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久しぶりの再会
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気が付けば、今まで過ごしていた城外の宿舎から離れて一ヵ月が経とうとしていた。
日はさらに短くなっている。そろそろ雪が降るだろうと兵士が話しているのを小耳にはさみながらコルドは城内を歩いていた。
城からの支給服も厚手の物が支給されるようになった折、コルドが城内を歩いていた時だった。
「コルド!」
考え事の最中、聞きなれた懐かしい声がしコルドは反射的に振り返った。
そこに居たのはユーリだった。
城外の人間であるユーリがなぜいるのだろうか、思わず立ち止まる。
「ユーリ……」
コルドの驚いた顔にユーリは笑みを浮かべた。
ユーリは変わらない。特徴的な赤い髪が少し伸びたくらいだろうか。
久しぶりに会う友の姿にコルドも同じく笑みを浮かべる。
「今日はここの雑草ぬきだ。もう仕事は終わったが、城内だからお前がいると思ってな。元気か?」
「ああ」
「そりゃよかった。お前、全然宿舎に戻ってきていないから、みんな心配していたんだがー-」
ユーリは少し間を置き、コルドの全身をくまなく見た。
「心配なさそうだな」
「……ああ、元気だ」
ユーリの含みのある言い方が気になった。
そういえば、ユーリとはコルドが王付き兵に呼ばれて深夜宿舎を離れて以来である。
同室のユーリはさぞかし心配だっただろう。コルドは心配をかけたユーリに謝罪をしようと口を開いた。
「ユーリ、その」
「その服、似合ってるな」
遮られて言われた言葉に思わず面食らう。
コルドが着ていたのは城内の人間の支給服だった。
コルドが塔で過ごすようにマラジュに命令されてから、コルドの元にも支給されるようになったのだ。
月に1枚支給される城外のものと違い、毎週支給される城内の服は上等で質がよく、着ると心地いいため最近のコルドの服はもっぱらそれだった。
「それ、城内の服だろう? 前々から思っていたんだ。お前は城外の服は似合ってないとな。お前は、やっぱり違うよ。俺らと」
「そう、だろうか?」
「ああ。お前は違う」
お前は違う。
それは、ユーリが以前酔いに回った口で言った言葉と同じだ。
あの言葉を覚えているのだろうか。酒が弱いユーリがそうだとは思えなかったが。
コルドはどう返せばよいのかわからずあいまいな笑みを浮かべる。
「……そうか」
「王付きの兵になったのか?」
「違う」
「そうか」
ユーリが深く詮索することはなかった。
たった1ヶ月しか会っていないはずのユーリとの間になにか分厚い壁が出来てしまったような気がした。
どこかよそよそしさを感じるユーリにコルドは焦りながら言う。
「ユーリ、その……」
「コルド、お前はこの城で暮らすのか?」
「……それは」
「すまねぇ、詮索しすぎた」
ユーリがコルドの返答を聞く前にユーリは会話を終わらせ、コルドの肩をたたく。
その様子が今生の別れのように感じ、コルドは再度ユーリの名を呼んだ。
「ユーリ」
「コルド、俺からのアドバイスだ。お前が決めたなら、後悔するなよ」
「……」
「じゃあな、コルド」
ユーリの言葉と同時に鳴ったのは夜を知らせる鐘の音だ。
あともう少しで城内と城外を隔てる門が閉じてしまう。
送れるわけにはいかないユーリはコルドの返答を待たず、背を向けた。
ユーリの遠くなる後姿を見ながら、コルドは鐘の音を聞いていた。
日はさらに短くなっている。そろそろ雪が降るだろうと兵士が話しているのを小耳にはさみながらコルドは城内を歩いていた。
城からの支給服も厚手の物が支給されるようになった折、コルドが城内を歩いていた時だった。
「コルド!」
考え事の最中、聞きなれた懐かしい声がしコルドは反射的に振り返った。
そこに居たのはユーリだった。
城外の人間であるユーリがなぜいるのだろうか、思わず立ち止まる。
「ユーリ……」
コルドの驚いた顔にユーリは笑みを浮かべた。
ユーリは変わらない。特徴的な赤い髪が少し伸びたくらいだろうか。
久しぶりに会う友の姿にコルドも同じく笑みを浮かべる。
「今日はここの雑草ぬきだ。もう仕事は終わったが、城内だからお前がいると思ってな。元気か?」
「ああ」
「そりゃよかった。お前、全然宿舎に戻ってきていないから、みんな心配していたんだがー-」
ユーリは少し間を置き、コルドの全身をくまなく見た。
「心配なさそうだな」
「……ああ、元気だ」
ユーリの含みのある言い方が気になった。
そういえば、ユーリとはコルドが王付き兵に呼ばれて深夜宿舎を離れて以来である。
同室のユーリはさぞかし心配だっただろう。コルドは心配をかけたユーリに謝罪をしようと口を開いた。
「ユーリ、その」
「その服、似合ってるな」
遮られて言われた言葉に思わず面食らう。
コルドが着ていたのは城内の人間の支給服だった。
コルドが塔で過ごすようにマラジュに命令されてから、コルドの元にも支給されるようになったのだ。
月に1枚支給される城外のものと違い、毎週支給される城内の服は上等で質がよく、着ると心地いいため最近のコルドの服はもっぱらそれだった。
「それ、城内の服だろう? 前々から思っていたんだ。お前は城外の服は似合ってないとな。お前は、やっぱり違うよ。俺らと」
「そう、だろうか?」
「ああ。お前は違う」
お前は違う。
それは、ユーリが以前酔いに回った口で言った言葉と同じだ。
あの言葉を覚えているのだろうか。酒が弱いユーリがそうだとは思えなかったが。
コルドはどう返せばよいのかわからずあいまいな笑みを浮かべる。
「……そうか」
「王付きの兵になったのか?」
「違う」
「そうか」
ユーリが深く詮索することはなかった。
たった1ヶ月しか会っていないはずのユーリとの間になにか分厚い壁が出来てしまったような気がした。
どこかよそよそしさを感じるユーリにコルドは焦りながら言う。
「ユーリ、その……」
「コルド、お前はこの城で暮らすのか?」
「……それは」
「すまねぇ、詮索しすぎた」
ユーリがコルドの返答を聞く前にユーリは会話を終わらせ、コルドの肩をたたく。
その様子が今生の別れのように感じ、コルドは再度ユーリの名を呼んだ。
「ユーリ」
「コルド、俺からのアドバイスだ。お前が決めたなら、後悔するなよ」
「……」
「じゃあな、コルド」
ユーリの言葉と同時に鳴ったのは夜を知らせる鐘の音だ。
あともう少しで城内と城外を隔てる門が閉じてしまう。
送れるわけにはいかないユーリはコルドの返答を待たず、背を向けた。
ユーリの遠くなる後姿を見ながら、コルドは鐘の音を聞いていた。
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