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ラルフと散歩(買い物デート?)

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ラルフの機嫌が治り外へ買い出しを行く事にした。ラルフは私の手を握り締めながら楽しそうに鼻歌を歌い町中を歩いていた。

フードを被った不審者と男が手を繋いでるなんて奇妙に見えるんだろうな・・・。

キョロキョロと周囲を見渡しながら声を弾ませて話しかけてくるラルフ

「リヴィ・・・あれ良い匂いだよ!」

目線の先にはクレープのような生地に具材をくるんだ食べ物が屋台で売られていた。

スパイスの匂いかな・・・
何か食欲をそそる匂いだなぁ~

「昼食に食べてみましょうか・・・」

私がそう提案してみるとラルフは予想外だったのか「え゛・・・屋台の物を食べるの?」と顔を引きつらせて聞いてきた。

「フフフ・・・とっても良い匂いがして美味しそうですよ?」

「えー。食べさせても良いのかなぁ~。食べ歩くんだよ。これ・・・わかってる?」

ラルフは私が元王子だから屋台の食べ物を食べさせてもいいのか、食べ歩きなんて真似をさせていいのか不安なのだろうが、元女子大生としては屋台の物を食べ歩くなんてお手の物だ。むしろ懐かしくて屋台に興味深々なのだ。

「兄ちゃん達、気になってるなら食ってみな!うちのサラペは町の一番だぞ!」

私達が屋台の前で言い合いをしていると、しびれを切らしたのか屋台の店主が私達へと話しかけてきた。私は買う気満々だったので店主に何がオススメなのか聞いてみた。

「え、買うのッ?!リヴィ!」

「お!オススメか?まあ、どれも旨いけど勧めるならこの香草包みか、スパイシー包みだな!肉も好きな物を選べるぞ!」

「良い匂いですね・・・。では私はこの香草包みのチキンでお願いします。ラルフはどうしますか?」

横で慌てふためいてるラルフに私は笑いながら尋ねた。すると何故か緊張しながらラルフは注文をしていた。

「あ、え、お、俺は・・・す、スパイシー包みのビーフにす、する。」

ラルフの様子が挙動不審っていうか動きが固いっていうか・・・何か変ッ!

私が様子のおかしいラルフを見つめていると、サラペが出来上がった。

「ほら!出来上がったぞ!温かい内に食ってくれ・・・2つで銅貨5枚だ。」

手渡されたサラペを受け取ってお金を支払おうとすると横からスッと手が伸びて来て止める間もなくラルフが全てやってくれて、私のサラペを渡してきた。

「はい。これが香草包みだって!」

「え、ありがとうございます。・・・あ、お金・・・」

「ん?・・・いいよ、これくらい・・・ほら冷めちゃう。食べよ?」
 
あっという間の出来事にあたふたしてしまった私はラルフに勧められるままサラペを口にした。

「んーーー。」

色んな香草の味がして香ばしくて美味しい~

私は頬を手で押さえながら美味しさを伝えようとラルフを見つめた。だがそんな私の様子にラルフは「え、何?!口に合わなかった?・・・無理だったら俺が食べるよ!」と慌てていた。
私は目を輝かせながら首を左右に降って美味しさを伝えた。

「凄く美味しいんです!ラルフも食べてみて下さい!」

そんな私を見て恐る恐る一口食べたラルフは「うまッ・・・」と言いパクパクと食べ進めていた。

「ラルフ!一口交換しませんか?」

美味しそうに食べ進めているラルフの姿を見て私はどうしてもスパイシービーフを食べてみたくなって声をかけてしまった。

「え・・・交換?」

ラルフは食べていた手を止めて私を不思議そうに見てきた。

「はい!私のを一口食べていいので、ラルフのを一口下さい!・・・・・・ダメですか?」

「だ、ダメじゃない!」

交換が嫌なのかもと思い不安そうに聞く私にラルフは慌てて自分のスパイシービーフを差し出してくれて私の香草チキンと交換をした。

「んーーー。こっちもスパイスが効いてて美味しいですね!」

「う、うん。リヴィのも美味しいよ」

食べながら歩いていると、ラルフが嬉しそうに「俺こんなだから外で食べ歩くのも、誰かと食べ物を分け合うのも初めてなんだ。いいね。分け合うって・・・」と言ってクシャっと笑いかけてきた。

そっか・・・屋台で緊張してたのもそのせいだったんだね。

「フフフ・・・私も楽しいです。」

笑い合う私達の間には和やかな雰囲気が漂っていた。だが・・・やっぱりラルフ駄犬は最後の最後で「でも分け合うの俺以外とはやらないでね。」と笑えてない瞳で見つめてきて、私の背筋を軽く凍らせた。


その後も目につく食べ物を食べ歩きして楽しんだ。そしてこの町の屋台を見終わって町の広場で休憩していると、先程甘いドリンクを買った店のおばちゃんが話しかけてきた。

「あんた達まだ居たのかい?よく食べるね~」

「どれも美味しくて食べ過ぎちゃいました。」

私が何かこの町で見ておくべき所やオススメの物があるか聞くとおばちゃんは「んー。この町の見所は葡萄畑だからね・・・今はまだ旬じゃないんだよ。あとオススメっていったらワインとか葡萄で染めた服や雑貨とかだね。」とこの町の見所を教えてくれた。

この国では15歳になるとお酒を飲む事が出来る。普段はあまり飲酒をしない私達だったが、せっかくだからとワインの買いに行く事にした。

「ラルフは食事の時にお酒は飲まないんですか?」

私のそんな質問にラルフはヘラヘラと笑いながら何て事ないように、厳しい昔話をしてきた。

「夜は基本任務ばっかりだったし、食事は1日1食食べれれば良い方だからお酒なんて試す暇もなかったなぁ~」

何それ・・・かなりのブラック企業じゃん。

ラルフを酷使した奴等の大元が自分の父親だと思うと何だかやるせない気持ちになった。そしてこれからはそんな生活は決してさせないと自分に誓い、「これからは必ず1日3食食べれますからね。それにお酒も落ち着いたら試してみましょう!」とラルフに言った。

店に着くとそこは樽が山のように積まれた倉庫のような所だった。ここで試飲をして気に入ったワインを隣の店で買うのがこの店でのシステムらしい。だが逃亡中の身で外での飲酒は私もどうかと思ったし、ラルフも「それはダメ。」と私を止めて来たので、申し訳なかったが初心者にも飲みやすいオススメのワインを赤と白、数種類を選んでもらって合計20本買う事にした。

明らかに軽装備の私の姿でその量を買う事にラルフも店主も驚いていたが、「後で知り合いが合流するので大丈夫です。」と言って代金を支払い店主からワインを受け取った。

だが後から合流する知り合いなどいないと知っているラルフは困惑していたが、店主が側にいる間は口を開くのを耐えてくれた。

「・・・そんなに買ってどうするの?持てないし、飲めないよ?」

私はこの数日でラルフの事を信頼しても良いのではと考えるようになっていた。だからラルフに魔道具の事を話す事に決めた。

「今私が使っているこの鞄、これ最高ランクの魔道具で無限収納の上時間停止まで備えてあるんです。」

私は解りやすいように、ワイン20本を鞄の中へ入れてみせた。そんな私の様子を驚いた表情でラルフは「うわッ最高ランクの魔道具なんて初めてみたよ。流石だね・・・」と言ってきた。

「出所なんですけど・・・こ、これは・・・」

私が母上の名前を出したくなくて口ごもっていると、「言わなくていいよ。これだけの品を用意出来る人なんて、大体想像はつくから・・」と言ってくれた。






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