13 / 38
ー番外編ーヴィオレット*隣国編*
③
しおりを挟む
side???
かなり高そうな内装の一室に爽やかな男性と男性に似た青年が向かい合ってテーブルについていた。
「あの子がウィルトリア領地に入った。場所はモーラナ町を選んだようだ・・・」
「・・・モーラナ町・・・・確か・・」
「勝手に会いに行くなよ。」
「どうしてでしょうか・・・」
「恐らくあの子は望んでいない。
レイラの娘だ・・・自分で決めて歩いていける。下手に私達が手助けしたら嫌われるぞ。」
「そ、それは・・・」
「お前も妹分に嫌われるのは嫌だろう?」
「う・・・」
青年はそれは嫌だと言いたげに眉をよせ、時期が来るまで待ちます。と言い部屋を出て行った・・・それを見た男性は「私も妹を大切に可愛がってきたが、あいつにもその血が流れているという事か・・・」と苦笑いをした。
「・・・モーラナ町と言えば、あいつが人を匿っている地ではなかったか?」
男性は不穏な事を呟きながら、まぁ出会う事などある筈がないか・・・と思いグラスに酒を注いだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
あれから数日が経った・・・
孤児院の情報収集が終わり、サンとレイから報告をうけた。
モーラナ町の孤児院の規模は、職員として働いているのが2人、10歳以上の子が6人、1歳以上の子が14人、そして乳幼児が3名、子供達が計23人の中々大所帯の孤児院らしい。
職員はこの間まで若い女性2人居たのだが、婚姻と妊娠で仕事を辞めていったそうだ。
大人がかなり少ないが子達が率先して手伝い等をしていて、10歳以上の子達も毎日半数交代する事で、仕事を探しに行く事も、孤児院の家事を手伝う事も出来ているらしい。
立地は子供が多い事、夜泣きや近隣の環境を考慮して商店の先にある、住宅地から少し離れた位置に大きな建物が建てられている・・・
建物はきちんと管理されている様子で、屋根や壁の劣化もみられないし、お金も領主からの支援がきちんとされており、職員が着服している様子もない。
ただ気になっていた1日2食というのは、お金の問題でも、職員が意地悪している訳でもない。孤児は自分で生きていく力がない者は幸せにはなれない。半数以上はまともな仕事にも就けずに犯罪に走るか、生きることが困難になるかだと言う。
だから将来今よりも貧窮した時に備えて、胃を小さくする訓練だという・・・。
(レイによると1日2回の食事は孤児院では普通の事らしい)
(これに関しては将来に責任を持てない私がどうこう言っていい問題じゃないな・・・)
周辺住民とのやりとりはそこまでない様子だが、孤児だからと言ってそこまでの隔てがあるようには見えなかった。
ただやはり仕事関連だとやはり孤児を雇いたいと思う者達はいない様子だ・・・
そして一つ気になる事があるという。
職員は2人だけの筈が大人3人の姿が孤児院内にいるという。
暫く監視していたが、孤児院の離れに暮らしていて、外見から判断して恐らく家族だと思われる。夫婦に見える男女に成人以上だと思われる男性。
更に監視をしていた際、姿は見られなかったが男性には監視がバレたと思われる・・・
サンが言うには監視はただバレたとかではなく、男性が周囲を気にしている様子があり、それで気づかれてしまったのではないかと思う。そして男性は素性は恐らく元騎士か暗殺者。バレた時の殺気が尋常ではなかったらしい・・・
「え・・元騎士と暗殺者って全然違うわよ?」
「はい。・・・でもそれぐらい危険な殺気だったと・・・」
「暗殺者・・・」
唖然としている私に向かってレイは暗殺者だと何度も言ってくる・・・
(孤児院に暗殺者?!・・・何で?漫画やアニメみたいに孤児院を危ない養成所にでもしているの?)
頭の中で前世で見た2次元のスパイや暗殺者養成所の話を思い浮かべていた・・・
(それとも孤児院を脅して居座っているとか?)
「その暗殺者と、孤児院の関係性はどんな感じだったの?」
「それが、庭で子供達と遊んだり力仕事を任されたりと関係性は良好のようでした・・・」
(なら・・・脅してる線はないな。)
(それにしても・・・サンもレイも優秀過ぎる。調査を依頼したけどここまで調べるとは凄すぎね・・・)
お祖父様がつけてくれた護衛のサンとレイは2人共、あの国でお祖父様に仕込まれて力を付けた騎士らしく、剣術だけでなく、密偵紛いの事や尋問、人身掌握術やらなんやら色々と仕込まれており、身分が平民と孤児だった為隣国へついてこれたみたいだ。
因みに、サンとレイはまだまだ下っぱらしく、お祖父様についている護衛には足元にも及ばないらしい。
「とりあえず、今の段階では私達が孤児院に関わるのは無理そうね・・・その暗殺者が何者かがわからなくては・・・」
「お嬢様、危ない事は・・・」
「暗殺者・・・10人以上殺してる筈・・・」
(こ、殺してる・・・ッッッ?!)
目が本気なレイを見ながら苦笑いなサンが「殺気を浴びたのはレイなんです。それからあいつは暗殺者だとずっと言い張ってて・・・」と教えてくれた・・・
「絶対に暗殺者。・・・危険過ぎる。」
(えぇぇぇぇ。でもサン苦笑いしてるよ?
レイがビビり過ぎてる可能性もあるんじゃない?だってやっぱ孤児院に暗殺者はいないでしょ?・・・)
私が疑っているのがわかったのか、ちょっと怒り気味のレイをよそに、サンは「私は元騎士だと思います。・・・左腰の辺りをしきりに気にしていました。あれは剣を持つ騎士がよくする仕草です。」と言いながら自身の左腰にさしてある剣を見せた。
右利きの騎士は左腰に剣をさしておく為左腰が気になってしまうらしい・・・
(今の段階でお祖父様に相談にしても、関わらなければいい。と言われて終わりだよね・・・)
「元騎士であれば調べるのは不可能ではありません・・・」
サンは難しい顔をしながら、男性の顔の特徴はわかっているので、その情報を元に調べるのは時間はかかるでしょうが不可能ではないかと。と言いながら乗り気ではない様子だ・・・
(うわぁ・・・調べられるけど賛成は出来ないって感じかな。・・・まぁレイの様子を見る限り危険人物なのは確かな様子だし・・・)
(一体どうするべきなのだろう・・・)
かなり高そうな内装の一室に爽やかな男性と男性に似た青年が向かい合ってテーブルについていた。
「あの子がウィルトリア領地に入った。場所はモーラナ町を選んだようだ・・・」
「・・・モーラナ町・・・・確か・・」
「勝手に会いに行くなよ。」
「どうしてでしょうか・・・」
「恐らくあの子は望んでいない。
レイラの娘だ・・・自分で決めて歩いていける。下手に私達が手助けしたら嫌われるぞ。」
「そ、それは・・・」
「お前も妹分に嫌われるのは嫌だろう?」
「う・・・」
青年はそれは嫌だと言いたげに眉をよせ、時期が来るまで待ちます。と言い部屋を出て行った・・・それを見た男性は「私も妹を大切に可愛がってきたが、あいつにもその血が流れているという事か・・・」と苦笑いをした。
「・・・モーラナ町と言えば、あいつが人を匿っている地ではなかったか?」
男性は不穏な事を呟きながら、まぁ出会う事などある筈がないか・・・と思いグラスに酒を注いだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
あれから数日が経った・・・
孤児院の情報収集が終わり、サンとレイから報告をうけた。
モーラナ町の孤児院の規模は、職員として働いているのが2人、10歳以上の子が6人、1歳以上の子が14人、そして乳幼児が3名、子供達が計23人の中々大所帯の孤児院らしい。
職員はこの間まで若い女性2人居たのだが、婚姻と妊娠で仕事を辞めていったそうだ。
大人がかなり少ないが子達が率先して手伝い等をしていて、10歳以上の子達も毎日半数交代する事で、仕事を探しに行く事も、孤児院の家事を手伝う事も出来ているらしい。
立地は子供が多い事、夜泣きや近隣の環境を考慮して商店の先にある、住宅地から少し離れた位置に大きな建物が建てられている・・・
建物はきちんと管理されている様子で、屋根や壁の劣化もみられないし、お金も領主からの支援がきちんとされており、職員が着服している様子もない。
ただ気になっていた1日2食というのは、お金の問題でも、職員が意地悪している訳でもない。孤児は自分で生きていく力がない者は幸せにはなれない。半数以上はまともな仕事にも就けずに犯罪に走るか、生きることが困難になるかだと言う。
だから将来今よりも貧窮した時に備えて、胃を小さくする訓練だという・・・。
(レイによると1日2回の食事は孤児院では普通の事らしい)
(これに関しては将来に責任を持てない私がどうこう言っていい問題じゃないな・・・)
周辺住民とのやりとりはそこまでない様子だが、孤児だからと言ってそこまでの隔てがあるようには見えなかった。
ただやはり仕事関連だとやはり孤児を雇いたいと思う者達はいない様子だ・・・
そして一つ気になる事があるという。
職員は2人だけの筈が大人3人の姿が孤児院内にいるという。
暫く監視していたが、孤児院の離れに暮らしていて、外見から判断して恐らく家族だと思われる。夫婦に見える男女に成人以上だと思われる男性。
更に監視をしていた際、姿は見られなかったが男性には監視がバレたと思われる・・・
サンが言うには監視はただバレたとかではなく、男性が周囲を気にしている様子があり、それで気づかれてしまったのではないかと思う。そして男性は素性は恐らく元騎士か暗殺者。バレた時の殺気が尋常ではなかったらしい・・・
「え・・元騎士と暗殺者って全然違うわよ?」
「はい。・・・でもそれぐらい危険な殺気だったと・・・」
「暗殺者・・・」
唖然としている私に向かってレイは暗殺者だと何度も言ってくる・・・
(孤児院に暗殺者?!・・・何で?漫画やアニメみたいに孤児院を危ない養成所にでもしているの?)
頭の中で前世で見た2次元のスパイや暗殺者養成所の話を思い浮かべていた・・・
(それとも孤児院を脅して居座っているとか?)
「その暗殺者と、孤児院の関係性はどんな感じだったの?」
「それが、庭で子供達と遊んだり力仕事を任されたりと関係性は良好のようでした・・・」
(なら・・・脅してる線はないな。)
(それにしても・・・サンもレイも優秀過ぎる。調査を依頼したけどここまで調べるとは凄すぎね・・・)
お祖父様がつけてくれた護衛のサンとレイは2人共、あの国でお祖父様に仕込まれて力を付けた騎士らしく、剣術だけでなく、密偵紛いの事や尋問、人身掌握術やらなんやら色々と仕込まれており、身分が平民と孤児だった為隣国へついてこれたみたいだ。
因みに、サンとレイはまだまだ下っぱらしく、お祖父様についている護衛には足元にも及ばないらしい。
「とりあえず、今の段階では私達が孤児院に関わるのは無理そうね・・・その暗殺者が何者かがわからなくては・・・」
「お嬢様、危ない事は・・・」
「暗殺者・・・10人以上殺してる筈・・・」
(こ、殺してる・・・ッッッ?!)
目が本気なレイを見ながら苦笑いなサンが「殺気を浴びたのはレイなんです。それからあいつは暗殺者だとずっと言い張ってて・・・」と教えてくれた・・・
「絶対に暗殺者。・・・危険過ぎる。」
(えぇぇぇぇ。でもサン苦笑いしてるよ?
レイがビビり過ぎてる可能性もあるんじゃない?だってやっぱ孤児院に暗殺者はいないでしょ?・・・)
私が疑っているのがわかったのか、ちょっと怒り気味のレイをよそに、サンは「私は元騎士だと思います。・・・左腰の辺りをしきりに気にしていました。あれは剣を持つ騎士がよくする仕草です。」と言いながら自身の左腰にさしてある剣を見せた。
右利きの騎士は左腰に剣をさしておく為左腰が気になってしまうらしい・・・
(今の段階でお祖父様に相談にしても、関わらなければいい。と言われて終わりだよね・・・)
「元騎士であれば調べるのは不可能ではありません・・・」
サンは難しい顔をしながら、男性の顔の特徴はわかっているので、その情報を元に調べるのは時間はかかるでしょうが不可能ではないかと。と言いながら乗り気ではない様子だ・・・
(うわぁ・・・調べられるけど賛成は出来ないって感じかな。・・・まぁレイの様子を見る限り危険人物なのは確かな様子だし・・・)
(一体どうするべきなのだろう・・・)
1
お気に入りに追加
1,548
あなたにおすすめの小説
婚約破棄をしてくれた王太子殿下、ありがとうございました
hikari
恋愛
オイフィア王国の王太子グラニオン4世に婚約破棄された公爵令嬢アーデルヘイトは王国の聖女の任務も解かれる。
家に戻るも、父であり、オルウェン公爵家当主のカリオンに勘当され家から追い出される。行き場の無い中、豪商に助けられ、聖女として平民の生活を送る。
ざまぁ要素あり。
泣き虫令嬢は自称商人(本当は公爵)に愛される
琴葉悠
恋愛
エステル・アッシュベリーは泣き虫令嬢と一部から呼ばれていた。
そんな彼女に婚約者がいた。
彼女は婚約者が熱を出して寝込んでいると聞き、彼の屋敷に見舞いにいった時、彼と幼なじみの令嬢との不貞行為を目撃してしまう。
エステルは見舞い品を投げつけて、馬車にも乗らずに泣きながら夜道を走った。
冷静になった途端、ごろつきに囲まれるが謎の商人に助けられ──
婚約破棄は計画的に。
秋月一花
恋愛
「アイリーン、貴様との婚約を――」
「破棄するのですね、かしこまりました。喜んで同意致します」
私、アイリーンは転生者だ。愛読していた恋愛小説の悪役令嬢として転生した。とはいえ、悪役令嬢らしい活躍はしていない。していないけど、原作の強制力か、パーティー会場で婚約破棄を宣言されそうになった。
……正直こっちから願い下げだから、婚約破棄、喜んで同意致します!
いつか終わりがくるのなら
キムラましゅろう
恋愛
闘病の末に崩御した国王。
まだ幼い新国王を守るために組まれた婚姻で結ばれた、アンリエッタと幼き王エゼキエル。
それは誰もが知っている期間限定の婚姻で……
いずれ大国の姫か有力諸侯の娘と婚姻が組み直されると分かっていながら、エゼキエルとの日々を大切に過ごすアンリエッタ。
終わりが来る事が分かっているからこそ愛しくて優しい日々だった。
アンリエッタは思う、この優しく不器用な夫が幸せになれるように自分に出来る事、残せるものはなんだろうかを。
異世界が難病と指定する悪性誤字脱字病患者の執筆するお話です。
毎度の事ながら、誤字脱字にぶつかるとご自身で「こうかな?」と脳内変換して頂く可能性があります。
ご了承くださいませ。
完全ご都合主義、作者独自の異世界感、ノーリアリティノークオリティのお話です。菩薩の如く広いお心でお読みくださいませ。
小説家になろうさんでも投稿します。
お城で愛玩動物を飼う方法
月白ヤトヒコ
恋愛
婚約を解消してほしい、ですか?
まあ! まあ! ああ、いえ、驚いただけですわ。申し訳ありません。理由をお伺いしても宜しいでしょうか?
まあ! 愛する方が? いえいえ、とても素晴らしいことだと思いますわ。
それで、わたくしへ婚約解消ですのね。
ええ。宜しいですわ。わたくしは。
ですが……少しだけ、わたくしの雑談に付き合ってくださると嬉しく思いますわ。
いいえ? 説得などするつもりはなど、ございませんわ。……もう、無駄なことですので。
では、そうですね。殿下は、『ペット』を飼ったことがお有りでしょうか?
『生き物を飼う』のですから。『命を預かる』のですよ? 適当なことは、赦されません。
設定はふわっと。
※読む人に拠っては胸くそ。
【完結】仕事を放棄した結果、私は幸せになれました。
キーノ
恋愛
わたくしは乙女ゲームの悪役令嬢みたいですわ。悪役令嬢に転生したと言った方がラノベあるある的に良いでしょうか。
ですが、ゲーム内でヒロイン達が語られる用な悪事を働いたことなどありません。王子に嫉妬? そのような無駄な事に時間をかまけている時間はわたくしにはありませんでしたのに。
だってわたくし、週4回は王太子妃教育に王妃教育、週3回で王妃様とのお茶会。お茶会や教育が終わったら王太子妃の公務、王子殿下がサボっているお陰で回ってくる公務に、王子の管轄する領の嘆願書の整頓やら収益やら税の計算やらで、わたくし、ちっとも自由時間がありませんでしたのよ。
こんなに忙しい私が、最後は冤罪にて処刑ですって? 学園にすら通えて無いのに、すべてのルートで私は処刑されてしまうと解った今、わたくしは全ての仕事を放棄して、冤罪で処刑されるその時まで、押しと穏やかに過ごしますわ。
※さくっと読める悪役令嬢モノです。
2月14~15日に全話、投稿完了。
感想、誤字、脱字など受け付けます。
沢山のエールにお気に入り登録、ありがとうございます。現在執筆中の新作の励みになります。初期作品のほうも見てもらえて感無量です!
恋愛23位にまで上げて頂き、感謝いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる