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~第一章~
選んだ道
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もう全部諦めてしまおうと思っていたジェイクの意識が引き戻される言葉が聞こえた。
ーートロイに殺されるかと思った?
それってまさか……
「……は? 叱られるって……はぁ? もうアクアに何かしたのか!?」
恐れていた事態はもう起きていたのかと顔を青ざめるジェイク。
そんな息子の姿を見て、自分達が如何に不甲斐なくて、息子に頼りきっていたのかを自覚するオリヴァーとリエラ。
「違う。そうじゃない。…………あの酒を飲んだ日の早朝にトロイの家に連れてかれて説教された。」
「お前達の子供はサマンサだけじゃない! って怒鳴られたの。」
「え…………あの人が?」
オリヴァーはその日を振り返って説明した。
「あの晩ベロベロに酔っぱらって眠りこけていた俺達を無理矢理引きずって隣の家に連れてかれたんだ。」
トロイは兼ねてから感じていた事をオリヴァー夫妻にぶつけたらしい。
ーー何故、面倒ばかり引き起こす娘を大事にする癖に息子を蔑ろにする。
オリヴァー夫妻にはジェイクを蔑ろにしている自覚なんてなかったから、何て事を言うんだと反論した。
間違った道に進んでいる娘を心配して、正しい道に引き戻そうとするのは親として当然の事だ。と……
娘を心配することの何処が悪いって言うの?
恨んだり憎んだりしてもやっぱり娘は娘なのよ!と……
親の愛に溢れた言葉だ。
それが二人の子供に平等に与えられているのならば。
トロイは二人の言葉を鼻で嘲笑い、こう問いかけた。
ーーならお前らのもう一人の息子は心配じゃないのか? あんなにも家族に尽くして、誰よりも我慢して、家族の愛を欲しがっている息子を見えているか?
ーーお前らの子供は二人いる。自分勝手で他人を踏み台にして生きるクズな娘と家族の尻拭いをして、しっかりした子供になるしかなかった息子がな。
トロイの言葉に唖然とした。
自分達には見えていなかった息子の姿を言い聞かされ、しっかりしていると思っていた息子が実際はしっかりするしかなかっただけだと言われた。
「あの時、俺は親失格だとトロイに言われて自覚したんだ。」
「手のかかる子にだけ尽くして、何でも出来る子は放置するなんてちょっとした虐待だと責められたの。その時全身が凍りついたような気がしたわ。まさか自分がしてきた事がそんな風に言われる事だなんて思いもしなかった。」
「……っ………」
トロイの発言を聞いて胸が締め付けられた。
両親さえ気がつかなかった気持ちに気がついてくれた。
ずっと言いたかった言葉を言ってくれた。
「俺達の息子は姉だけでなく親の尻拭いもしてる。この先もそれをさせる気か? と聞かれたよ。」
「私達がサマンサを想えば想うほどジェイクの負担は増えるって……。」
たった一人でサマンサの被害にあった人達へ頭を下げて尻拭いをして、家では直接サマンサにあれこれと命じられてきた日々。
疫病神だった姉がようやく居なくなったと思ったら、
酒浸りで仕事にも行かなくなった父親。
泣きわめいて家事をしなくなった母親。
ーーそんなどうしようもない状態のお前達を支え続けていたのは誰だ。よく考えてみろ。その上で今まで家族に尽くしてきた息子ではなく、勝手に家を出ていった娘を選ぶっていうのなら正真正銘お前らはあの女の親だ。クズ過ぎてどうしようもない。
トロイの言葉が重石のようにのしかかってきた。
ーーこの先、あの女は隣国へ嫁ぎに行く。……わかっているとは思うが歓迎してくれる者などいない。あの女が幸せになる道などもう何処にもない。そういう道をあの女は自分で選んだ。
突きつけられた現実に目の前が真っ暗になるのを感じた。
「……選べ。そう言われたよ。…………あの場でサマンサを選ぶのか、ジェイクを選ぶのか、決めろと言われたんだ。」
「サマンサを選ぶ事はジェイクを見捨てる事だと言われたわ。…………あの人は私が聞きたくない事、目を反らしていたい事を何度も言ってきた。現実を見ろと突きつけられたの。」
「…………それで……二人は俺を選んだの?」
怒っているような泣きそうな複雑な顔で見つめてくるジェイクに罪悪感で胸が締め付けられた。
「そうだ。今更だが、……本当に今更だが、ジェイクの親で居たいんだ。どうしようもない、情けなくて頼りない父親ですまない。」
「……貴方に苦労ばかり押し付けてきた私達が言える事じゃないけど、ジェイクの親として側に居たいって思ったの。今までに見過ごしてきた色んな貴方を見つけていきたい。……やり直したい。そう思ったの。今まで本当にごめんなさい。子供の貴方に辛い思いばかりさせて……」
両親の今更な言葉に何を言っていいのかわからないジェイク。
あぁー。アクアもあの時こんな気持ちだったのか。
自分の感情が定まっていない中で謝罪されるのってこんなにも苦痛なんだな。
……罪悪感たっぷりの顔で謝罪されると許せない自分が酷い奴なんじゃないかって思える。
それでもジェイクはトロイが与えてくれた機会を無駄にしないように勇気を振り絞って両親と向き合った。
「…………我が家は外では仲の良い家族だと思われてたけど、実際は何もかもが壊れている最低な家族だった。だから今更やり直したいっていきなり言われても無理だ。今までの事を考えると、どう反応していいのかわからない。……アクアが来てから少しずつ楽しいって思える瞬間が家の中でも増えてたけど、その雰囲気が俺達三人だけで出せるかって言われたらきっと無理だと思う。」
「…………そうだな。」
「今更すぎよね……ごめんなさい。勝手な事ばかり言って。」
拒絶されたと感じたオリヴァーとリエラは自業自得だと自虐的な笑みを浮かべて俯いた。
そんな二人の姿を見たジェイクは溜め息をついて自分もこの人達の血を引いていると嫌ってほど自覚させられた。
こんな仕打ちを受けても見捨てられない。なんて……
本来ならこんな奴らとは縁を切る!
もう誰の尻拭いもしない!
そう言ったっていい筈なのに……。
「約束してよ。もうサマンサとは縁を切るって。……どんな状況になってもあいつの頼み事は聞かないって誓って。……誓ってくれるのならもう一度家族としてやり直すっていうのも有りだと思う。」
ジェイクの言葉にオリヴァー達は俯いていた顔を勢いよく上げる。
「ほ、本当か!?」
「わ、私達とやり直してくるの?」
「約束してくれるのならね。……あ、あとアクアへの態度も改めなよ。多分だけど、あの時トロイが動いたのってアクアの為だと思う。アクアが俺達に好意的な感情を抱いてくれているから、こうやって動いてくれたんだと思うよ。父さんや母さんが道を踏み外さないように……。」
もしもサマンサ側に父さん達がついたら、敵対するアクアは悲しくて苦しむ事になる。だからその前に動いたんだろうな。……俺の事は多分そのついでだろう。
過保護でアクア第一のトロイの感情はわかりにくいようでかなりわかりやすい。
やんわりとオブラートに包んでトロイを怒らせる真似するなよ。と言うと……何かを思い出すように震えるオリヴァーとリエラ。
「わ、わかってる。誓ってサマンサには関わらない。」
「え、ええ! あの子に何を頼まれても引き受けないわ!」
壊れたブリキ人形のようにカクカクと頷く。
……この様子から察するに結構キツめな釘を刺されたらしいな。
まぁそのくらいがちょうど良いか。この二人には……
ジェイクは青ざめながら首を未だに振っている二人を見て苦笑いした。
そして此処にはいないアクアとトロイに感謝した。
二人のお陰で両親が変わり始めた。
きっと悪くない未来がやってくるんだろうって思えた。
△▽△▽
ーー回想ーー
「お前等がどっちの子供を選ぶかなんて俺には関係ねぇ。だがなその結果、アクア様に被害が及ぶってんなら話は別なんだよ!」
「……ヒッ!」
「一度だけでなく二度までも、うちのアクア様を傷つけようってんならお前らの娘本当に許さねぇからな。」
「……わ、わかってます。私達がそんな事は決してさせません。」
顔を青ざめさけながら頭を下げるリエラを見て呆れたように溜め息をつく。
「違ぇんだよ。そこだよ、そこ! 俺もお前の息子もそこを気にしてんだよ! お前等が親だからっていう理由で娘を追いかけて、正しい道に正そうとするのは勝手だ。でも出来ないよな? そんなこと。……それが出来ないからあの人格でこの17年間だったんだろ? お前達はどうせ娘に泣きつかれたら親として助けてやらなきゃとか考えて最終的にはあの女の味方になっちまうんだよ!」
「…………」
「もしもその頼みがあの女にとって邪魔な相手を排除する事ならどうする? もしそれがアクア様なら?」
「……ッ…………!」
「何だその顔は! 想像すらしてなかったのか! お前等、本当に頭すっかすかだな! お前の息子はそうなったらお前達が罪人になる。俺と戦う事になる。そこまで考えて心配しているのに……情けねぇ親だな!」
「……なっ! ジェイクがっ……!」
「ま、まさか……」
「あのガキは頭の悪い三人の家族のせいで、人よりも多くの事を考えて、危険を回避しようとしてるんだよ! お前達の為に! だから初対面で会ったアクア様にも好意的な態度で、様子伺いしてたんだろ! アクア様がどんな人間で、どういう扱いをすればいいのか、考えて行動してたんだよ! 元王女様が家にやって来るなんてどうしたらいいのかわからなくて誰にも相談できなくて、それでもガキが一人で上手く立ち回ろうとしてたんだよ! それくらい気がついてやれよ!」
「…………ジェイクが……」
「とりあえず覚えておけよ。……俺はアクア様に危害を加えようとする奴を決して許さない。何処の誰であろうと排除する。…………なんなら今排除されとくか? お前等、ふらっふらと危なっかしいからな! ああ゛!?」
凄まじい殺気を感じ、鋭く光った黒い目を見たのが、最後の記憶だった。
恐怖で気を失いかけて薄れゆく意識中、聞こえてきた。
「お前等みたいなダメな親をこんなにも大切にしてくれる息子がいるんだから、お前等ももっと大切にしてやれよ。……親に捨てられるなんて……そんな経験させんなよ。あんなガキに……。」
悲しむような優しい男の声がーー。
ーートロイに殺されるかと思った?
それってまさか……
「……は? 叱られるって……はぁ? もうアクアに何かしたのか!?」
恐れていた事態はもう起きていたのかと顔を青ざめるジェイク。
そんな息子の姿を見て、自分達が如何に不甲斐なくて、息子に頼りきっていたのかを自覚するオリヴァーとリエラ。
「違う。そうじゃない。…………あの酒を飲んだ日の早朝にトロイの家に連れてかれて説教された。」
「お前達の子供はサマンサだけじゃない! って怒鳴られたの。」
「え…………あの人が?」
オリヴァーはその日を振り返って説明した。
「あの晩ベロベロに酔っぱらって眠りこけていた俺達を無理矢理引きずって隣の家に連れてかれたんだ。」
トロイは兼ねてから感じていた事をオリヴァー夫妻にぶつけたらしい。
ーー何故、面倒ばかり引き起こす娘を大事にする癖に息子を蔑ろにする。
オリヴァー夫妻にはジェイクを蔑ろにしている自覚なんてなかったから、何て事を言うんだと反論した。
間違った道に進んでいる娘を心配して、正しい道に引き戻そうとするのは親として当然の事だ。と……
娘を心配することの何処が悪いって言うの?
恨んだり憎んだりしてもやっぱり娘は娘なのよ!と……
親の愛に溢れた言葉だ。
それが二人の子供に平等に与えられているのならば。
トロイは二人の言葉を鼻で嘲笑い、こう問いかけた。
ーーならお前らのもう一人の息子は心配じゃないのか? あんなにも家族に尽くして、誰よりも我慢して、家族の愛を欲しがっている息子を見えているか?
ーーお前らの子供は二人いる。自分勝手で他人を踏み台にして生きるクズな娘と家族の尻拭いをして、しっかりした子供になるしかなかった息子がな。
トロイの言葉に唖然とした。
自分達には見えていなかった息子の姿を言い聞かされ、しっかりしていると思っていた息子が実際はしっかりするしかなかっただけだと言われた。
「あの時、俺は親失格だとトロイに言われて自覚したんだ。」
「手のかかる子にだけ尽くして、何でも出来る子は放置するなんてちょっとした虐待だと責められたの。その時全身が凍りついたような気がしたわ。まさか自分がしてきた事がそんな風に言われる事だなんて思いもしなかった。」
「……っ………」
トロイの発言を聞いて胸が締め付けられた。
両親さえ気がつかなかった気持ちに気がついてくれた。
ずっと言いたかった言葉を言ってくれた。
「俺達の息子は姉だけでなく親の尻拭いもしてる。この先もそれをさせる気か? と聞かれたよ。」
「私達がサマンサを想えば想うほどジェイクの負担は増えるって……。」
たった一人でサマンサの被害にあった人達へ頭を下げて尻拭いをして、家では直接サマンサにあれこれと命じられてきた日々。
疫病神だった姉がようやく居なくなったと思ったら、
酒浸りで仕事にも行かなくなった父親。
泣きわめいて家事をしなくなった母親。
ーーそんなどうしようもない状態のお前達を支え続けていたのは誰だ。よく考えてみろ。その上で今まで家族に尽くしてきた息子ではなく、勝手に家を出ていった娘を選ぶっていうのなら正真正銘お前らはあの女の親だ。クズ過ぎてどうしようもない。
トロイの言葉が重石のようにのしかかってきた。
ーーこの先、あの女は隣国へ嫁ぎに行く。……わかっているとは思うが歓迎してくれる者などいない。あの女が幸せになる道などもう何処にもない。そういう道をあの女は自分で選んだ。
突きつけられた現実に目の前が真っ暗になるのを感じた。
「……選べ。そう言われたよ。…………あの場でサマンサを選ぶのか、ジェイクを選ぶのか、決めろと言われたんだ。」
「サマンサを選ぶ事はジェイクを見捨てる事だと言われたわ。…………あの人は私が聞きたくない事、目を反らしていたい事を何度も言ってきた。現実を見ろと突きつけられたの。」
「…………それで……二人は俺を選んだの?」
怒っているような泣きそうな複雑な顔で見つめてくるジェイクに罪悪感で胸が締め付けられた。
「そうだ。今更だが、……本当に今更だが、ジェイクの親で居たいんだ。どうしようもない、情けなくて頼りない父親ですまない。」
「……貴方に苦労ばかり押し付けてきた私達が言える事じゃないけど、ジェイクの親として側に居たいって思ったの。今までに見過ごしてきた色んな貴方を見つけていきたい。……やり直したい。そう思ったの。今まで本当にごめんなさい。子供の貴方に辛い思いばかりさせて……」
両親の今更な言葉に何を言っていいのかわからないジェイク。
あぁー。アクアもあの時こんな気持ちだったのか。
自分の感情が定まっていない中で謝罪されるのってこんなにも苦痛なんだな。
……罪悪感たっぷりの顔で謝罪されると許せない自分が酷い奴なんじゃないかって思える。
それでもジェイクはトロイが与えてくれた機会を無駄にしないように勇気を振り絞って両親と向き合った。
「…………我が家は外では仲の良い家族だと思われてたけど、実際は何もかもが壊れている最低な家族だった。だから今更やり直したいっていきなり言われても無理だ。今までの事を考えると、どう反応していいのかわからない。……アクアが来てから少しずつ楽しいって思える瞬間が家の中でも増えてたけど、その雰囲気が俺達三人だけで出せるかって言われたらきっと無理だと思う。」
「…………そうだな。」
「今更すぎよね……ごめんなさい。勝手な事ばかり言って。」
拒絶されたと感じたオリヴァーとリエラは自業自得だと自虐的な笑みを浮かべて俯いた。
そんな二人の姿を見たジェイクは溜め息をついて自分もこの人達の血を引いていると嫌ってほど自覚させられた。
こんな仕打ちを受けても見捨てられない。なんて……
本来ならこんな奴らとは縁を切る!
もう誰の尻拭いもしない!
そう言ったっていい筈なのに……。
「約束してよ。もうサマンサとは縁を切るって。……どんな状況になってもあいつの頼み事は聞かないって誓って。……誓ってくれるのならもう一度家族としてやり直すっていうのも有りだと思う。」
ジェイクの言葉にオリヴァー達は俯いていた顔を勢いよく上げる。
「ほ、本当か!?」
「わ、私達とやり直してくるの?」
「約束してくれるのならね。……あ、あとアクアへの態度も改めなよ。多分だけど、あの時トロイが動いたのってアクアの為だと思う。アクアが俺達に好意的な感情を抱いてくれているから、こうやって動いてくれたんだと思うよ。父さんや母さんが道を踏み外さないように……。」
もしもサマンサ側に父さん達がついたら、敵対するアクアは悲しくて苦しむ事になる。だからその前に動いたんだろうな。……俺の事は多分そのついでだろう。
過保護でアクア第一のトロイの感情はわかりにくいようでかなりわかりやすい。
やんわりとオブラートに包んでトロイを怒らせる真似するなよ。と言うと……何かを思い出すように震えるオリヴァーとリエラ。
「わ、わかってる。誓ってサマンサには関わらない。」
「え、ええ! あの子に何を頼まれても引き受けないわ!」
壊れたブリキ人形のようにカクカクと頷く。
……この様子から察するに結構キツめな釘を刺されたらしいな。
まぁそのくらいがちょうど良いか。この二人には……
ジェイクは青ざめながら首を未だに振っている二人を見て苦笑いした。
そして此処にはいないアクアとトロイに感謝した。
二人のお陰で両親が変わり始めた。
きっと悪くない未来がやってくるんだろうって思えた。
△▽△▽
ーー回想ーー
「お前等がどっちの子供を選ぶかなんて俺には関係ねぇ。だがなその結果、アクア様に被害が及ぶってんなら話は別なんだよ!」
「……ヒッ!」
「一度だけでなく二度までも、うちのアクア様を傷つけようってんならお前らの娘本当に許さねぇからな。」
「……わ、わかってます。私達がそんな事は決してさせません。」
顔を青ざめさけながら頭を下げるリエラを見て呆れたように溜め息をつく。
「違ぇんだよ。そこだよ、そこ! 俺もお前の息子もそこを気にしてんだよ! お前等が親だからっていう理由で娘を追いかけて、正しい道に正そうとするのは勝手だ。でも出来ないよな? そんなこと。……それが出来ないからあの人格でこの17年間だったんだろ? お前達はどうせ娘に泣きつかれたら親として助けてやらなきゃとか考えて最終的にはあの女の味方になっちまうんだよ!」
「…………」
「もしもその頼みがあの女にとって邪魔な相手を排除する事ならどうする? もしそれがアクア様なら?」
「……ッ…………!」
「何だその顔は! 想像すらしてなかったのか! お前等、本当に頭すっかすかだな! お前の息子はそうなったらお前達が罪人になる。俺と戦う事になる。そこまで考えて心配しているのに……情けねぇ親だな!」
「……なっ! ジェイクがっ……!」
「ま、まさか……」
「あのガキは頭の悪い三人の家族のせいで、人よりも多くの事を考えて、危険を回避しようとしてるんだよ! お前達の為に! だから初対面で会ったアクア様にも好意的な態度で、様子伺いしてたんだろ! アクア様がどんな人間で、どういう扱いをすればいいのか、考えて行動してたんだよ! 元王女様が家にやって来るなんてどうしたらいいのかわからなくて誰にも相談できなくて、それでもガキが一人で上手く立ち回ろうとしてたんだよ! それくらい気がついてやれよ!」
「…………ジェイクが……」
「とりあえず覚えておけよ。……俺はアクア様に危害を加えようとする奴を決して許さない。何処の誰であろうと排除する。…………なんなら今排除されとくか? お前等、ふらっふらと危なっかしいからな! ああ゛!?」
凄まじい殺気を感じ、鋭く光った黒い目を見たのが、最後の記憶だった。
恐怖で気を失いかけて薄れゆく意識中、聞こえてきた。
「お前等みたいなダメな親をこんなにも大切にしてくれる息子がいるんだから、お前等ももっと大切にしてやれよ。……親に捨てられるなんて……そんな経験させんなよ。あんなガキに……。」
悲しむような優しい男の声がーー。
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