス技術に勝てるものなどどこを探したっていない。
15でサラ・アルバリトとダンスパートナーを組み、美しい男女から織りなす世界最高のダンス技術は衰えることを知らず世界のイギリスを牽引する最高のダンサーだった。
それが今、ロイの前にいる。
「よろしく」
ロイはワムナールの美しい手をみた。
汚れることを知らない艶やかな手がロイのどんなに洗っても汚れ切っている手が汚してしまいそうで、握手すらできなかった。
なぜ、世界中を飛び回っているはずのワムナールがこのホールにいるのかというと、彼のダンスパートナーであるサラが練習中の事故でしばらくダンスができないということで、ワムナールはこのホールでサラの怪我が治る間働くことになったらしい。
確かにこのホールは富裕層の淑女が集まる格式だからホテルではあるが、それでもワムナールのする仕事ではないだろう。
「君、意外と失礼なんだね」
握手をしない様子のロイに呆れたようにワムナールは言った。
違う、と言いたかったが口を開き同じ空気を共有するだけでワムナールが汚れてしまいそうで、ロイはそのままその場を去った。
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「ワムナール、すまない。彼には俺がよく言っておく」
「オーナー、俺は気にしないよ」
いくらこのホールの一番のダンサーと言っても育ちはよくない。
いや、ワムナールに勝てる人間などそう現れないだろう。
ワムナールもこんな雑多としたホールに長くいるつもりはない。ダンスパートナーのサラの怪我が完治しだいさっさと辞めるつもりだ。
ダンスを女との金絞りとみているやつらと慣れあう気はワムナールには毛頭なかった。
「オーナー、そろそろ準備をしますので失礼します」
適当な理由を言ってワムナールは支配人室から出た。
タバコの匂いが染みついたこの部屋なんて一時もいたくなかった。
自分用に与えられた準備室に入り準備を行う。
「ロイ・ロッソ…」
ワムナールは先ほどこのホールで一番人気と言っていたロイの顔を思い浮かべた。
確かに顔は整っており、黒髪とややブルーの瞳はきらめいていてまるで星のようだった。
その顔がワムナールの前では無表情でただ棒のように立っている姿はそれだけで様になっていた。
体格もそれなりにある。磨けばいいダンサーになるというのに本当にもったいない。
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ああ、もったいない。
ロイ・ロッソの体格、手足の長さ。なぜなぜ!!!
「おいロイ・ロッソ」
「………」
「来い!」
「はっ!?」
仕事が終わったロイをワムナールは自分の準備室へと無理やり連れ込んだ。
意味が分からずロイのブルーの瞳は揺れている。
「おい、今から荷物をまとめろ。オーナーにここをやめると言え」
「はっ、なんで…?」
「お前のこの体格、動き、すべて天才的だ。この俺がいうのだから間違いない。今からでも遅くない、ちゃんとしたパートナーと組み教師に習えば俺の次にうまいダンサーになれる」
「ちょっ…」
「さっさと荷物をまとめろ。ああ、それは後でやらせよう、行くぞ」
「ちょっと待て!」
ロイは叫ぶように言った。
はっ、としてワムナールはロイの腕を離した。
服も髪も乱れているロイは頬を紅潮させながらワムナールに怒声を浴びせた。
「なんなんだ、荷物まとめろとかやめろとか…、俺の仕事に口だすんじゃねぇ!」
「こんなタバコや香水にまみれて踊るよりやるべきことがあるからだ」
「俺は知らねぇ!」
「待て!!」
部屋から出ていこうとするロイをワムナールは必死で止めた。
なぜわからない。この俺がここまで言っているのに。
暴れるロイをワムナールは壁に押し付けた。
そのままロイの腕をひねり動かなくする。
「いいか。よく聞け。お前には俺には及ばないが才能がある。ここにいるべきではない」
「なん、の、才能だよ…!」
「わからないのか? いいかよく聞け」
「っ!」
ワムナールはロイの燕尾服の上衣の中に手を入れた。
体のバランスは整っている。腹筋の出来も完璧だ。
「いいか。俺の手をよく感じろ。お前の体は――」
「うるせぇ!」
「アッ!」
固く拘束していたはずなのにうまくワムナールの手から抜け出したロイは振りほどいた反動でワムナールの顔を殴る。
殴られた衝撃で床に倒れたワムナールをロイは顔を赤くして怒鳴った。
「才能とか意味わかんねぇ。この変態が!」
荒々しく出て行ったロイの余韻が消えた後もワムナールは殴られた顔に手を抑えながらロイが出て行った先を眺めていた。
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「なんだ、なんだあいつ…」
ロイはワムナールに乱された燕尾服を簡単に直し、同じ建物内の自室に戻った。
ワムナールに触られたあとが熱い。
「……くそっ」
あのワムナールのグリーンの瞳。
それに見つめられたらもう一生抜け出せないきがした。
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