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番外編
甘い日?
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これは私がまだ騎士団へ来て3日目の出来事。
外の雲行きが怪しくなってきた為洗濯物を取り込もうとキッチンから離れた・・・。
コンロに火をかけたままだったが煮込み料理だし、すぐ戻るつもりだったから大丈夫かと思った。だけど予想外に時間をとられてしまい、急いで戻ろうと廊下を走ってしまった。
それが今日の敗因だった・・・
「貴女は何故廊下で走っているのですか!」
ヒッ!見つかってしまった・・・こ、小姑に。顔が般若みたいだよ・・・。
「あの、ごめんなさい。少し急いでまして、失礼致します!!!」
そう言って走り去ってしまった。
私はとっさに、小姑よりコンロの火を選んでしまったのだ。知っていた筈なのに・・・怒っている時の小姑には逆らってはいけないと・・・
・・・・・・。
「ふ~。セーフ!吹き零れていない!!」
コンロの前へ、スライディングして火を消した私は先程の事はもう頭からすっかり消えていた
夕飯の仕込みも終わったし・・・今日のサプライズも大丈夫そうだな!
あれもOK、これもOK!問題は・・・無し!!
よし、あとは・・・
「ルクティアナ嬢お話があります・・・。」
・・・ギ・ギ・ギ・ギ・・・。
何やら聞き覚えのある冷たい声が響いた・・・
振り返るのが怖いが・・・勇気を振り絞って見てみるとそこには、やっぱり真顔の小姑がいた
真顔って所がまた怖いッ!!!
「ルクティアナ嬢、こちらへ来なさい・・・貴方という人には走ってはいけないという言葉の意味から教えなくてはいけないようですね。
・・・いいですか・・・」
怒鳴るではなく、冷静に淡々とお説教は始まった・・・
・・・・・・
「騎士団とは、民の味方であり、見本でもある所です。そんな場所に滞在しているというのに貴方はどうして・・・・・・」
な、長い、いつにもまして長いッ!!!!!
「・・・聞いていますか!ルクティアナ嬢!」
・・・・・・
よくそんな叱る事があるな~。廊下を走った話から大声を出すな、きちんと服を着ろ(裾が汚れていたみたい)、騎士達を甘やかすな(献立内容の要望を勝手に聞いちゃう事かな?)等々。
「ルクティアナ嬢・・・貴女は仮にもロブロ伯爵家の御令嬢なのですよ。それを・・・・・」
ま、まずいここら辺で話を切らなきゃ今度は淑女としての話に移っちゃうよ・・・
「あ、あのお話はわかりました。
騎士団で身を置かせて頂いている者として、自覚がたりませんでした。申し訳ございません。ミュゼル様も喉が渇かれたと思うので、お茶でも入れますね・・・」
私は、強引に話を別の方向へ持っていこうとした・・・
「まだ話の途中ですよ・・・」
小姑はまだまだ言いたりないようだ・・・ならこれでどうだ!!!私の今日のサプライズ!!
「ですが、丁度お茶の時間にもなりましたので、本日は昨日お約束致しました茶菓子のご用意もございます・・・いかがでしょうか?」
昨日は紅茶のお陰か、小姑は機嫌良く微笑んだのよ・・・茶菓子も期待している様子だったから!夜から仕込んでおいたのよ!!!
今回は好みがわからなかったから種類豊富に用意したのよ!!絶対に小姑を満足させてやる!
「・・・・・・ま、いいでしょう。
ちょうど、休憩の時間になりますからね・・では、執務室まで、頼みます・・・」
「かしこまりました・・・」
小姑は、そう言うと執務室へ戻って行かれた。
・・・・・・さあ!準備を始めよう。
とりあえず用意したのは・・・
・クッキーを三種類(バタークッキー、チョコチップクッキー、紅茶クッキー)
・ショートケーキ
・プリン(夕飯のデザート用に大量生産済み)
後は、私の小姑の勝手なイメージで作った秘策!
ふ・ふ・ふ・・・。私が弟妹達にどれだけお菓子を作ってあげた事か!
誕生日ケーキも私が作ってたんだからね!!!
私の家事はお母さんとお祖母ちゃん仕込みなんだから!出来ない事なんてないはずッ!!!
*****
ふぅ~。よし!行くぞ!
コンコン・・・
「ルクティアナです。
お茶菓子をお持ち致しました。」
「・・・入れ。」
「失礼致します・・・」
カートを押しながら室内へ入っていく・・・
「わぁ~凄いね・・・これ全部ティアナちゃんが作ったの?!」
「はい。私がご用意させて頂きました・・。」
「凄い技術だな・・・」
「・・・問題は味ですよ。」
ヴッ・・・小姑ってば、まだ少し怒ってる?!
私はテーブルにお菓子を並べていき、お茶を一人ずつ注いでいった・・・。
始めはダージリン。
「本日は、お茶菓子をご用意するのが初めてなので、種類豊富に準備させて頂きました。
お好みの物があれば仰って下さい。」
「じゃあ、食べてみるね~♪」
とラインハルト様が一番に手を伸ばした・・・
・・・ガシッ・・・・・・え?!・・・
ディー様がラインハルト様の手を掴んでいる
え?何事?!
「先に食べるな・・・」
「・・・プッ・・クククッ。
わ、わかったよ。ロイが先に食べて良いよ。」
何がわかったの?ラインハルト様どうして、そんなに肩を震わせながら笑ってるの・・・?
ディー様は満足気な表情でバタークッキーに手を伸ばした・・・・・・サクッ!
「・・・旨い・・・これは甘くないクッキーなのか?それに少し塩か?これは・・・」
「はい。本日は茶菓子の種類も多いので、クッキーは甘すぎない物をご用意致しました。
こちらがバタークッキーで隠し味に塩を少々入れております。他の二種類はチョコが入っているクッキーと紅茶の茶葉を練り込んだクッキーです。」
「・・・紅茶のクッキーですか?」
「はい、そちらはアールグレイを使用しています。」
ミュゼル様はゆっくりと手にとり口の中に入れていった・・・・・・サクッ!
「・・・美味しい・・・
口に入れた瞬間に紅茶の香りがしますね・・」
口の中の味を楽しむように瞳を閉じた・・・
「じゃあ、俺はケーキ食べよう・・・・・・
旨ッ!!!ふわふわだよ、スポンジ!それにクリームもくどくないし・・・」
ラインハルト様はショートケーキを気に入ってくれたようだ・・・
よし、まずは掴みはいい感じだ・・・
ここからだな!私の秘策!!!
他のお菓子に手を伸ばしているミュゼル様に声をかけた・・・
「ミュゼル様、本日は私のおすすめをご用意しております。・・・ですがこちらは、ミュゼル様達には馴染みのない味かと思うのですが、いかがいたしましょう?」
「馴染みのない味とは一体・・・?」
ミュゼル様は困惑しながらも、興味はあるみたいだ・・・
「遠い異国の国で食されている方法になります
まずは米を炊き、潰します。その後に豆を甘く煮て、こした物で潰した米を包みます。それが・・・おはぎと呼ばれる食べ物になります
飲み物は玉露をご用意致しました。合わせて御賞味下さい・・・」
私はおはぎと玉露をミュゼル様の前に用意して、様子を伺った・・・
どうだろう・・・。
私の勝手なイメージでアンコいけるだろうと思ったのだけど・・・日本人なら大丈夫だけど、この国の人ってこの味は有りなのかな?
ちょ、ちょっと勢いだけで作り過ぎたかな?
「・・・どうやって食べるのですか?」
ミュゼル様は少し頬を染めながら、不満げに聞いてきた。
あ!説明忘れてた!!!
「説明不足でした、申しましたありません。
そちらは異国の国では手で食べられる様です。
ですので、下に敷いている紙を持ちながら食べられても大丈夫です。
一応フォークもご用意しておりますので、お好きな方法でお願い致します。」
少し悩みながらも、おはぎの紙に手を伸ばし口に入れていった・・・
え?!手で食べるの?
一応説明はしたけど、ミュゼル様は絶対にフォーク派だと思ってたよ。
おはぎを口に入れて少し固まったかと思ったら無言で食べ進め、最後に玉露に手を伸ばした。
「・・・ふぅ。・・・これは不思議な甘さですね・・・食感も面白い・・・このお茶もよく合う。苦味で口の中がさっぱりとします・・・
・・・この菓子は、また作って頂けますか?」
「はい!!!ぜひ、作らせて頂きます。
異国のレシピはまだありますので、他の物もご用意致しますね。楽しみにしていて下さい」
ミュゼル様は納得したように頷き、他の茶菓子に手を伸ばしていった・・・
やったー!!!!小姑の胃袋を掴んだぞー!
やっぱり和菓子か!うちの頑固な爺ちゃんも和菓子一択だったから・・・もしかしてって思ったんだよね~♪ふふふ~
他の人達の様子を見てみると・・・
ラインハルト様はプリンを食べられている・・・カラメルソースが気に入ったようだ。
ラインハルト様の好みは洋菓子っぽいなー。
ディー様は・・・私を見てる・・・
え?!わ、わたし???
ディー様は、何やら少し険しい顔をして私を見ている・・・
「・・・どうされましたか?」
ディー様は自分が座っているソファーの左部分を叩いた・・・
え?!どういう意味?
「・・・座れ・・・。」
・・・ボン!ボン!
隣に???
ヴゥ・・・何!その目、怖いよ・・・何で睨んで来るの?
座るの?!・・・でも・・・
私はミュゼル様達が止めてくれるかな?と思い横を見てみると・・・二人とも茶菓子に夢中になっていた。
何で今なのよーー。タイミングーーー!!!
私は逃げ場が無いのを感じ、渋々隣に腰を下ろした。すると・・・
「どうして、ジュリアスには別の菓子を作った?俺には無いのに・・・」
「・・・え?別の菓子?!・・・・あの、」
「茶も、一種類あいつの方が多い・・・」
ディー様は怒っている!・・・筈なのに何か悲しそう?というより泣きそう?なのかな?!
は?!お菓子にお茶?・・・え?!
えーーーー!それでこんな顔をしてるの?
でも、違うんだよ!ちゃんと考えて来たから!
「あ、あのディー様、本日はお試しで色々とご用意致しました。
ミュゼル様には、先程の異国の菓子を。ラインハルト様にはショートケーキです。
そしてディー様には、クッキーをご用意させて頂きました。ディー様はもしかしたら、甘い物はお好きではないのではと思いましたので、甘く無いものをご用意致しました。
・・・いかがでしたか?」
「・・・俺の為のクッキー・・・旨かった。甘過ぎなくて、食べやすかった。
・・・・・・塩のやつが一番好きだ。」
顔が少しほころんだみたい・・・温かい雰囲気がディー様から出てる。
「かしこまりました。またご用意致します。」
ふぅー。一件落着だね~♪
「・・・ん。分けてやる・・・」
クッキーを私の口に押し当ててくる・・・
食べるの?!私が・・・?
口に押し付けてくるから反論もできないよ!
仕方なく私が口を開くと・・・
「・・・ウグッ・・・ンッ・・・」
ゆ、指まで、突っ込んで来やがったー!!!
苦しい・・・ちょっとやめてよ!本当に!
私が少し涙目になりながら、指を出そうと押し返してるのに・・・ディー様は満面の笑みで私を見つめている。その瞳の奥には、わずかに熱が浮かびあがってきている・・・
「・・・ンッ・・・フ・・・ッ・・・」
手で押しかえそうとしているのに、力が強すぎてビクともしない・・・口の中は唾液が凄い事になっており、私は恥ずかしさで気を失いそうだった・・・
「何をやっているのですか!馬鹿者が!!!」
ミュゼル様が大声をあげた・・・
「あちゃー。やっちゃったね・・・。
ロイってば瞳孔開いてるよ?これは、猫化一歩手前って感じかな?」
目の前のディー様は大声に驚いたみたいで、目を見開き、指を引っ込めた・・・。
「あ・・・えっ?!・・・あ!!!悪い!」
涙目の私を見て、状況がようやく読めたようだ
近くに私が座った事により、軽く匂いにやられたようだ・・・
そして、ディー様にはミュゼル様から特大の説教が始まり・・・
私はラインハルト様から慰めの言葉を頂いた。最後は聞こえなかったけど・・・。
「・・・大丈夫だよ!俺らお菓子に夢中であんまり見てなかったから~!
まあ、ちょっとエロかったな・・・とは思ったけど・・・。」
・・・・・・
今日は散々な1日だったな・・・。
ミュゼル様には怒られて、茶菓子で挽回しようと思ったらこんな事になって。
はあ・・・ディー様まだ怒られてるな~
でも!今回はしっかりと反省してもらおう!結構恥ずかしかったし・・・
二人のお説教姿を眺めていたら・・・ディー様と目が合った。
ヤバい!!!・・・と思った時には遅かった。
「話をちゃんと聞いているのですか!
・・・・?・・・・・?・・・・・?・・・・
何を見ているのですか?・・・・・・ッ!!!ルクティアナ様ちょっとこちらへ・・・・早くしなさいッ!」
え?私もなの?でも、目があっただけで・・・
そこから、私の危機管理能力の無さの話が長い事続き、お説教の仲間入りを果たした・・・
でも今回はあきらかにディー様が悪いでしょ!
私はちゃんと抵抗したよ!
・・・もう!結局こうなるんだから!!!
私はミュゼル様にしっかりとお説教された。
家族以外の男性の隣に座ってはいけない!男から食べ物を食べさせて貰うなど言語道断!!!と私は夕飯の準備をする時まで小姑から逃げられなかった・・・
何でこうなるのよーーーーー!!!
お説教から逃げようと思って、この作戦を決行したのに!ディー様のせいだからね!
反省してくださいッ!!!!!!
外の雲行きが怪しくなってきた為洗濯物を取り込もうとキッチンから離れた・・・。
コンロに火をかけたままだったが煮込み料理だし、すぐ戻るつもりだったから大丈夫かと思った。だけど予想外に時間をとられてしまい、急いで戻ろうと廊下を走ってしまった。
それが今日の敗因だった・・・
「貴女は何故廊下で走っているのですか!」
ヒッ!見つかってしまった・・・こ、小姑に。顔が般若みたいだよ・・・。
「あの、ごめんなさい。少し急いでまして、失礼致します!!!」
そう言って走り去ってしまった。
私はとっさに、小姑よりコンロの火を選んでしまったのだ。知っていた筈なのに・・・怒っている時の小姑には逆らってはいけないと・・・
・・・・・・。
「ふ~。セーフ!吹き零れていない!!」
コンロの前へ、スライディングして火を消した私は先程の事はもう頭からすっかり消えていた
夕飯の仕込みも終わったし・・・今日のサプライズも大丈夫そうだな!
あれもOK、これもOK!問題は・・・無し!!
よし、あとは・・・
「ルクティアナ嬢お話があります・・・。」
・・・ギ・ギ・ギ・ギ・・・。
何やら聞き覚えのある冷たい声が響いた・・・
振り返るのが怖いが・・・勇気を振り絞って見てみるとそこには、やっぱり真顔の小姑がいた
真顔って所がまた怖いッ!!!
「ルクティアナ嬢、こちらへ来なさい・・・貴方という人には走ってはいけないという言葉の意味から教えなくてはいけないようですね。
・・・いいですか・・・」
怒鳴るではなく、冷静に淡々とお説教は始まった・・・
・・・・・・
「騎士団とは、民の味方であり、見本でもある所です。そんな場所に滞在しているというのに貴方はどうして・・・・・・」
な、長い、いつにもまして長いッ!!!!!
「・・・聞いていますか!ルクティアナ嬢!」
・・・・・・
よくそんな叱る事があるな~。廊下を走った話から大声を出すな、きちんと服を着ろ(裾が汚れていたみたい)、騎士達を甘やかすな(献立内容の要望を勝手に聞いちゃう事かな?)等々。
「ルクティアナ嬢・・・貴女は仮にもロブロ伯爵家の御令嬢なのですよ。それを・・・・・」
ま、まずいここら辺で話を切らなきゃ今度は淑女としての話に移っちゃうよ・・・
「あ、あのお話はわかりました。
騎士団で身を置かせて頂いている者として、自覚がたりませんでした。申し訳ございません。ミュゼル様も喉が渇かれたと思うので、お茶でも入れますね・・・」
私は、強引に話を別の方向へ持っていこうとした・・・
「まだ話の途中ですよ・・・」
小姑はまだまだ言いたりないようだ・・・ならこれでどうだ!!!私の今日のサプライズ!!
「ですが、丁度お茶の時間にもなりましたので、本日は昨日お約束致しました茶菓子のご用意もございます・・・いかがでしょうか?」
昨日は紅茶のお陰か、小姑は機嫌良く微笑んだのよ・・・茶菓子も期待している様子だったから!夜から仕込んでおいたのよ!!!
今回は好みがわからなかったから種類豊富に用意したのよ!!絶対に小姑を満足させてやる!
「・・・・・・ま、いいでしょう。
ちょうど、休憩の時間になりますからね・・では、執務室まで、頼みます・・・」
「かしこまりました・・・」
小姑は、そう言うと執務室へ戻って行かれた。
・・・・・・さあ!準備を始めよう。
とりあえず用意したのは・・・
・クッキーを三種類(バタークッキー、チョコチップクッキー、紅茶クッキー)
・ショートケーキ
・プリン(夕飯のデザート用に大量生産済み)
後は、私の小姑の勝手なイメージで作った秘策!
ふ・ふ・ふ・・・。私が弟妹達にどれだけお菓子を作ってあげた事か!
誕生日ケーキも私が作ってたんだからね!!!
私の家事はお母さんとお祖母ちゃん仕込みなんだから!出来ない事なんてないはずッ!!!
*****
ふぅ~。よし!行くぞ!
コンコン・・・
「ルクティアナです。
お茶菓子をお持ち致しました。」
「・・・入れ。」
「失礼致します・・・」
カートを押しながら室内へ入っていく・・・
「わぁ~凄いね・・・これ全部ティアナちゃんが作ったの?!」
「はい。私がご用意させて頂きました・・。」
「凄い技術だな・・・」
「・・・問題は味ですよ。」
ヴッ・・・小姑ってば、まだ少し怒ってる?!
私はテーブルにお菓子を並べていき、お茶を一人ずつ注いでいった・・・。
始めはダージリン。
「本日は、お茶菓子をご用意するのが初めてなので、種類豊富に準備させて頂きました。
お好みの物があれば仰って下さい。」
「じゃあ、食べてみるね~♪」
とラインハルト様が一番に手を伸ばした・・・
・・・ガシッ・・・・・・え?!・・・
ディー様がラインハルト様の手を掴んでいる
え?何事?!
「先に食べるな・・・」
「・・・プッ・・クククッ。
わ、わかったよ。ロイが先に食べて良いよ。」
何がわかったの?ラインハルト様どうして、そんなに肩を震わせながら笑ってるの・・・?
ディー様は満足気な表情でバタークッキーに手を伸ばした・・・・・・サクッ!
「・・・旨い・・・これは甘くないクッキーなのか?それに少し塩か?これは・・・」
「はい。本日は茶菓子の種類も多いので、クッキーは甘すぎない物をご用意致しました。
こちらがバタークッキーで隠し味に塩を少々入れております。他の二種類はチョコが入っているクッキーと紅茶の茶葉を練り込んだクッキーです。」
「・・・紅茶のクッキーですか?」
「はい、そちらはアールグレイを使用しています。」
ミュゼル様はゆっくりと手にとり口の中に入れていった・・・・・・サクッ!
「・・・美味しい・・・
口に入れた瞬間に紅茶の香りがしますね・・」
口の中の味を楽しむように瞳を閉じた・・・
「じゃあ、俺はケーキ食べよう・・・・・・
旨ッ!!!ふわふわだよ、スポンジ!それにクリームもくどくないし・・・」
ラインハルト様はショートケーキを気に入ってくれたようだ・・・
よし、まずは掴みはいい感じだ・・・
ここからだな!私の秘策!!!
他のお菓子に手を伸ばしているミュゼル様に声をかけた・・・
「ミュゼル様、本日は私のおすすめをご用意しております。・・・ですがこちらは、ミュゼル様達には馴染みのない味かと思うのですが、いかがいたしましょう?」
「馴染みのない味とは一体・・・?」
ミュゼル様は困惑しながらも、興味はあるみたいだ・・・
「遠い異国の国で食されている方法になります
まずは米を炊き、潰します。その後に豆を甘く煮て、こした物で潰した米を包みます。それが・・・おはぎと呼ばれる食べ物になります
飲み物は玉露をご用意致しました。合わせて御賞味下さい・・・」
私はおはぎと玉露をミュゼル様の前に用意して、様子を伺った・・・
どうだろう・・・。
私の勝手なイメージでアンコいけるだろうと思ったのだけど・・・日本人なら大丈夫だけど、この国の人ってこの味は有りなのかな?
ちょ、ちょっと勢いだけで作り過ぎたかな?
「・・・どうやって食べるのですか?」
ミュゼル様は少し頬を染めながら、不満げに聞いてきた。
あ!説明忘れてた!!!
「説明不足でした、申しましたありません。
そちらは異国の国では手で食べられる様です。
ですので、下に敷いている紙を持ちながら食べられても大丈夫です。
一応フォークもご用意しておりますので、お好きな方法でお願い致します。」
少し悩みながらも、おはぎの紙に手を伸ばし口に入れていった・・・
え?!手で食べるの?
一応説明はしたけど、ミュゼル様は絶対にフォーク派だと思ってたよ。
おはぎを口に入れて少し固まったかと思ったら無言で食べ進め、最後に玉露に手を伸ばした。
「・・・ふぅ。・・・これは不思議な甘さですね・・・食感も面白い・・・このお茶もよく合う。苦味で口の中がさっぱりとします・・・
・・・この菓子は、また作って頂けますか?」
「はい!!!ぜひ、作らせて頂きます。
異国のレシピはまだありますので、他の物もご用意致しますね。楽しみにしていて下さい」
ミュゼル様は納得したように頷き、他の茶菓子に手を伸ばしていった・・・
やったー!!!!小姑の胃袋を掴んだぞー!
やっぱり和菓子か!うちの頑固な爺ちゃんも和菓子一択だったから・・・もしかしてって思ったんだよね~♪ふふふ~
他の人達の様子を見てみると・・・
ラインハルト様はプリンを食べられている・・・カラメルソースが気に入ったようだ。
ラインハルト様の好みは洋菓子っぽいなー。
ディー様は・・・私を見てる・・・
え?!わ、わたし???
ディー様は、何やら少し険しい顔をして私を見ている・・・
「・・・どうされましたか?」
ディー様は自分が座っているソファーの左部分を叩いた・・・
え?!どういう意味?
「・・・座れ・・・。」
・・・ボン!ボン!
隣に???
ヴゥ・・・何!その目、怖いよ・・・何で睨んで来るの?
座るの?!・・・でも・・・
私はミュゼル様達が止めてくれるかな?と思い横を見てみると・・・二人とも茶菓子に夢中になっていた。
何で今なのよーー。タイミングーーー!!!
私は逃げ場が無いのを感じ、渋々隣に腰を下ろした。すると・・・
「どうして、ジュリアスには別の菓子を作った?俺には無いのに・・・」
「・・・え?別の菓子?!・・・・あの、」
「茶も、一種類あいつの方が多い・・・」
ディー様は怒っている!・・・筈なのに何か悲しそう?というより泣きそう?なのかな?!
は?!お菓子にお茶?・・・え?!
えーーーー!それでこんな顔をしてるの?
でも、違うんだよ!ちゃんと考えて来たから!
「あ、あのディー様、本日はお試しで色々とご用意致しました。
ミュゼル様には、先程の異国の菓子を。ラインハルト様にはショートケーキです。
そしてディー様には、クッキーをご用意させて頂きました。ディー様はもしかしたら、甘い物はお好きではないのではと思いましたので、甘く無いものをご用意致しました。
・・・いかがでしたか?」
「・・・俺の為のクッキー・・・旨かった。甘過ぎなくて、食べやすかった。
・・・・・・塩のやつが一番好きだ。」
顔が少しほころんだみたい・・・温かい雰囲気がディー様から出てる。
「かしこまりました。またご用意致します。」
ふぅー。一件落着だね~♪
「・・・ん。分けてやる・・・」
クッキーを私の口に押し当ててくる・・・
食べるの?!私が・・・?
口に押し付けてくるから反論もできないよ!
仕方なく私が口を開くと・・・
「・・・ウグッ・・・ンッ・・・」
ゆ、指まで、突っ込んで来やがったー!!!
苦しい・・・ちょっとやめてよ!本当に!
私が少し涙目になりながら、指を出そうと押し返してるのに・・・ディー様は満面の笑みで私を見つめている。その瞳の奥には、わずかに熱が浮かびあがってきている・・・
「・・・ンッ・・・フ・・・ッ・・・」
手で押しかえそうとしているのに、力が強すぎてビクともしない・・・口の中は唾液が凄い事になっており、私は恥ずかしさで気を失いそうだった・・・
「何をやっているのですか!馬鹿者が!!!」
ミュゼル様が大声をあげた・・・
「あちゃー。やっちゃったね・・・。
ロイってば瞳孔開いてるよ?これは、猫化一歩手前って感じかな?」
目の前のディー様は大声に驚いたみたいで、目を見開き、指を引っ込めた・・・。
「あ・・・えっ?!・・・あ!!!悪い!」
涙目の私を見て、状況がようやく読めたようだ
近くに私が座った事により、軽く匂いにやられたようだ・・・
そして、ディー様にはミュゼル様から特大の説教が始まり・・・
私はラインハルト様から慰めの言葉を頂いた。最後は聞こえなかったけど・・・。
「・・・大丈夫だよ!俺らお菓子に夢中であんまり見てなかったから~!
まあ、ちょっとエロかったな・・・とは思ったけど・・・。」
・・・・・・
今日は散々な1日だったな・・・。
ミュゼル様には怒られて、茶菓子で挽回しようと思ったらこんな事になって。
はあ・・・ディー様まだ怒られてるな~
でも!今回はしっかりと反省してもらおう!結構恥ずかしかったし・・・
二人のお説教姿を眺めていたら・・・ディー様と目が合った。
ヤバい!!!・・・と思った時には遅かった。
「話をちゃんと聞いているのですか!
・・・・?・・・・・?・・・・・?・・・・
何を見ているのですか?・・・・・・ッ!!!ルクティアナ様ちょっとこちらへ・・・・早くしなさいッ!」
え?私もなの?でも、目があっただけで・・・
そこから、私の危機管理能力の無さの話が長い事続き、お説教の仲間入りを果たした・・・
でも今回はあきらかにディー様が悪いでしょ!
私はちゃんと抵抗したよ!
・・・もう!結局こうなるんだから!!!
私はミュゼル様にしっかりとお説教された。
家族以外の男性の隣に座ってはいけない!男から食べ物を食べさせて貰うなど言語道断!!!と私は夕飯の準備をする時まで小姑から逃げられなかった・・・
何でこうなるのよーーーーー!!!
お説教から逃げようと思って、この作戦を決行したのに!ディー様のせいだからね!
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一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
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扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。
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✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
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イッキ読みしました。
とても面白かったです(●´∀`●)
「甘い日?」で、主人公の名前、ルクティアナとルクレティアが混在しているのを見つけました。
今後の更新も楽しみにしております!
感想ありがとうございました♪
途中からルクレティアになってました!ご指摘ありがとうございます!
(´ฅωฅ`)‧º·˚.
完結おめでとうございます。
面白かったです。
楽しい時間ありがとうございました。
応援ありがとうございました♪
番外編も予定してますので、よろしければ、ご覧下さい
(o´・ω-)b
素敵な物語でした‼️(* ̄∇ ̄*)良かったです😆🎵🎵 番外編 楽しみにしてます
ありがとうございます♪
番外編の更新も頑張りますので、よろしくお願いします
(ง •̀ω•́)ง