上 下
30 / 38
ー番外編ーヴィオレット*隣国編*

しおりを挟む
「一体どういう事なのッッッ!!!!!」

ガシャァァァァンッッッ!

豪華な室内には真っ赤な髪を振り乱している女性が甲高い叫び声や怒鳴る声を上げながら室内の物が壊しまくっていた・・・

女はセディルの元婚約者・エステリーナだ。

エステリーナが怒りと憎悪に顔を染めながら、暴れている側には騎士達がおり、俯きながらただエステリーナのヒステリーが治まるのを待つ事しか出来なかった・・・

パリーンッ!グシャァッッ!!ガシャァンッッッ!!

・・・・・・・・・・・・

「はぁ、はぁ、はぁ、・・・ゆ、許せないわ。
その女の素性はわからなかっただけでなく、2人の関係はセディルバルドの片想いですってッッッ?!・・・・・・ッッッ!!!
私には欠片も気持ちを寄越さなかったあの男が恋をしているというのッッッ?!」

「あの能面のような男が頬を染めて、恋い焦がれているとッ?!
・・・こんな屈辱なくってよ・・・・・・」

「本当にあの男が美しく価値のある男でなければさっさと殺していたわ・・・それなのに生かされている自覚もなく、他の女にうつつをぬかして・・・あろう事か、薄汚い孤児の側にいるだなんて・・」

身の毛もよだつような表情で「いづれ孤児達も始末すべきね・・・。でもまずは女からにしましょう。」と恐ろしい言葉を呟いていた。

その様子を見る限りエステリーナはセディルバルドに執着するあまり、正気を失っているのだろう・・・騎士も侍女も気がついてはいたが自分達の身に被害が出るのを恐れて誰も口にする事が出来なかった・・・

「でッッッ!!!女の方は本当に何も出て来なかったのかしらッ?!」

騎士に詰めよって問いただすエステリーナ。

「あ、あの・・・え・・・っと・・・き、気になる男がいまして只今調査中です・・・」

「・・・何よそれは・・・・・・」

オドオドとしながら報告してくる騎士の話を訝しげに見つめるエステリーナ。

騎士の報告によると、国境付近の酒場で暴れていた男を知り合いの騎士が捕縛しているらしい。狂ったように暴れ、支離滅裂な言葉を発する男は、時折興味深い事を言うというのだ。

「身元などを尋問していた時に、女の話をするんです・・・自分の元婚約者で自分に惚れ込んでいた筈だから保釈金などの金は用意できるッ!あの女を探してくれッッッ!!とそう言うらしいです。そして女性の名はヴィオレット、金髪で菫色の瞳が特徴らしいです。」

何処かで聞いた事のある容姿に名前だとは思いませんか?と騎士は真剣な顔をして問いかけた・・・

「裏をとろうと情報収集しているのですが、今のところ掴める物が何もなくて、男の証言だけなのですが・・・それも何だか怪しい気がして・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

エステリーナの無言にまたヒステリーが起きるのかとドキドキしていた騎士だったが、「・・・へぇ~・・・・・・」ニヤリと悪どい笑みを浮かべたエステリーナは、何か悪巧みを思いついた様子だった。

「ではその男に確かめてもらえばいいわ。本当に自分の元婚約者なのか・・・金蔓が側にいた方が男の都合もいいでしょ?逃げられないように囲うか既成事実でも作らせなさい・・・」

「・・・それに私も久しぶりにセディルバルドの顔が見たくなったわ・・・・・・良い機会だから会いに行こうかしら・・・フフフッ・・」

エステリーナは良い案ね・・・と言いながら満足気に微笑んでいた・・・

「お、お嬢様・・・そ、それは成りませんよ?しばらくは大人しくしているように旦那様から言われていたではありませんか・・・。
い、今何か問題を起こせば取り返しがつかなくなるのでは・・・」

勇気をふり絞った侍女が怯えながらも苦言を呈してくる姿にイラッとしたエステリーナ。

・・・だが後になって気がつく・・・
ここがエステリーナにとってのターニングポイントであったと・・・侍女の言葉を聞き入れ大人しくしている事を選び、セディルバルドから手を引いていれば・・・

だが今のエステリーナにはそんな事がわかる筈もなく、侍女ごときが自分にたてついたと感じ、セディルバルドへの怒りも相まって、エステリーナのヒステリーは深夜まで続いたとか・・・

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

孤児院にいつも通りにやって来たら、何やら慌ただしく皆が動き回っていた・・・

「・・・どうしたの?」

走り回っていた子供達を捕まえて聞き出してみると・・・「あのね!セディル兄ちゃん達がしばらく遠くに行くんだって!・・・だから僕達プレゼントを渡そうと思って準備してるのッ!」
「朝、手紙が来たのッ!」
「馬車も一緒だったのッッ!!」
「あとでまた迎えに来るんだってッッッ!」

子供達は我先にと、情報を話そうとしてくれた。

(え・・・手紙?・・・遠くに行く?・・・どういう事なの・・・しばらくっていつまで・・・)

私は突然の言葉に困惑してしまい、楽しそうにハシャいでる子供達へ笑顔を向けてあげる事が出来なかった・・・

その間に情報を仕入れてきたサンが背後から、教えてくれた。
「どうやらウィルトリア公爵家から手紙が来たようです。侯爵家関係で何やら進展があった為、公爵家から迎えが来たのだと思われます」

(・・・進展・・・・・・わざわざ呼び出すって事は良い事なんだよね・・・)

公爵家から呼ばれたという事は証拠集めに目処がたったという事の筈なのに・・・何故か言い知れぬ不安が襲ってくる・・・・・・

私はとりあえずセディルさんに会おうと孤児院の裏にある小屋へ向かった。


しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

婚約破棄をしてくれた王太子殿下、ありがとうございました

hikari
恋愛
オイフィア王国の王太子グラニオン4世に婚約破棄された公爵令嬢アーデルヘイトは王国の聖女の任務も解かれる。 家に戻るも、父であり、オルウェン公爵家当主のカリオンに勘当され家から追い出される。行き場の無い中、豪商に助けられ、聖女として平民の生活を送る。 ざまぁ要素あり。

泣き虫令嬢は自称商人(本当は公爵)に愛される

琴葉悠
恋愛
 エステル・アッシュベリーは泣き虫令嬢と一部から呼ばれていた。  そんな彼女に婚約者がいた。  彼女は婚約者が熱を出して寝込んでいると聞き、彼の屋敷に見舞いにいった時、彼と幼なじみの令嬢との不貞行為を目撃してしまう。  エステルは見舞い品を投げつけて、馬車にも乗らずに泣きながら夜道を走った。  冷静になった途端、ごろつきに囲まれるが謎の商人に助けられ──

婚約破棄は計画的に。

秋月一花
恋愛
「アイリーン、貴様との婚約を――」 「破棄するのですね、かしこまりました。喜んで同意致します」  私、アイリーンは転生者だ。愛読していた恋愛小説の悪役令嬢として転生した。とはいえ、悪役令嬢らしい活躍はしていない。していないけど、原作の強制力か、パーティー会場で婚約破棄を宣言されそうになった。  ……正直こっちから願い下げだから、婚約破棄、喜んで同意致します!

乙女ゲームの世界だと知っていても

竹本 芳生
恋愛
悪役令嬢に生まれましたがそれが何だと言うのです。

誰ですか、それ?

音爽(ネソウ)
恋愛
強欲でアホな従妹の話。

婚約破棄させていただきますわ

佐崎咲
恋愛
巷では愚かな令息による婚約破棄が頻発しています。 その波が私のところにも押し寄せてきました。 ですが、婚約破棄したいのは私の方です。 学園の広場に呼び出されましたが、そうはいきませんことよ。 ※無断転載・複写はお断りいたします。

お城で愛玩動物を飼う方法

月白ヤトヒコ
恋愛
婚約を解消してほしい、ですか? まあ! まあ! ああ、いえ、驚いただけですわ。申し訳ありません。理由をお伺いしても宜しいでしょうか? まあ! 愛する方が? いえいえ、とても素晴らしいことだと思いますわ。 それで、わたくしへ婚約解消ですのね。 ええ。宜しいですわ。わたくしは。 ですが……少しだけ、わたくしの雑談に付き合ってくださると嬉しく思いますわ。 いいえ? 説得などするつもりはなど、ございませんわ。……もう、無駄なことですので。 では、そうですね。殿下は、『ペット』を飼ったことがお有りでしょうか? 『生き物を飼う』のですから。『命を預かる』のですよ? 適当なことは、赦されません。 設定はふわっと。 ※読む人に拠っては胸くそ。

いつか終わりがくるのなら

キムラましゅろう
恋愛
闘病の末に崩御した国王。 まだ幼い新国王を守るために組まれた婚姻で結ばれた、アンリエッタと幼き王エゼキエル。 それは誰もが知っている期間限定の婚姻で…… いずれ大国の姫か有力諸侯の娘と婚姻が組み直されると分かっていながら、エゼキエルとの日々を大切に過ごすアンリエッタ。 終わりが来る事が分かっているからこそ愛しくて優しい日々だった。 アンリエッタは思う、この優しく不器用な夫が幸せになれるように自分に出来る事、残せるものはなんだろうかを。 異世界が難病と指定する悪性誤字脱字病患者の執筆するお話です。 毎度の事ながら、誤字脱字にぶつかるとご自身で「こうかな?」と脳内変換して頂く可能性があります。 ご了承くださいませ。 完全ご都合主義、作者独自の異世界感、ノーリアリティノークオリティのお話です。菩薩の如く広いお心でお読みくださいませ。 小説家になろうさんでも投稿します。

処理中です...