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父親の世界
しおりを挟む出国したバレは、最初に父親の世界に行く事が地図に記されていた。
地図には父親の世界への行き方、父親の名前と父親が住む地名が記されている。
「父親の世界の住人1億人、名前はギルバー・ルータ、ツキハ村に住む」
与えられた父親の情報はそれだけだ。
宙の国の金の門から出ると、あちらこちらにバレと同じ歳の子供達がいる。
罰を受けたくないため義務を果たすためみんな他の子供に興味すら抱かず先を急いでいた。
キョロキョロ見ながら歩いているのバレ1人くらいだ。
私、変なのかな?義務を果たすことも永遠に生きる罰を受けたくないことも知っているが、私はせっかく産まれて初めて見たどこまでも続く青い空をずっと見たい。
初めて見る空は太陽の光でキラキラと青く輝き美しかった。
バレの見える範囲だけでも百人近くの子供達がいた。
自分の家族に興味はあったが、世界にも興味があった。
父親の世界は宙の国から一番近く、金の門から歩いて10キロ先にある駅から歩いて10キロ先にある駅から列車で1時関の旅。
バレはとぼとぼ歩いていたが、他の子供は歳をとるのが怖いのか、罰を受けるのが怖いのか、早足や走って駅へ急いでいる。
子供の性格は、すでに10歳までは形成される。
産まれた時に、家族がいないだけで子供達は、それぞれの遺伝からもらっているため誰1人として同じ子供はいない。
宙の国の金の門を出てから、ずっと砂利道と青い空が続いて他には何も見あたらない。
ふと、バレはリュックをその場におろし、座りこみ荷物の中身を見た。
荷物の中身を確かめる悠長な子供なんて、バレ1人くらいだった。
水筒が1つ、乾いたパンが1つ、赤茶色のワンピースが1枚、毛布が1枚、小型のナイフが1つ、それが全てだった。
駅までは、3日も歩けばつく。駅から列車で父親の世界は1時間だ。
バレの父親の茶色の瞳は、うつろだった。
父親の世界の駅からバレの父親の家は、駅から徒歩5分の藁葺き屋根のボロ屋。
バレが父親の駅の世界につき、無表情な駅員に地図を見せると
「ああ、あの酒飲みギルバーか。家ならすぐそこだよ。この世界は駅から近い家ほど貧しいんだよ、覚えておくと良い」
子供達は、父親の世界の奥へと歩いていく。駅前の藁葺き屋根に行く子供はバレを含めて10人。
人目を気にしながらバレは、藁葺き屋根の家の中でも1番のボロ屋の父親の家に入った。
中は薄暗く、ひんやりとしていて小さな台所と1つテーブルが置かれた部屋が1つあるだけだった。
バレと同じで細身で茶色の瞳をした男がバレを見た。
「よく来たね。汚い家ですまない。お入り」
うつろな瞳をしたギルバー・ルータは弱々しく話した。
バレはおずおずとテーブルを間に、父親の前に座った。気がつくと自分の体が大きくなり、父親より身長が高くなり15歳になっていた。
「あの、次の母親の世界に行くための列車のパラのお金が必要だから、下さい・・・」
宙の国でバレが産まれた時、この世界ではパラと言うお金が必要で、父親からもらう事を知っている。
バレは居心地が悪く、早くこのギルバー・ルータと言う自分の父親のもとから去りたかった。
「悪いが、10パラも持ってないんだ。バレはお金を持っているならお父さんにくれないかな?」
バレは耳を疑った。
10パラあれば1週間生活出来る。自分の父親はそれすらない。むしろ、娘からお金をたかる父親だった。
「ありません。次の母親の世界に行きます」
バレは言葉少なく、父親の藁葺き屋根を出た。
父親が話すたびに、バラがまだ飲んだ事もない酒臭い匂いが部屋に溢れた。
父親の世界の駅に着くと、駅には藁葺き屋根から出てきた10人の子供しかいなかった。
他の子供達は、次に10年歳をとるまで、この世界に1ヶ月はいるつもりだろう。
さっきの無表情な駅員がバレを見て、無言で10パラの列車賃を渡してくれた。
「この世界では、藁葺き屋根に住む家の子供は義務で次の世界に行くためのお金が宙の国から給付されるんだよ」
バレは無言で受けとると、駅のホームで母親の世界行きの列車を待った。
バレの見上げた空は、どんよりと重く曇っていた。
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