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第3章:南海の決闘
第141話:海賊退治
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轟音と共にドーキンの船から火煙が立ち上った。
衝撃で甲板にいた海賊たちがバラバラと海へ落ちていくのが見える。
「え……?ええ……っ!?」
何が起きたか理解できないのか、キールは燃え盛るドーキンの船に唖然とするばかりだ。
「あ……不味い……体調が悪くて加減が……ウプッ」
一方魔法を放ったルークの方はというと、再び甲板に顔を出して盛大にへどついている。
「今のって……ルークが……??」
キールは目を丸くしてルークを見ていた。
今やドーキンの船は真っ二つに裂けながら海中に没しようとしていた。
甲板に残された海賊たちも沈没に巻き込まれまいと次々と海に飛び込んでいる。
「た、助けてくれえっ!」
ドーキンが波に揉まれながら必死に嘆願していた。
「俺が悪かった!頼む!助けてくれ!このとおりだ!」
「馬鹿野郎!自業自得だ!」
「てめえらリヴァスラのクソ共はそこで魚の餌にでもなりやがれ!」
船員たちは甲板から身を乗り出して海賊たちに罵声を浴びせている。
「……お前ら、救命ボートを下ろしてやんな」
命乞いをするドーキンをしばらく見下ろしていたキールはしばらくすると横にいた船員にそう命じた。
「いいのかよ、こいつらキールを狙っていたんだぜ」
「構わないよ。こいつらはどうしようもない悪党だけど同じ島の人間だ。情けくらいはかけてやるさ」
キールはそう言い放つと再びドーキンを見下ろした。
「ドーキン!今回は助けてやる!ただし今度あたしを狙ってきたらその時は容赦しないからね!」
「こいつは手漕ぎじゃねえか!俺たちに島まで漕いでいけってのかよ!せめて俺たちも船に乗せてくれよ」
船から降ろされたボートによじ登りながらドーキンが泣き言を漏らす。
「当たり前だ!誰があんたらなんかを同じ船に乗せるもんか。別にしばらくしたら潮も変わるから日没までには島に着けるでしょ。それまで自分たちのしてきたことを反省するんだね!」
キールの言葉に船員たちが喝采を上げる。
「ルーク、おかげで助かったよ。本当にありがとう」
相変わらず苦しそうに呻いているルークの前にキールがしゃがみ込んだ。
ルークが青い顔で微笑み返す。
「お……お安い御用だよ」
「でも驚いたよ、ルークが魔法を使えるなんて。ひょっとして魔法騎士かなんかなのかい?」
「残念ながら落第しちゃったけどね」
「ルークは魔法騎士じゃなくたって凄いんだよ!あんな海賊なんて何十人来たって相手にならないんだから!」
ルークに膝枕をしていたアルマが胸を張る。
そんな2人を見てキールが呆れたように息をついた。
「……どうやらあんたたちは普通の貴族のお坊ちゃまお嬢様とは違うみたいだね。アルマもやけに落ち着いていたし」
「まあ、いろんな経験をしてきたから。それよりもまだ着かないのかな……いい加減体力が限界にきそうで……」
息も絶え絶えのルークを見てキールが吹き出した。
「まったく、さっきドラゴンも吹き飛ばしそうな火炎弾を撃った人間とは思えないね!わかったよ、あんたらは命の恩人だ、全速力で島に向かうよ!」
キールはそう言うと勢いよく立ち上がった。
「帆を張りな!邪魔者はいなくなったしさっさと島に戻るよ!」
◆
「うう……まだ足がフワフワする……」
アルマに肩を貸してもらいながらルークはフラフラと島へ降り立った。
「結局最後まで治癒魔法を使わなかったんだから大したもんだね」
キールが面白そうに笑いながら2人の前に立って歩いている。
「さ、あたしたちの村に来ておくれよ。助けてもらったお礼をしたいからね」
「それにしても……近いとはいえイアムとは結構違うのね」
アルマが感心したように辺りを見渡した。
オステン島はまるで緑が爆発したかのように森に包まれている。
色鮮やかな花が木々を覆い、その間を極彩色の鳥が飛び交っていた。
「イアナットと比べたらまるで秘境だなと思ったでしょ」
「いや別にそんなことは」
「良いんだよ、別にその通りだからさ」
慌てるアルマにカラカラと笑いながらキールが答える。
「でもそれがいいのさ。確かに本土に比べたら不便だけど、島には島の良さってものがあるからね」
「僕は結構好きだよ、こういう場所は」
ルークが呟く。
「師匠の住む山を思い出す」
「流石ルーク!よくわかってるじゃん!」
キールがルークに笑いかける。
「それにこの島にだって自慢できるものはあるんだよ。前も言ったけどどオステン島の海産物はとびっきりだからね!」
岸から少し離れた高台にキールたちクランケン氏族の村はあった。
村人たちは皆キールと同じように褐色の肌で、やはり同じように頬や腕にタトゥーを入れている。
「キール!無事だったんだね!」
キールに気付いた村の女たちが三々五々と寄ってきた。
「大丈夫だったの?ドーキンが出ていったと聞いたから心配してたんだよ」
「ドーキンには襲われなかったのかい?あいつは島の人間にも容赦しない奴だから……」
「何はともあれ無事に戻ってきてくれて何よりだよ」
「みんな心配してくれてありがとう。あたしは大丈夫だよ」
キールは周りを囲む女たちを腕で制しながら話を続けた。
「確かにドーキンの奴はあたしたちを狙ってきた。あの野郎、魔導士まで船に乗り込ませていたんだ」
その言葉に周りの女たちが息を呑む。
キールはそんな空気を打ち破るように笑みを浮かべるとルークを手で示した。
「でも大丈夫、ここにいるルークがあたしたちを助けてくれたんだ!」
衝撃で甲板にいた海賊たちがバラバラと海へ落ちていくのが見える。
「え……?ええ……っ!?」
何が起きたか理解できないのか、キールは燃え盛るドーキンの船に唖然とするばかりだ。
「あ……不味い……体調が悪くて加減が……ウプッ」
一方魔法を放ったルークの方はというと、再び甲板に顔を出して盛大にへどついている。
「今のって……ルークが……??」
キールは目を丸くしてルークを見ていた。
今やドーキンの船は真っ二つに裂けながら海中に没しようとしていた。
甲板に残された海賊たちも沈没に巻き込まれまいと次々と海に飛び込んでいる。
「た、助けてくれえっ!」
ドーキンが波に揉まれながら必死に嘆願していた。
「俺が悪かった!頼む!助けてくれ!このとおりだ!」
「馬鹿野郎!自業自得だ!」
「てめえらリヴァスラのクソ共はそこで魚の餌にでもなりやがれ!」
船員たちは甲板から身を乗り出して海賊たちに罵声を浴びせている。
「……お前ら、救命ボートを下ろしてやんな」
命乞いをするドーキンをしばらく見下ろしていたキールはしばらくすると横にいた船員にそう命じた。
「いいのかよ、こいつらキールを狙っていたんだぜ」
「構わないよ。こいつらはどうしようもない悪党だけど同じ島の人間だ。情けくらいはかけてやるさ」
キールはそう言い放つと再びドーキンを見下ろした。
「ドーキン!今回は助けてやる!ただし今度あたしを狙ってきたらその時は容赦しないからね!」
「こいつは手漕ぎじゃねえか!俺たちに島まで漕いでいけってのかよ!せめて俺たちも船に乗せてくれよ」
船から降ろされたボートによじ登りながらドーキンが泣き言を漏らす。
「当たり前だ!誰があんたらなんかを同じ船に乗せるもんか。別にしばらくしたら潮も変わるから日没までには島に着けるでしょ。それまで自分たちのしてきたことを反省するんだね!」
キールの言葉に船員たちが喝采を上げる。
「ルーク、おかげで助かったよ。本当にありがとう」
相変わらず苦しそうに呻いているルークの前にキールがしゃがみ込んだ。
ルークが青い顔で微笑み返す。
「お……お安い御用だよ」
「でも驚いたよ、ルークが魔法を使えるなんて。ひょっとして魔法騎士かなんかなのかい?」
「残念ながら落第しちゃったけどね」
「ルークは魔法騎士じゃなくたって凄いんだよ!あんな海賊なんて何十人来たって相手にならないんだから!」
ルークに膝枕をしていたアルマが胸を張る。
そんな2人を見てキールが呆れたように息をついた。
「……どうやらあんたたちは普通の貴族のお坊ちゃまお嬢様とは違うみたいだね。アルマもやけに落ち着いていたし」
「まあ、いろんな経験をしてきたから。それよりもまだ着かないのかな……いい加減体力が限界にきそうで……」
息も絶え絶えのルークを見てキールが吹き出した。
「まったく、さっきドラゴンも吹き飛ばしそうな火炎弾を撃った人間とは思えないね!わかったよ、あんたらは命の恩人だ、全速力で島に向かうよ!」
キールはそう言うと勢いよく立ち上がった。
「帆を張りな!邪魔者はいなくなったしさっさと島に戻るよ!」
◆
「うう……まだ足がフワフワする……」
アルマに肩を貸してもらいながらルークはフラフラと島へ降り立った。
「結局最後まで治癒魔法を使わなかったんだから大したもんだね」
キールが面白そうに笑いながら2人の前に立って歩いている。
「さ、あたしたちの村に来ておくれよ。助けてもらったお礼をしたいからね」
「それにしても……近いとはいえイアムとは結構違うのね」
アルマが感心したように辺りを見渡した。
オステン島はまるで緑が爆発したかのように森に包まれている。
色鮮やかな花が木々を覆い、その間を極彩色の鳥が飛び交っていた。
「イアナットと比べたらまるで秘境だなと思ったでしょ」
「いや別にそんなことは」
「良いんだよ、別にその通りだからさ」
慌てるアルマにカラカラと笑いながらキールが答える。
「でもそれがいいのさ。確かに本土に比べたら不便だけど、島には島の良さってものがあるからね」
「僕は結構好きだよ、こういう場所は」
ルークが呟く。
「師匠の住む山を思い出す」
「流石ルーク!よくわかってるじゃん!」
キールがルークに笑いかける。
「それにこの島にだって自慢できるものはあるんだよ。前も言ったけどどオステン島の海産物はとびっきりだからね!」
岸から少し離れた高台にキールたちクランケン氏族の村はあった。
村人たちは皆キールと同じように褐色の肌で、やはり同じように頬や腕にタトゥーを入れている。
「キール!無事だったんだね!」
キールに気付いた村の女たちが三々五々と寄ってきた。
「大丈夫だったの?ドーキンが出ていったと聞いたから心配してたんだよ」
「ドーキンには襲われなかったのかい?あいつは島の人間にも容赦しない奴だから……」
「何はともあれ無事に戻ってきてくれて何よりだよ」
「みんな心配してくれてありがとう。あたしは大丈夫だよ」
キールは周りを囲む女たちを腕で制しながら話を続けた。
「確かにドーキンの奴はあたしたちを狙ってきた。あの野郎、魔導士まで船に乗り込ませていたんだ」
その言葉に周りの女たちが息を呑む。
キールはそんな空気を打ち破るように笑みを浮かべるとルークを手で示した。
「でも大丈夫、ここにいるルークがあたしたちを助けてくれたんだ!」
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