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ー番外編ーヴィオレット*隣国編*

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かなり高そうな内装の一室に爽やかな男性と男性に似た青年が向かい合ってテーブルについていた。

「あの子がウィルトリア領地に入った。場所はモーラナ町を選んだようだ・・・」

「・・・モーラナ町・・・・確か・・」

「勝手に会いに行くなよ。」

「どうしてでしょうか・・・」

「恐らくあの子は望んでいない。
レイラの娘だ・・・自分で決めて歩いていける。下手に私達が手助けしたら嫌われるぞ。」

「そ、それは・・・」

「お前も妹分に嫌われるのは嫌だろう?」

「う・・・」

青年はそれは嫌だと言いたげに眉をよせ、時期が来るまで待ちます。と言い部屋を出て行った・・・それを見た男性は「私も妹を大切に可愛がってきたが、あいつにもその血が流れているという事か・・・」と苦笑いをした。

「・・・モーラナ町と言えば、あいつが人を匿っている地ではなかったか?」

男性は不穏な事を呟きながら、まぁ出会う事などある筈がないか・・・と思いグラスに酒を注いだ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

あれから数日が経った・・・
孤児院の情報収集が終わり、サンとレイから報告をうけた。

モーラナ町の孤児院の規模は、職員として働いているのが2人、10歳以上の子が6人、1歳以上の子が14人、そして乳幼児が3名、子供達が計23人の中々大所帯の孤児院らしい。

職員はこの間まで若い女性2人居たのだが、婚姻と妊娠で仕事を辞めていったそうだ。

大人がかなり少ないが子達が率先して手伝い等をしていて、10歳以上の子達も毎日半数交代する事で、仕事を探しに行く事も、孤児院の家事を手伝う事も出来ているらしい。

立地は子供が多い事、夜泣きや近隣の環境を考慮して商店の先にある、住宅地から少し離れた位置に大きな建物が建てられている・・・

建物はきちんと管理されている様子で、屋根や壁の劣化もみられないし、お金も領主からの支援がきちんとされており、職員が着服している様子もない。

ただ気になっていた1日2食というのは、お金の問題でも、職員が意地悪している訳でもない。孤児は自分で生きていく力がない者は幸せにはなれない。半数以上はまともな仕事にも就けずに犯罪に走るか、生きることが困難になるかだと言う。
だから将来今よりも貧窮した時に備えて、胃を小さくする訓練だという・・・。
(レイによると1日2回の食事は孤児院では普通の事らしい)

(これに関しては将来に責任を持てない私がどうこう言っていい問題じゃないな・・・)

周辺住民とのやりとりはそこまでない様子だが、孤児だからと言ってそこまでの隔てがあるようには見えなかった。
ただやはり仕事関連だとやはり孤児を雇いたいと思う者達はいない様子だ・・・

そして一つ気になる事があるという。
職員は2人だけの筈が大人3人の姿が孤児院内にいるという。
暫く監視していたが、孤児院の離れに暮らしていて、外見から判断して恐らく家族だと思われる。夫婦に見える男女に成人以上だと思われる男性。

更に監視をしていた際、姿は見られなかったが男性には監視がバレたと思われる・・・

サンが言うには監視はただバレたとかではなく、男性が周囲を気にしている様子があり、それで気づかれてしまったのではないかと思う。そして男性は素性は恐らく元騎士か暗殺者。バレた時の殺気が尋常ではなかったらしい・・・

「え・・元騎士と暗殺者って全然違うわよ?」

「はい。・・・でもそれぐらい危険な殺気だったと・・・」

「暗殺者・・・」

唖然としている私に向かってレイは暗殺者だと何度も言ってくる・・・

(孤児院に暗殺者?!・・・何で?漫画やアニメみたいに孤児院を危ない養成所にでもしているの?)

頭の中で前世で見た2次元のスパイや暗殺者養成所の話を思い浮かべていた・・・

(それとも孤児院を脅して居座っているとか?)

「その暗殺者と、孤児院の関係性はどんな感じだったの?」

「それが、庭で子供達と遊んだり力仕事を任されたりと関係性は良好のようでした・・・」

(なら・・・脅してる線はないな。)

(それにしても・・・サンもレイも優秀過ぎる。調査を依頼したけどここまで調べるとは凄すぎね・・・)

お祖父様がつけてくれた護衛のサンとレイは2人共、あの国でお祖父様に仕込まれて力を付けた騎士らしく、剣術だけでなく、密偵紛いの事や尋問、人身掌握術やらなんやら色々と仕込まれており、身分が平民と孤児だった為隣国へついてこれたみたいだ。

因みに、サンとレイはまだまだ下っぱらしく、お祖父様についている護衛には足元にも及ばないらしい。

「とりあえず、今の段階では私達が孤児院に関わるのは無理そうね・・・その暗殺者が何者かがわからなくては・・・」

「お嬢様、危ない事は・・・」

「暗殺者・・・10人以上殺してる筈・・・」

(こ、殺してる・・・ッッッ?!)

目が本気なレイを見ながら苦笑いなサンが「殺気を浴びたのはレイなんです。それからあいつは暗殺者だとずっと言い張ってて・・・」と教えてくれた・・・

「絶対に暗殺者。・・・危険過ぎる。」

(えぇぇぇぇ。でもサン苦笑いしてるよ?
レイがビビり過ぎてる可能性もあるんじゃない?だってやっぱ孤児院に暗殺者はいないでしょ?・・・)

私が疑っているのがわかったのか、ちょっと怒り気味のレイをよそに、サンは「私は元騎士だと思います。・・・左腰の辺りをしきりに気にしていました。あれは剣を持つ騎士がよくする仕草です。」と言いながら自身の左腰にさしてある剣を見せた。
右利きの騎士は左腰に剣をさしておく為左腰が気になってしまうらしい・・・

(今の段階でお祖父様に相談にしても、関わらなければいい。と言われて終わりだよね・・・)

「元騎士であれば調べるのは不可能ではありません・・・」

サンは難しい顔をしながら、男性の顔の特徴はわかっているので、その情報を元に調べるのは時間はかかるでしょうが不可能ではないかと。と言いながら乗り気ではない様子だ・・・

(うわぁ・・・調べられるけど賛成は出来ないって感じかな。・・・まぁレイの様子を見る限り危険人物なのは確かな様子だし・・・)

(一体どうするべきなのだろう・・・)




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