騎士団の世話役

haru.

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本編

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「とりあえず、ロブロ家がこの12年間守ってきた秘密から話すぞ・・・」

はあ・・・。
あれは私が六歳の時だった。
お兄様とリリーは昔からお父様似と言われていて、中性的な顔立ちの中に意思の強い瞳が印象的だった。

その頃はお母様がまだご存命で、私はお母様に瓜二つと言われて育ってた。
私はお母様に似た金色のふわふわした髪も青い瞳もお揃いで大好きだった。

まだ幼かった私達は家から出る事もなく、庭でいつも遊んでいた・・・
周りではお母様やメイド達が楽しそうにお茶をしていて、たまにお父様が様子を見に来てくれる・・・とても楽しい、素敵な時間だった。

ある日お母様の体の調子が良く、ピクニックに行くことになった。
私達は初めてのお出かけに浮かれていた・・・
湖と花畑の綺麗な場所だった。
お弁当を食べてリリーはお昼寝をしてしまい、お兄様は湖で遊んでいた。
私はお母様に花をプレゼントしようと、花畑に向かった・・・。
辺りには私達は以外誰もいなかったはず・・・油断していた私は気がついた時には気を失っていた。

気がつくと馬車の中にいて、馬車の中には大きな豚がいた。
子供の私にはとても巨大な白豚に見えた。
その白豚は大量の汗をかいていて、臭い息を吐きまくっていた。
馬車の中は白豚の息の音が響き渡り、とても恐ろしかった。目が覚めた事がバレないように、私は息を殺し続けた。
「この恐ろしく可愛い娘を育てて私の物にしよう。」
「初潮が来るのが楽しみだ。」
「どんな風に躾ようか・・・。」
白豚は恐ろしい言葉を呪文のように唱え続けた。

その頃には前世の記憶があった私はこの男がどんな目的で私を拐ったのか理解でき、ゾッとした・・・。
逃げたくても、馬車は走り続けているし・・・
もう無理だと諦めていた。
その時・・・町への入り口で揉め事が起きたらしく、馬車が立ち往生した。
しばらくして白豚は我慢の限界がきたのか、扉の外へ怒鳴り散らしに出て行った。

私は今をのがしたらもう逃げられないと思い、馬車の中からゆっくりと出て行き、森の中に姿を隠した。

その場でどのくらい過ごしたのだろう・・・。
気がつくと・・・凄い勢いで町の入り口にやってきた馬車が見えた。
そこから聞こえた声は必死に何かを訴えていて、顔を出してみると・・・私の大好きなお父様だった。

私は泣きながらお父様に駆け寄り、お父様は私を強く強く抱き締めてくれた。

お父様達は私が居なくなった事にすぐ気がついて周囲を探してくれていたみたい。
私はどれ程恐ろしい目にあったかを事細かに話した。護衛の騎士と白豚の会話でアストロズ侯爵と言う名前だった事を伝えると・・・
お父様は難しい顔をして、私の事を必ず守ると言ってくれた。

家に着いてからもお父様の側を私は離れなかった。暫くしてお母様達が帰ってきて、お母様とお兄様が号泣しながら私を抱き締めてくれて、私はそこでまた泣いてしまった。
リリーは、初めてのお出かけに疲れたみたいで目が覚める事はなく、事件の事は知らないようだった。

後からわかった事だけど、
お父様は家に帰った後すぐに、ロブロ家があの場所にいた事実を隠した。メイドや護衛達にも口止めして、屋敷に出入りする人間は徹底的に調べるようになった。

そして、アストロズ侯爵の事も徹底的に調べたみたい・・・。

噂こそ多くある人だけど、いつも証拠が集まらず、好き放題していて人脈だけは広い、そんな人物だった。
そして何より最悪だったのが、白豚がロブロ家より爵位が上だった事だ。

しばらくして、アストロズ侯爵が金髪青目の女の子を探しているという噂が流れた。
お母様は病弱で、社交界にもあまり顔を出していなかったから顔を知っている人も少なく、娘の私が疑われる事もなく過ごせた。

だけど、今後私が社交界に出るようになれば、すぐ見つかり婚姻を望まれた場合、断る事は出来ないとお父様は考えた。
そこで、魔道具を使い私の姿を偽る事にした。
お父様はこんな方法でしか守る事が出来なくてすまない・・・と言ってくれたが。
私にとっては自由に出歩ける魔法のアイテムだった。このネックレスをつけている時はあの男に見つかる心配をしなくてすんだ。

それから12年がたった今でも、私はネックレスをつけている。
お父様と生涯を共にする相手が出来たら、ネックレスを外そうと決めていた。

(見極めはお父様がするから!と何度も、何度も言われた・・・。)

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