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計画中

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ナッシュが部屋に戻ってくるのにそう時間はかからなかった。
席を外してしまった謝罪をするナッシュにモニカは頷く。
「お待たせして、申し訳ありません」
「いいえ、レベッカ様の様子も見れたので御の字です」
「レベッカ様は、どうでしたか? 」
「そうですね、年相応の幼さはありますが、それでも自分の頭で考えることのできる頭のよさはあります。それに、人の意見を受け入れる柔軟さも」 
それに、レベッカはモニカを物珍しくは見ても決して嘲笑することは無かった。
正直、元公爵令嬢のモニカを嘲笑の目で見るのは市民階級より貴族のほうが圧倒的に多い。
中にはモニカを嘲笑するためにわざわざ依頼する者もいるほどだ。
だが、レベッカは少なくともそういった事をせず、モニカの言ったことを自分が納得した場合なら取り入れるぐらいの柔軟さは持っていることが伺えた。
ナッシュは頷き、モニカに問う。
「上手く、行きそうですか?」
「ええ。少なくとも、絶望的では無いと思います。ただ、問題はーー」
「グリー伯爵夫人、すなわち今のレベッカ様の周囲のことですよね」
「ええ」
モニカは顔を曇らせ頷いた。
グリー伯爵夫人といえば、貴族向けの雑誌では好意的な人物とされているが、市民向けの雑誌ではおかしな魔術に凝っているというという不穏な噂がある人物だ。
それに、王室主義者のかなり保守的な人物とされている。
まさに、男爵令嬢のレベッカと市民階級との結婚を反対しそうな人物である。
「グリー伯爵夫人、市民階級がよく読む雑誌では、真偽は定かでは無いですが魔術のために子供の血を飲むという噂がある、と載っておりました。その夫人がモニカ様になんの御用があるのでしょう?」
「細かい話は私も分かりかねますが、どうやら死後の世界の話をしているようです」
「死後の世界……」
宗教の力が弱まった後に現れたスピリチュアルは貴族の間でも根強い人気になっている。
中には率先して宗教を捨てろ、という考える過激な輩もいるくらいだ。
恐らく時代が変わる不安がそぅいった摩訶不思議な世界りに駆り立てられているのだろう。
「レベッカ様はまだ半信半疑、という感じでは見ておりますが、このままグリー伯爵夫人の言うことを信じてしまう可能性があります。ですので、一刻も早く手を打ちたいのが正直なところです」
ナッシュの言葉にモニカは同意するように頷く。
「その通りですわ、でしたら、早速計画を進めましょう」
そう言い、モニカは予め持っていた資料を広げた。
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