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暗雲
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何でだ? 何でこんな事になってるんだ?
俺はアルバート・ロブゾだぞ!?
由緒あるロブゾ伯爵家の長男で優秀な男なんだ!
幸せになって当然だし、自分の願いを優先させて何が悪い! 誰しもやってる事だろう!?
俺はただ窮屈なしきたりや暮らしが嫌なんだ!
当主なんて苦労ばかりで全然楽しくないだろ!
何でそんな役目を俺に押し付けてくるんだ!
カナリアだって見た目が美しいだけで口煩い上、夫になる俺へ命令紛いの事をしてくるんだぞ!? あんな可愛げのない女と一生共にするだなんて地獄すぎるだろ。他の女と逃げて何が悪いんだ!
マリーだって最初は従順で可愛い女だったんだ。
二人で過ごした最初は本当に幸せだったんだ。
それなのに伯爵子息の俺が選んでやった恩も忘れ、あの女は口答えをするようになった。ギャーギャー泣き喚いて鬱陶しいガキを優先して家の事は疎かになっていくし、何よりもあの女は俺の所有物に手を出しやがった!
ああ、今思い出しても腹がたつ。
もっと痛めつけてやればよかった。
しかもあの女は俺という夫がいながら娼婦になんてなりやがって……正直あの時ほど憎たらしいと思った事はなかったな。一瞬にしてあの女への愛が冷めた。
借金がどうとか、息子の面倒がどうとか、少しは働けだとか、アイツは何様なんだ。
あの女が死んで本当に清々した。
あえて言いたい事があるとすればあの無表情で不気味なガキを連れて死んでいけっつーんだよ。
まぁ今はあのガキが金に代わりそうだから生かしてやってるが面倒くさい事には変わらないな。
折角駆け落ちやクズ共に騙された一件で名前が知られてしまったアルバート・ロブゾではなく、サイモンという架空人物で新しい女が出来たっていうのに何でこんなにも上手くいかないんだ!
シェイラは商会の末娘で世間知らずの箱入り娘。
金があるお嬢さんを騙すのなんて簡単だった。
俺が少し苦労話をして涙を見せれば、あっという間に金品を与えてくれたチョロい女だった。
大人の男に憧れがあるのか、ちょっと優しい言葉や甘い言葉をかけてやれば簡単には落ちて身体を許してきた。
中々大きな商会が実家だから結婚は厳しいかと思っていたら親父も甘くてチョロい男だった。娘が選んだ男なら結婚や仕事を紹介するもの構わないと言ってきた。
まぁ俺の目的は商会の金なだけで、仕事の紹介なんて別にいらないけどな。
シェイラの親父が要求してきたのは一つだけ。
ーー娘の為に金を稼いで持参金を支払えたら結婚を認める。
だけど俺は自分で働くのは嫌だ。
楽して金を稼ぎたい。
……だがこんなチョロいカモを逃がすのは勿体なさすぎる。
そんな時だった。
妹のジュリエッタの存在を思い出したのは。
俺がロブゾ家から逃げ出してからきっと苦労してきたはず。もしかしたら婚約相手も見つかっていないかもしれない。
邪魔なレオナルドをロブゾ家の後継者としてジュリエッタに売りつければ持参金も手に入るしロブゾ家へ恩も売れる。
レオナルドさえロブゾ家に入ってしまえば、今後金の融通もしてもらえるし、いざとなれば屋敷に転がり込む事も出来る。…………と思っていた。
兄である俺の事を慕っていたジュリエッタなら俺の頼みを絶対に聞いてくれると思っていた。
それなのにアイツは俺を知らない人間として扱いやがった。アルバート・ロブゾとしてではなくロブゾ家に纏わりつく不審人物として屋敷への出入りを禁じた。
ジュリエッタの奴、氷のような冷たい表情で俺を見下してきやがった。
何も出来ない甘ったれた妹の分際で優秀なお兄様に楯突くなんてふざけてやがる!
くそっ! くそっ! くそっ! くそっ! くそっ! くそっ! くそっ! くそっ! くそっ! くそっ! くそっ!
彼処にある物は元はといえば全て俺の物になる筈だったんだ。ジュリエッタがつけてた高い宝石やドレスだって俺の物なんだ! アイツは俺のおこぼれを貰ったに過ぎないくせに調子に乗りやがって……
面倒くさい当主になりたい訳じゃないが、あの暮らしには未練がある。贅沢がしたい。金が欲しい。大勢にかしずかれたい。平民の暮らしなんてもううんざりなんだ。
戻りたい……でも戻りたくない。
でもやっぱり平民は嫌だ。
矛盾してる。それは自分でもわかってる。
だからこそ俺は商家のお嬢さんに目をつけたんだ。
貴族の義務を果たさなくても金が手に入る特別な場所を。
シェイラが望む『理想の王子様像』を演じてやってきた。優しくて頼りになってシェイラを誰よりも愛する男。
ちょっと色気が足りなくて俺には物足りない女だったから適度に外で遊びはしたけど、馬鹿なシェイラには絶対にバレていないと確信していた。
それなのに何故だ!?
何故シェイラは俺に会いに来なくなった?
連絡しても返事すらない。
家に行っても理由をつけて門前払いされる。
一体どうなっているんだ?
何が起きてるっていうんだ……
俺は幸せにならなきゃいけない男なんだ。
誰も俺の幸せの邪魔なんてさせない。
俺はアルバート・ロブゾ。
俺のする事に間違いなんてないんだ。
俺はアルバート・ロブゾだぞ!?
由緒あるロブゾ伯爵家の長男で優秀な男なんだ!
幸せになって当然だし、自分の願いを優先させて何が悪い! 誰しもやってる事だろう!?
俺はただ窮屈なしきたりや暮らしが嫌なんだ!
当主なんて苦労ばかりで全然楽しくないだろ!
何でそんな役目を俺に押し付けてくるんだ!
カナリアだって見た目が美しいだけで口煩い上、夫になる俺へ命令紛いの事をしてくるんだぞ!? あんな可愛げのない女と一生共にするだなんて地獄すぎるだろ。他の女と逃げて何が悪いんだ!
マリーだって最初は従順で可愛い女だったんだ。
二人で過ごした最初は本当に幸せだったんだ。
それなのに伯爵子息の俺が選んでやった恩も忘れ、あの女は口答えをするようになった。ギャーギャー泣き喚いて鬱陶しいガキを優先して家の事は疎かになっていくし、何よりもあの女は俺の所有物に手を出しやがった!
ああ、今思い出しても腹がたつ。
もっと痛めつけてやればよかった。
しかもあの女は俺という夫がいながら娼婦になんてなりやがって……正直あの時ほど憎たらしいと思った事はなかったな。一瞬にしてあの女への愛が冷めた。
借金がどうとか、息子の面倒がどうとか、少しは働けだとか、アイツは何様なんだ。
あの女が死んで本当に清々した。
あえて言いたい事があるとすればあの無表情で不気味なガキを連れて死んでいけっつーんだよ。
まぁ今はあのガキが金に代わりそうだから生かしてやってるが面倒くさい事には変わらないな。
折角駆け落ちやクズ共に騙された一件で名前が知られてしまったアルバート・ロブゾではなく、サイモンという架空人物で新しい女が出来たっていうのに何でこんなにも上手くいかないんだ!
シェイラは商会の末娘で世間知らずの箱入り娘。
金があるお嬢さんを騙すのなんて簡単だった。
俺が少し苦労話をして涙を見せれば、あっという間に金品を与えてくれたチョロい女だった。
大人の男に憧れがあるのか、ちょっと優しい言葉や甘い言葉をかけてやれば簡単には落ちて身体を許してきた。
中々大きな商会が実家だから結婚は厳しいかと思っていたら親父も甘くてチョロい男だった。娘が選んだ男なら結婚や仕事を紹介するもの構わないと言ってきた。
まぁ俺の目的は商会の金なだけで、仕事の紹介なんて別にいらないけどな。
シェイラの親父が要求してきたのは一つだけ。
ーー娘の為に金を稼いで持参金を支払えたら結婚を認める。
だけど俺は自分で働くのは嫌だ。
楽して金を稼ぎたい。
……だがこんなチョロいカモを逃がすのは勿体なさすぎる。
そんな時だった。
妹のジュリエッタの存在を思い出したのは。
俺がロブゾ家から逃げ出してからきっと苦労してきたはず。もしかしたら婚約相手も見つかっていないかもしれない。
邪魔なレオナルドをロブゾ家の後継者としてジュリエッタに売りつければ持参金も手に入るしロブゾ家へ恩も売れる。
レオナルドさえロブゾ家に入ってしまえば、今後金の融通もしてもらえるし、いざとなれば屋敷に転がり込む事も出来る。…………と思っていた。
兄である俺の事を慕っていたジュリエッタなら俺の頼みを絶対に聞いてくれると思っていた。
それなのにアイツは俺を知らない人間として扱いやがった。アルバート・ロブゾとしてではなくロブゾ家に纏わりつく不審人物として屋敷への出入りを禁じた。
ジュリエッタの奴、氷のような冷たい表情で俺を見下してきやがった。
何も出来ない甘ったれた妹の分際で優秀なお兄様に楯突くなんてふざけてやがる!
くそっ! くそっ! くそっ! くそっ! くそっ! くそっ! くそっ! くそっ! くそっ! くそっ! くそっ!
彼処にある物は元はといえば全て俺の物になる筈だったんだ。ジュリエッタがつけてた高い宝石やドレスだって俺の物なんだ! アイツは俺のおこぼれを貰ったに過ぎないくせに調子に乗りやがって……
面倒くさい当主になりたい訳じゃないが、あの暮らしには未練がある。贅沢がしたい。金が欲しい。大勢にかしずかれたい。平民の暮らしなんてもううんざりなんだ。
戻りたい……でも戻りたくない。
でもやっぱり平民は嫌だ。
矛盾してる。それは自分でもわかってる。
だからこそ俺は商家のお嬢さんに目をつけたんだ。
貴族の義務を果たさなくても金が手に入る特別な場所を。
シェイラが望む『理想の王子様像』を演じてやってきた。優しくて頼りになってシェイラを誰よりも愛する男。
ちょっと色気が足りなくて俺には物足りない女だったから適度に外で遊びはしたけど、馬鹿なシェイラには絶対にバレていないと確信していた。
それなのに何故だ!?
何故シェイラは俺に会いに来なくなった?
連絡しても返事すらない。
家に行っても理由をつけて門前払いされる。
一体どうなっているんだ?
何が起きてるっていうんだ……
俺は幸せにならなきゃいけない男なんだ。
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俺のする事に間違いなんてないんだ。
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