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叔父上の決意

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「何の事ですか・・・一体・・・」

「ふむ・・・セドリック様はお前さんには極力話さぬつもりらしいな。だがな・・・お前さんがこの計画の鍵なのだから知っておくべきだ。」

「え?・・・私が計画の鍵?・・・」

師匠のそんな怖い顔、初めて見た・・・
何・・・私が知っておくべき事って・・・

「それはじゃな・・・セドリック様はこの機会に陛下を退けてこの国の王位に就こうとしておるのだ。」

「な、何をッッッ!!!・・・・・・
一体何を言ってるかわかっているのですか!」

父を王座から退けて王位に就く?
どういう事?・・・暗殺でもするの?・・・それとも叛逆でも起こすの?・・・

私には何が起きてるのかわからず、これから起きるかもしれない事に恐怖した。

「・・・落ち着くんじゃ。全く・・・セドリック様が主導なされるのじゃ。過激な作戦や人の血が流れる方法を取るわけがなかろう・・・」

え・・・違うの・・・
そっか・・・そうだよね。優しい叔父上が国が荒れる方法は取らないよね・・・

はあ・・・
ビビり過ぎて意識飛ぶかと思ったぁ~。

「なら一体、どうするんですか!」

「うむ。・・・陛下には孤立してもらおうか考えておる。」

「え・・・」

「国を治めるとはどんなに賢く優秀な王がいても1人では物理的に無理じゃ。だからセドリック様は人柄を武器にこれから自分の味方を増やしていくつもりなのだ。まあ、それだけでは、人はついてこないじゃろう・・・だが15年間必死に努力していた第1王子が本当はこの国の王女で、それを無理矢理国王が男としても育てていたと知ったらどうじゃ?そしてあの一件が全て陛下の企てた冤罪だとバレたら?・・・」

「言ったじゃろう?・・・お前が思っているよりお前の味方は多いと・・・・。」

「私に味方なんてありえませんよ・・・」

わかんない・・・全然わかんないよ・・・
だって皆私が断罪されるの黙って見てたじゃん

私が幽閉されても助けなんて来なかったよ。
誰1人・・・会いにも来てくれなかった・・・

私は寒くて孤独だったあの塔を思い出した・・

「あんな目にあった後ならそう思うのも当然じゃ。でもそれも計画の内だと言ったら怒るかの?・・・」

「は?・・・」

もう本当に意味がわからず、困惑する私に師匠はセドリック様が王座に座る決意をした理由を説明してくれた。

「あれはお前さんの弟が生まれた頃じゃった。王妃様が何通もセドリック様へ手紙を送るようになっていての・・・わしもどうしたものかと心配しておったのだ。それがまさかあんな内容じゃったとはな・・・」

母上が書いた手紙・・・それは王妃では絶対に許されない物であった。

まず私の弟が生まれ事で母上は恐れていた事が起こるのではと恐怖を覚えていたらしい。国王陛下が実の娘を排除するのではと・・・

それだけなら準備はして来たのだから逃がせば済んだ。だが父は何故か私を排除する為に私の婚約者であるアリスティーナ公爵令嬢を巻き込んで冤罪をかけた上で幽閉するという計画を企てた・・・

娘の人生を・・・女としての人生を奪っただけでなく・・・娘が信頼する婚約者を取り込んで裏切らせるなんて・・・そしてあの子が15年間必死に作り上げた王子としての名誉まで傷つけるなんて・・・・・・絶対に許さない。

色んな事が積み重なっていたのだろう・・・
だがこの計画が母上の逆鱗の引き金を引いてしまった。

叔父上も母上の手紙で、この計画を知り兄の暴走が擁護出来ない所まで来ている事を知った。

そして2人は決めた・・・。
父から王座を取り上げようと・・・

どんなに優れた男であっても、個人の感情で王家に暗雲をもたらすなど許される事ではない。そんな者に国は任せてはいけない。
そしてやはり王女を王子として偽らせた責任は王にある。罪を償ってもらおう・・・

こうして2人は密やかに決意を固め、更に師匠や味方になってくれそうな古参の臣下達へ声をかけ陛下が企てている計画を話し、自分達の計画も告げた。

「・・・我等も陛下から聞きました。」
「だが、そんな真似許される訳がない。・・・オーウェン様が今までどれ程辛い立場にあったと思っているのだ。それを・・・」
「陛下は我等の言葉など聞きはしない・・・」
「真の王子様が生まれた今・・・陛下の中でオーウェン様はもう使えなくなった駒なのだ。」
「あんな無体を強いておいて・・・今更・・」
「女狂いなどという不名誉を・・・」
「もっと穏便な方法で第1王子の座から下ろすべきなのだ・・・」

古参の臣下達は思っていた以上に鬱憤が溜まっていたらしい・・・

私の件だけでなく普段から臣下の意見を取り入れなかったり、話すらまともに聞かない態度 。王として非情にならねばならない時はある。
だが陛下の場合はそれが過ぎる・・・止める者がいるのなら話は別だが陛下の場合、臣下はともかく、宰相や王妃の意見すら聞けない。

これはもう暴君の域に達している・・・

もう陛下にこの国を、王座を、任す訳にはいかない。・・そう古参の臣下達も決意を固めた。

「じゃからあの日、謁見の間でお前さんの断罪を止める者が1人も居らんかったのじゃ・・」

師匠は私の不安や悲しみを取り除くようにあの日の出来事を語った。

「わしらが陛下の計画を知ってからあの日まで時間が足りなすぎた。穏便な方法をとろうとしているわしらにとって必要なのは時間じゃ。
ゆっくり陛下にバレぬように味方を増やさねばならん。だからあの日はお前さんを助ける事が出来ず、わしらはお前さんが自力で生き延びる事を信じるしか出来なかったのじゃ・・・
しかもあの頃はお前さんに近づく者には皆監視がつけられており、助言すら出来なかった。本当にすまんかったの・・・」

そうだったんだ・・・
私、裏切られた訳じゃなかったのか・・・

皆私を信じてくれてたのね・・・








って違ッーーーーーーう!!!
いやいやいや!魔力封じられて武器も持っていない人間が幽閉されて、自力の脱出?・・・無理だからどんだけ私の能力を過信してるの?

私、只の女の子だから・・・
前世の記憶で『嘆きの塔』について知ってたから脱出出来たけど、本来なら彼処で凍死か衰弱死してたよ!!!

「そなたは昔から脱出得意だったからな・・」

し、師匠ぉぉぉぉぉ!!!
私が命懸けでしてた王族の通過儀礼をそんな風に見てたのッ?!

「臣下や騎士達の間では第1王子は誘拐や監禁をされても自力で何とかしてしまうのではと噂になってたぞ・・・。だからお前さんが『嘆きの塔』から逃げ出してきたと聞いた時は驚いたぞ。彼処は通路を知らぬ者には決して逃げ出せない完璧な監禁場所なのだ・・・それを軽々と抜け出すなんてな・・・ファ!ファッ!ファッ!」

全くどんな奇跡を起こしたのか聞きたいわ。と師匠は楽し気に私を見てくる・・・

言えるかーーーーーーー!!!
前世の乙女ゲームで知識を元に脱出したなんて誰が信じるのよッッッ!

そもそも軽々なんかじゃないし・・・

そ、そんな期待した目線を向けられても無理だから!何も言う事なんてないからね!!!




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