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第三十七節「二天に集え 剣勇の誓い 蛇岩の矛は空を尽くす」
~心に体、技に教授心得る~
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剣聖の真の力の一端は、長年の粋に導いた究極戦闘技術に有り。
つまりこれを含めた全ての力こそが、今の剣聖の象徴なのである。
心――究極に高めた命力は深く濃く、何者にも動じぬ強さをも引き出せよう。
技――創造豊かな思考と実戦が育んだ技術は幾千万の歴史さえも覆す。
体――三〇〇年間で休む間も無く鍛えた体はもはや神鋼の如く強靭無比。
惜しむらくは、彼が天力を有していない事か。
もし剣聖が天士になれば、きっとアルトランに対して勇以上に有効的に戦えるだろうから。
でも剣聖はもうそんな事など気にしていない。
〝自身に天力が無いのなら、持っている奴に全てを叩き込めばいい〟―――そう思っているのだから。
無茶苦茶な理論ではあるが、これが剣聖らしいとも言える。
後は勇がそれを受け入れられるかどうか、ただそれだけだ。
「天力も考え方は命力と同じだろーよ。 ならおめぇも出来るはずだ。 【剛命功】と【命踏身】だけじゃねぇ、他にも一杯あるぜー! 楽しみでしょうがねーだろ!?」
「全く、貴方の引き出しの深さはほんと底なしですよ……」
とはいえ、これには勇も半ば呆れ気味だ。
剣聖はこの戦いだけで全てを伝えるつもりなのだから。
ただ、やる気が無いのかと言えば―――嘘になる。
「なら一つでも多く覚えてみせますよ!! ア・リーヴェ、記録を頼んだぞッ!!」
『わかりました。 ならば【創世の鍵】を通さず、私自身のバックアップに全てを保存しましょう。 そうすればアルトランに閲覧される事も無いですから』
剣聖が培ってきた全てを無駄にしない為にも。
己がこれから成そうとする事を有利にする為にも。
そしてその技術さえも超えて剣聖を倒す為にも。
「いい気迫だッ!! これなら実践する甲斐があるってぇもんだぜぇ!!」
ならばもう剣聖も立ち止まっているつもりはない。
魔剣を再び広げて掲げ、その腰を低く落とし込む。
いつでも飛び出し、勇に渾身の一撃をぶち込む為に。
「来いッ!! 今度はもう同じ轍を踏まないッ!!」
勇ももう気力充分だ。
この程度でへこたれるほど甘い男では無いから。
残ったダメージなど気合いで乗り越える気概がある。
そして、ここまで剣聖が見せて来た技術を実践する意欲もまた同様に。
「それじゃあ行くぜェーーーッッ!!!」
勇がその姿勢を見せた時、遂に剣聖が飛び出した。
地面のみならず、草木や土埃を纏めて吹き飛ばして。
勢いのままに、右手の魔剣を振り下ろしながら。
ガッキャァーーーンッ!!!
そうして上がったのは金属音。
勇がその剛腕一閃を受け止めていたのである。
それも、その凄まじいまでの剛力・勢いを前にして―――不動。
「そうだッ!! それでいいッ!!」
勇もまた【剛命功】を使って見せたのだ。
それも、剣聖と寸分変わらぬ堅牢さを誇る程の。
「かああッッ!!」
ただ、これで剣聖が止まる訳も無い。
そんな勇へ間髪入れず、左手の魔剣による横薙ぎ一閃が払われる。
それも、無間とも言える超速度で。
キュウン―――
でも勇はその斬撃さえも躱す。
持ち上げられていく初撃の魔剣と共に。
その身軽さはまさに【命踏身】によるもの。
それも、いつか剣聖との初戦で見せた魔剣への貼り付きと共に。
そうして魔剣と共に跳ね上がった時、剣聖は見た。
天に向けて掲げられた魔剣の先に立つ―――勇の姿を。
「どっちも十分に使えてるじゃあねーかぁ!! いつかの戦いを思い出しちまうぜぇ!!」
フェノーダラ城の前で戦った時、勇は既に【命踏身】の極意を一つやってのけている。
今の様に魔剣に貼り付き、剣聖の死角へ潜り込むという芸当を。
つまり、その時から勇にはそれだけの技量が備わっていたという事だ。
ならば今も使えない道理など無い。
「貼り付くのも、跳ねるのも自在なのが命力の面白れぇとこだ!! 存分に活用しやぁがれ!!」
ただ、このまま避けられ続けて面白い訳も無い。
剣聖が再び両手の魔剣に力を篭め、存分に振り回す。
見せたのは、今の二撃など話にもならない程の剛力豪速の斬撃嵐。
その太刀筋はもはや並の人間では見切る事さえ不可能だ。
「くぅッ!?」
さすがの勇もこの嵐を前には苦悶を浮かべざるを得ない。
たちまちその身を跳ね退けさせていて。
しかし剣聖もむざむざ逃す程甘くはない。
退く勇を前に「ニヤァ」と不敵な笑みを浮かべ、その足を思いっきり踏み出させる。
そうなれば高速機動の暴風が誕生だ。
勇を暴風域へ巻き込まんと迫り行く。
「コイツが避けきれるかあああッ!?」
やはり突撃力では剣聖の方が上。
となれば、迫りくる斬撃嵐に巻き込まれる事はもはや回避不可能。
だが、その時剣聖はその目を疑う事となる。
勇がその斬撃嵐を全て躱していたのだから。
一閃一閃がほぼ無間の斬撃なのにも拘らず。
あらゆる斬撃を紙一重で躱しきる。
そう、勇にはその無数の斬撃が全て見えていたのだ。
【第四の門 ナ・ロゥダ】によって動体視力までをも進化させたが故に。
だから見切る事は最初から出来た。
後はその見切りに対して動ける手段を得るだけで。
でももう勇には【命踏身】の極意が見えている。
剣聖が語り示した事でその全てを一瞬で理解したのだ。
ならばもう、この様な攻撃を躱す事など不可能ではない。
時に大地を跳ね。
時に空気を叩き。
時に魔剣すら足場として。
斬撃嵐の最中を縦横無尽に飛び巡る。
まるで勇自身が光になったかの様だった。
それ程までに鋭く速く無駄無く動き回っていたのである。
「こいつッ!?」
もちろん、プロセスアウトによって暴風域から出る事も出来ただろう。
でも今の勇にその手段を講じるつもりは無い。
何故なら、これは実験だから。
勇が教えて貰った技術を実証する為の。
ならばそこに無粋な手段など不要。
今の勇は感覚だけを研ぎ澄まし、【創世の鍵】の力をほぼ使わずに戦っている。
その力無しでどこまで戦えるかを見極める必要があるからだ。
ただそれを黙ってやらせる剣聖ではない。
たちまち乱撃が「ビタンッ!」と動きを止め、鋭かった動きが突如として変化を迎える。
その動きがまるで流水の様に流れ動き、その身をゆるりと身構えさせていて。
右手を真っ直ぐ前に、左手を眼前に添え。
魔剣を水平に構える姿は、先程までの荒々しさが嘘の様に静淑流麗。
「いいだろう、ならば次だ。 俺はこれを【命流滑】と呼んでいる」
そしてその一言がキッカケだった。
その一言が放たれた途端―――
なんと、勇の体が瞬時にして剣聖の目前まで引き寄せられたのである。
「なあッッ!!?」
それは凄まじい引力が故に。
まるで胸部が強烈に引き合う磁石となったかの様に引っ張られたのだ。
そうなった時、勇の自由が一瞬奪われる事は必至。
なれば剣聖がその拳を振り抜く事もまた。
メリゴッ!!
その瞬間、巨大な左拳が勇の側腹部へと突き刺さる。
引力と腕力が生んだ相対圧力はもはや相殺など不可能だ。
例え【剛命功】であろうとも例外無く。
「がはあッ!?」
それもそのまま振り抜けば、間も無く勇の体は景色の先へと撃ち飛ばされる事となる。
高速砲弾の如く、木々を薙ぎ倒しながら。
「おっといけねー、やり過ぎちまったかぁ?」
次々と弾け飛んだ木々が大地へ落下していく中、剣聖の笑いが激音に混じる。
やはり今の体となった以上、精密な命力制御は難しい様だ。
「だが見せてー事はまだまだ沢山ある。 全部見るまでくたばるんじゃねぇぞぉ?」
その状況下で勇が耐えきれるかなど剣聖にもわかりはしない。
だからこそ、耐えきる事を信じて思う存分に力を見せつけるのみ。
勇が全てを見届けるまで、止まるつもりなど無いのだから。
こんな事で倒れる様なら、どのみち世界は救えない。
つまりこれを含めた全ての力こそが、今の剣聖の象徴なのである。
心――究極に高めた命力は深く濃く、何者にも動じぬ強さをも引き出せよう。
技――創造豊かな思考と実戦が育んだ技術は幾千万の歴史さえも覆す。
体――三〇〇年間で休む間も無く鍛えた体はもはや神鋼の如く強靭無比。
惜しむらくは、彼が天力を有していない事か。
もし剣聖が天士になれば、きっとアルトランに対して勇以上に有効的に戦えるだろうから。
でも剣聖はもうそんな事など気にしていない。
〝自身に天力が無いのなら、持っている奴に全てを叩き込めばいい〟―――そう思っているのだから。
無茶苦茶な理論ではあるが、これが剣聖らしいとも言える。
後は勇がそれを受け入れられるかどうか、ただそれだけだ。
「天力も考え方は命力と同じだろーよ。 ならおめぇも出来るはずだ。 【剛命功】と【命踏身】だけじゃねぇ、他にも一杯あるぜー! 楽しみでしょうがねーだろ!?」
「全く、貴方の引き出しの深さはほんと底なしですよ……」
とはいえ、これには勇も半ば呆れ気味だ。
剣聖はこの戦いだけで全てを伝えるつもりなのだから。
ただ、やる気が無いのかと言えば―――嘘になる。
「なら一つでも多く覚えてみせますよ!! ア・リーヴェ、記録を頼んだぞッ!!」
『わかりました。 ならば【創世の鍵】を通さず、私自身のバックアップに全てを保存しましょう。 そうすればアルトランに閲覧される事も無いですから』
剣聖が培ってきた全てを無駄にしない為にも。
己がこれから成そうとする事を有利にする為にも。
そしてその技術さえも超えて剣聖を倒す為にも。
「いい気迫だッ!! これなら実践する甲斐があるってぇもんだぜぇ!!」
ならばもう剣聖も立ち止まっているつもりはない。
魔剣を再び広げて掲げ、その腰を低く落とし込む。
いつでも飛び出し、勇に渾身の一撃をぶち込む為に。
「来いッ!! 今度はもう同じ轍を踏まないッ!!」
勇ももう気力充分だ。
この程度でへこたれるほど甘い男では無いから。
残ったダメージなど気合いで乗り越える気概がある。
そして、ここまで剣聖が見せて来た技術を実践する意欲もまた同様に。
「それじゃあ行くぜェーーーッッ!!!」
勇がその姿勢を見せた時、遂に剣聖が飛び出した。
地面のみならず、草木や土埃を纏めて吹き飛ばして。
勢いのままに、右手の魔剣を振り下ろしながら。
ガッキャァーーーンッ!!!
そうして上がったのは金属音。
勇がその剛腕一閃を受け止めていたのである。
それも、その凄まじいまでの剛力・勢いを前にして―――不動。
「そうだッ!! それでいいッ!!」
勇もまた【剛命功】を使って見せたのだ。
それも、剣聖と寸分変わらぬ堅牢さを誇る程の。
「かああッッ!!」
ただ、これで剣聖が止まる訳も無い。
そんな勇へ間髪入れず、左手の魔剣による横薙ぎ一閃が払われる。
それも、無間とも言える超速度で。
キュウン―――
でも勇はその斬撃さえも躱す。
持ち上げられていく初撃の魔剣と共に。
その身軽さはまさに【命踏身】によるもの。
それも、いつか剣聖との初戦で見せた魔剣への貼り付きと共に。
そうして魔剣と共に跳ね上がった時、剣聖は見た。
天に向けて掲げられた魔剣の先に立つ―――勇の姿を。
「どっちも十分に使えてるじゃあねーかぁ!! いつかの戦いを思い出しちまうぜぇ!!」
フェノーダラ城の前で戦った時、勇は既に【命踏身】の極意を一つやってのけている。
今の様に魔剣に貼り付き、剣聖の死角へ潜り込むという芸当を。
つまり、その時から勇にはそれだけの技量が備わっていたという事だ。
ならば今も使えない道理など無い。
「貼り付くのも、跳ねるのも自在なのが命力の面白れぇとこだ!! 存分に活用しやぁがれ!!」
ただ、このまま避けられ続けて面白い訳も無い。
剣聖が再び両手の魔剣に力を篭め、存分に振り回す。
見せたのは、今の二撃など話にもならない程の剛力豪速の斬撃嵐。
その太刀筋はもはや並の人間では見切る事さえ不可能だ。
「くぅッ!?」
さすがの勇もこの嵐を前には苦悶を浮かべざるを得ない。
たちまちその身を跳ね退けさせていて。
しかし剣聖もむざむざ逃す程甘くはない。
退く勇を前に「ニヤァ」と不敵な笑みを浮かべ、その足を思いっきり踏み出させる。
そうなれば高速機動の暴風が誕生だ。
勇を暴風域へ巻き込まんと迫り行く。
「コイツが避けきれるかあああッ!?」
やはり突撃力では剣聖の方が上。
となれば、迫りくる斬撃嵐に巻き込まれる事はもはや回避不可能。
だが、その時剣聖はその目を疑う事となる。
勇がその斬撃嵐を全て躱していたのだから。
一閃一閃がほぼ無間の斬撃なのにも拘らず。
あらゆる斬撃を紙一重で躱しきる。
そう、勇にはその無数の斬撃が全て見えていたのだ。
【第四の門 ナ・ロゥダ】によって動体視力までをも進化させたが故に。
だから見切る事は最初から出来た。
後はその見切りに対して動ける手段を得るだけで。
でももう勇には【命踏身】の極意が見えている。
剣聖が語り示した事でその全てを一瞬で理解したのだ。
ならばもう、この様な攻撃を躱す事など不可能ではない。
時に大地を跳ね。
時に空気を叩き。
時に魔剣すら足場として。
斬撃嵐の最中を縦横無尽に飛び巡る。
まるで勇自身が光になったかの様だった。
それ程までに鋭く速く無駄無く動き回っていたのである。
「こいつッ!?」
もちろん、プロセスアウトによって暴風域から出る事も出来ただろう。
でも今の勇にその手段を講じるつもりは無い。
何故なら、これは実験だから。
勇が教えて貰った技術を実証する為の。
ならばそこに無粋な手段など不要。
今の勇は感覚だけを研ぎ澄まし、【創世の鍵】の力をほぼ使わずに戦っている。
その力無しでどこまで戦えるかを見極める必要があるからだ。
ただそれを黙ってやらせる剣聖ではない。
たちまち乱撃が「ビタンッ!」と動きを止め、鋭かった動きが突如として変化を迎える。
その動きがまるで流水の様に流れ動き、その身をゆるりと身構えさせていて。
右手を真っ直ぐ前に、左手を眼前に添え。
魔剣を水平に構える姿は、先程までの荒々しさが嘘の様に静淑流麗。
「いいだろう、ならば次だ。 俺はこれを【命流滑】と呼んでいる」
そしてその一言がキッカケだった。
その一言が放たれた途端―――
なんと、勇の体が瞬時にして剣聖の目前まで引き寄せられたのである。
「なあッッ!!?」
それは凄まじい引力が故に。
まるで胸部が強烈に引き合う磁石となったかの様に引っ張られたのだ。
そうなった時、勇の自由が一瞬奪われる事は必至。
なれば剣聖がその拳を振り抜く事もまた。
メリゴッ!!
その瞬間、巨大な左拳が勇の側腹部へと突き刺さる。
引力と腕力が生んだ相対圧力はもはや相殺など不可能だ。
例え【剛命功】であろうとも例外無く。
「がはあッ!?」
それもそのまま振り抜けば、間も無く勇の体は景色の先へと撃ち飛ばされる事となる。
高速砲弾の如く、木々を薙ぎ倒しながら。
「おっといけねー、やり過ぎちまったかぁ?」
次々と弾け飛んだ木々が大地へ落下していく中、剣聖の笑いが激音に混じる。
やはり今の体となった以上、精密な命力制御は難しい様だ。
「だが見せてー事はまだまだ沢山ある。 全部見るまでくたばるんじゃねぇぞぉ?」
その状況下で勇が耐えきれるかなど剣聖にもわかりはしない。
だからこそ、耐えきる事を信じて思う存分に力を見せつけるのみ。
勇が全てを見届けるまで、止まるつもりなど無いのだから。
こんな事で倒れる様なら、どのみち世界は救えない。
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