断罪された悪役令嬢はそれでも自分勝手に生きていきたい

リリの場合5

修道院らしく食事は質素。
食器も粗末。
なのにときどきみかける銀のカトラリー。
質素だが行き届いた設備。
そういう目で見てみれば、この修道院はおかしなところが多い。
そうして見てみると、修道女が大きく分けて２つまたは３つに分類されることがわかる。
リリをはじめとした明らかな貴族として生きていた者、明らかな平民とおそらくはこの修道院を運営側の者。
ここが国境近くということを加味して、ここがどこかわかる。

ここは修道院

リリはため息をついた。
何ヶ月も、修道女ごっこをしていたなんて。
ここは修道院と名付けられだけのただの貴族別邸。

国王
王宮医師が内密に会いたがっていると聞いて、嫌な予感がしてならない。
ちょうど、息子ショルーズが検診を受けたタイミングでの医師からの内密の話など、いいものであるはずがない。
もしやショルーズに重い病でも見つかったのだろうか。
国王にはショルーズしか子がいなかった。
難産で苦しんだ王妃は、二人目を望まなかった。
というか出産に怯えた。
他の王家では問題となったかもしれないが、ショルーズが元気な男子だったことと、王弟が一人いたので特に気になることはなかった。
王の執務室に入った医師は、人払いをさせた上で大変なことを王に告げた。
「大変残念なことですがショルーズ王子は子をなす能力がありません」
それは王家の終わりを告げる言葉。
王は頭を殴られたような衝撃を受けた。
なんてことだ。
なんてことだ。
頭を抱えて呻く王を見て、医師は恐れをなしてひと通り勝手に話すと礼をして退室した。
親としてショックな気持ちもわかったし、何がしかの不利益が自分に降りかかるのもいやだった。
医師は知らない。
ひと通りショックを受けた後、王が何を考えたか。
医師が自分の持ち場に帰る頃には、王が笑っていることを。