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第三十六節「謀略回生 ぶつかり合う力 天と天が繋がる時」
~Les sentiments courent <想い、駆け抜ける>~
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――――――
――――
――
―
「―――えっ、計画を逆手に……?」
それは作戦が開始された日の前日。
再び勇達に向けて放たれたのは、リデルの思っても見ない提案だった。
「ええ。 デュランは今頃、私が皆さんをレンヌに向かわせると思っているハズです。 それが私と彼の決めた計画。 そしてそれを信じて疑っていない。 でももしそれを逆手にとれるなら、間違いなくデュラン達の隙を突けると思うのです」
管制室に集まって早々の彼女の進言は、余りにも衝撃的で。
それでいて、未だ懐疑の目を向ける者も。
まだ信じるには至れないのだろう。
先日ではあれ程煽りに煽ったのだから。
例え和解したとしても、そう簡単には蟠りが解けるはずも無く。
「それが嘘じゃないって証拠でもあんのかよ?」
心輝に至っては疑うばかりに睨みを利かせる始末だ。
もちろんそれを止める者も居ない。
「いっそ混乱が落ち着くまで待った方がいいのでは」という意見も出始めていて。
あのディックでさえも今は静かに見守るのみ。
いや、彼の場合はむしろリデルを信じているからこそ、か。
疑いの目に囲まれる中でも、二人の視線は常に合い続けている。
怯えも、不安も共有するかの様に。
勇気を、自信を共有するかの様に。
ディックが頷く様子は、まるで彼女に応援を送るかのよう。
それがきっと心強かったのだろう。
遂にリデルの口が再び開く。
「証拠は……ありません。 でも、そんなの関係ありません。 今の私の目的はデュランを止めたい、ただそれだけだから」
満を辞して語られた言葉は優しく紡がれ、慈愛に満ちていて。
思わず心輝までもが黙ってしまう程に穏やかで。
ディックが微笑んでしまう程に、彼女らしかった様だ。
「デュランも本当は【救世同盟】の理想を良しとする様な人間ではないんです。 心優しくて、思いやれる人。 でもこの世界の在り方が、デュゼロー氏の存在がこの道へ歩ませる事を強いてしまった」
この話を、ディックは既に聞いている。
聞いた上で発言を許している。
でもこれが浮気的であろうと何だろうと関係無かったのだ。
例えリデルにとっての一番が自分じゃなくても。
例え他の男に抱かれたとしても。
〝愛したリデルが望んだ事ならば何でも許す〟と、ディックは全て受け入れた。
そして彼女に同調したのだ。
だからリデルもこうして真実を打ち明けられる。
信じてくれる夫が居るからこそ、何も怖くは無いのだと。
「だから私は止めたい! 倒すのでもなく、殺すのでもなく、彼が信じるべき道に歩んで欲しいと望んで止まない!! そう、貴方達と同じ様な道に進んで欲しいの!! 誰とでも手を取り合える世界を創って欲しいから……」
もしそんな世界だったら、もしそれが許される国だったら。
きっとリューシィは死ななかっただろう。
もうそんな悲劇を繰り返したくないから、彼女は訴える。
和解する事が極めて困難なのだとしても。
それこそが最も正しい訴えだと思ったから。
その心からの訴えを、彼が拾わない訳も無い。
「わかった。 じゃあその計画の詳細を教えてくれ」
勇もまたそんな世界を望んでいるからこそ、聞き届けないはずも無かったのだ。
これは決して勇がお人好しだから、という訳ではない。
リデルの解き放った心に偽りは無いと感じ取ったから。
そう〝確信〟出来たから。
そんな彼だから、天士になれたのだ。
―
――
――――
――――――
そして今、リデルの想いを受け取って。
勇達がフランスの中心部を力の限りに駆け抜ける。
リデルの想いを届ける為に。
デュランを止める為に。
【救世同盟】の思想を断ち切る為に。
勇達の見纏う装備は以前と比べ、大きく様変わりしている。
全員の魔装が一新されたのだ。
内蔵装甲を一式【エテルコン】へと切り替え、防御性能を強化。
また、魔導式を複雑化する事で耐衝撃力が更に向上した物だ。
おまけに各魔剣との命力循環効率に拍車を掛け、より一層の出力アップが見込めるという。
変わったのは内装だけではない。
各部にも【アーディマス】による強化装甲板が追加されている。
その様相はまさに軽装鎧。
身を守るに相応しいデザインへと生まれ変わったのだ。
これこそがカプロ達研究班の生み出した最新技術の粋。
その名も【魔霊装ファーグタル】。
誇りしその性能、もはや現行の魔装など比較にもならない。
勇は基本的に防具の変更のみ。
これ以上の強化はもはや必要無いからだ。
茶奈も同様に【翼燐エフタリオン】に合わせた仕様で。
各部アーマーパーツを排した上での防御アップとなっている。
防御を必要としないイシュライトも同じだ。
他のメンバーの装備よりも身軽い超軽量仕様の物を身に纏う。
対して、心輝と瀬玲は大きな変化を迎えていた。
心輝がその腕と脚に備えるのは新型魔剣。
その名も【灼雷宝燐甲ラークァイト】。
深紅の装甲に金の装飾が映える腕脚甲は、まるで龍をイメージしたかの様な刺々しさを誇る。
加えて湾曲鱗甲板が何枚も組み合わせた装甲が、腕回り、太もも回りまでを覆っていて。
しかし重装甲にも拘らず柔軟性は一切失われていない。
加えて胴回りを縛るかの様に幾重ものベルト状バンドが這われており、両肩甲を繋ぐ。
その姿は魔霊装と合わせればまさに鱗甲鎧。
重武装にさえ見せる重厚な装いは、今までの心輝の姿とは似ても似つかないと言えよう。
その様相はまさにマヴォの実験結果が反映された、身体防御を基本とする意匠。
でもこうして仕上げられた能力はもはや【グワイヴ】など話にならない程の超性能。
心輝が待ち望んだ機動性を十二分に誇り、業炎を放て、防御能力まで重ね揃える一品に仕上がったのである。
瀬玲がその手に握るのは、大型弓である【カッデレータ】と比べてずっと小柄な弓状魔剣。
その名も【虹閃奏弓ペルパリューゼ】。
今までが全長近くもあった筐体も、身長の半分程にまで小型化されていて。
全体的に流線形状、まるで波をイメージした様な紋様が筐体を飾る。
上弦よりも下弦の方が長く、更には両端にヴァイオリンの糸巻きの様な形状が。
弓状である事には変わり無いのだが、正面が平たい独特な意匠はまるで盾のよう。
表面上には四つの大穴が開いていて、その中で特別大きい命力珠が光を放っている。
長い下弦にはあの短く仕立て直された【エベルミナク・クラトワカ】を収納。
二つの魔剣が一つとなった事例もまた、マヴォの魔剣【アンフェルジィ】の技術を応用。
しかもこの魔剣は分離した状態でも使用出来る、二基一対の魔剣として仕立てられていて。
だがその性能は今までの弓型魔剣とは全く異なり、真の意味で瀬玲しか扱えない仕様となっている。
もちろん、強化されたのは二人だけではない。
ナターシャがその足に履くのはブーツ型魔剣【ナピリオの湧蹄】。
【エスカルオール】を失った事で【浮導オゥレーペ】は不要となり排除へ。
代わりの補助兵装として用意された装備である。
直接的な攻撃力にはならないが、彼女にもはやこれ以上の武装は不要と言えるだろう。
【レイデッター】と【ウェイグル】を持つ今ならば、【烈紅星】の仇名を体現する事が出来るのだから。
マヴォが跨るのは当然【ヴォルトリッター】だ。
だがその後部に繋がれている物は、今までよりもずっと重厚でより圧倒的。
巨大なボディを有する追加パーツ【グランドトマホーク】が接続されていたのである。
しかも、まるで重機と言わんばかりな体躯にも拘らず、その速度はそこらの車よりもずっと速い。
土を激しく巻き上げて走る様はもはやモンスターマシンそのものだ。
加えてそのボディは人が乗る事にも適していて。
瀬玲やナターシャ、ディックを乗せてもなおその速度を維持している。
そして乗っているのはそれだけではない。
その中央に高々と備えるのは―――大型のキャノン砲台。
ディックの要望のままに取り付けられる事になった唯一の武装だ。
その名こそ存在しないが、敢えて形容するなら【電磁命導砲】
命力を電磁力に変換出力する事で、光速に近い弾速砲弾を放つ事が可能な兵器である。
アメリカ軍が独自開発した新兵器だが、出力に見合った性能が発揮出来ずにお蔵入り。
それがアメリカ戦後に搬入され、ディックの目に留まった事が装着のキッカケだ。
その後、研究班によって改善・効率化が施され、【エテルコン】の命力増幅能力を以って完成に至る。
それが今こうして、ディックの手に委ねられているのだ。
これが勇達の誇る新装備の全容。
その秘密は、今までに得た全ての情報の集大成とも言えるもの。
かつて世界に初めてもたらされた古代三十種と同等の最高峰素材。
今までに培われてきた魔剣製造技術と現代技術が織り交ざった混成製法。
使用者の体や要望に合わせて最適化・能率化を突き詰めた設計思想。
勇が素材を報せ。
カプロが考案し。
藤咲徹が設計し。
研究員達が仕上げた。
これらが揃って成した完成度はもはやかつての魔剣を遥かに凌駕する。
最高峰の名を欲しいままにしてきた古代三十種さえも例外無く。
それ程とも言える最強の武装が今ここに揃ったのである。
「遂にこの時がきたんだってなぁ……!!」
そう咆えたのはディック。
だがその様相は今までのひょうひょうとした顔付きとは全く異なる。
怒りと気力に満ち溢れた瞳は、鋭く熱く。
砲台操舵幹を握る手は力強く。
敵を見据える意思は、誰よりも何よりも荒々しく。
「人の女をたぶらかしたテメェラをゼッテェーに許さねぇ!! 【救世同盟】はブッ潰すッッッ!!!!」
怒らないはずも無かったのだ。
許せる訳も無かったのだ。
リデルを、リューシィを巻き込んだ【救世同盟】を。
だからこそ男は戦場で咆哮する。
愛する者達を脅かした者達を退ける為に。
世界を脅かす思想を排する為に。
己の存在意義をこの一戦に賭け―――今こそ、怨敵の思想を撃ち貫く。
――――
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「―――えっ、計画を逆手に……?」
それは作戦が開始された日の前日。
再び勇達に向けて放たれたのは、リデルの思っても見ない提案だった。
「ええ。 デュランは今頃、私が皆さんをレンヌに向かわせると思っているハズです。 それが私と彼の決めた計画。 そしてそれを信じて疑っていない。 でももしそれを逆手にとれるなら、間違いなくデュラン達の隙を突けると思うのです」
管制室に集まって早々の彼女の進言は、余りにも衝撃的で。
それでいて、未だ懐疑の目を向ける者も。
まだ信じるには至れないのだろう。
先日ではあれ程煽りに煽ったのだから。
例え和解したとしても、そう簡単には蟠りが解けるはずも無く。
「それが嘘じゃないって証拠でもあんのかよ?」
心輝に至っては疑うばかりに睨みを利かせる始末だ。
もちろんそれを止める者も居ない。
「いっそ混乱が落ち着くまで待った方がいいのでは」という意見も出始めていて。
あのディックでさえも今は静かに見守るのみ。
いや、彼の場合はむしろリデルを信じているからこそ、か。
疑いの目に囲まれる中でも、二人の視線は常に合い続けている。
怯えも、不安も共有するかの様に。
勇気を、自信を共有するかの様に。
ディックが頷く様子は、まるで彼女に応援を送るかのよう。
それがきっと心強かったのだろう。
遂にリデルの口が再び開く。
「証拠は……ありません。 でも、そんなの関係ありません。 今の私の目的はデュランを止めたい、ただそれだけだから」
満を辞して語られた言葉は優しく紡がれ、慈愛に満ちていて。
思わず心輝までもが黙ってしまう程に穏やかで。
ディックが微笑んでしまう程に、彼女らしかった様だ。
「デュランも本当は【救世同盟】の理想を良しとする様な人間ではないんです。 心優しくて、思いやれる人。 でもこの世界の在り方が、デュゼロー氏の存在がこの道へ歩ませる事を強いてしまった」
この話を、ディックは既に聞いている。
聞いた上で発言を許している。
でもこれが浮気的であろうと何だろうと関係無かったのだ。
例えリデルにとっての一番が自分じゃなくても。
例え他の男に抱かれたとしても。
〝愛したリデルが望んだ事ならば何でも許す〟と、ディックは全て受け入れた。
そして彼女に同調したのだ。
だからリデルもこうして真実を打ち明けられる。
信じてくれる夫が居るからこそ、何も怖くは無いのだと。
「だから私は止めたい! 倒すのでもなく、殺すのでもなく、彼が信じるべき道に歩んで欲しいと望んで止まない!! そう、貴方達と同じ様な道に進んで欲しいの!! 誰とでも手を取り合える世界を創って欲しいから……」
もしそんな世界だったら、もしそれが許される国だったら。
きっとリューシィは死ななかっただろう。
もうそんな悲劇を繰り返したくないから、彼女は訴える。
和解する事が極めて困難なのだとしても。
それこそが最も正しい訴えだと思ったから。
その心からの訴えを、彼が拾わない訳も無い。
「わかった。 じゃあその計画の詳細を教えてくれ」
勇もまたそんな世界を望んでいるからこそ、聞き届けないはずも無かったのだ。
これは決して勇がお人好しだから、という訳ではない。
リデルの解き放った心に偽りは無いと感じ取ったから。
そう〝確信〟出来たから。
そんな彼だから、天士になれたのだ。
―
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そして今、リデルの想いを受け取って。
勇達がフランスの中心部を力の限りに駆け抜ける。
リデルの想いを届ける為に。
デュランを止める為に。
【救世同盟】の思想を断ち切る為に。
勇達の見纏う装備は以前と比べ、大きく様変わりしている。
全員の魔装が一新されたのだ。
内蔵装甲を一式【エテルコン】へと切り替え、防御性能を強化。
また、魔導式を複雑化する事で耐衝撃力が更に向上した物だ。
おまけに各魔剣との命力循環効率に拍車を掛け、より一層の出力アップが見込めるという。
変わったのは内装だけではない。
各部にも【アーディマス】による強化装甲板が追加されている。
その様相はまさに軽装鎧。
身を守るに相応しいデザインへと生まれ変わったのだ。
これこそがカプロ達研究班の生み出した最新技術の粋。
その名も【魔霊装ファーグタル】。
誇りしその性能、もはや現行の魔装など比較にもならない。
勇は基本的に防具の変更のみ。
これ以上の強化はもはや必要無いからだ。
茶奈も同様に【翼燐エフタリオン】に合わせた仕様で。
各部アーマーパーツを排した上での防御アップとなっている。
防御を必要としないイシュライトも同じだ。
他のメンバーの装備よりも身軽い超軽量仕様の物を身に纏う。
対して、心輝と瀬玲は大きな変化を迎えていた。
心輝がその腕と脚に備えるのは新型魔剣。
その名も【灼雷宝燐甲ラークァイト】。
深紅の装甲に金の装飾が映える腕脚甲は、まるで龍をイメージしたかの様な刺々しさを誇る。
加えて湾曲鱗甲板が何枚も組み合わせた装甲が、腕回り、太もも回りまでを覆っていて。
しかし重装甲にも拘らず柔軟性は一切失われていない。
加えて胴回りを縛るかの様に幾重ものベルト状バンドが這われており、両肩甲を繋ぐ。
その姿は魔霊装と合わせればまさに鱗甲鎧。
重武装にさえ見せる重厚な装いは、今までの心輝の姿とは似ても似つかないと言えよう。
その様相はまさにマヴォの実験結果が反映された、身体防御を基本とする意匠。
でもこうして仕上げられた能力はもはや【グワイヴ】など話にならない程の超性能。
心輝が待ち望んだ機動性を十二分に誇り、業炎を放て、防御能力まで重ね揃える一品に仕上がったのである。
瀬玲がその手に握るのは、大型弓である【カッデレータ】と比べてずっと小柄な弓状魔剣。
その名も【虹閃奏弓ペルパリューゼ】。
今までが全長近くもあった筐体も、身長の半分程にまで小型化されていて。
全体的に流線形状、まるで波をイメージした様な紋様が筐体を飾る。
上弦よりも下弦の方が長く、更には両端にヴァイオリンの糸巻きの様な形状が。
弓状である事には変わり無いのだが、正面が平たい独特な意匠はまるで盾のよう。
表面上には四つの大穴が開いていて、その中で特別大きい命力珠が光を放っている。
長い下弦にはあの短く仕立て直された【エベルミナク・クラトワカ】を収納。
二つの魔剣が一つとなった事例もまた、マヴォの魔剣【アンフェルジィ】の技術を応用。
しかもこの魔剣は分離した状態でも使用出来る、二基一対の魔剣として仕立てられていて。
だがその性能は今までの弓型魔剣とは全く異なり、真の意味で瀬玲しか扱えない仕様となっている。
もちろん、強化されたのは二人だけではない。
ナターシャがその足に履くのはブーツ型魔剣【ナピリオの湧蹄】。
【エスカルオール】を失った事で【浮導オゥレーペ】は不要となり排除へ。
代わりの補助兵装として用意された装備である。
直接的な攻撃力にはならないが、彼女にもはやこれ以上の武装は不要と言えるだろう。
【レイデッター】と【ウェイグル】を持つ今ならば、【烈紅星】の仇名を体現する事が出来るのだから。
マヴォが跨るのは当然【ヴォルトリッター】だ。
だがその後部に繋がれている物は、今までよりもずっと重厚でより圧倒的。
巨大なボディを有する追加パーツ【グランドトマホーク】が接続されていたのである。
しかも、まるで重機と言わんばかりな体躯にも拘らず、その速度はそこらの車よりもずっと速い。
土を激しく巻き上げて走る様はもはやモンスターマシンそのものだ。
加えてそのボディは人が乗る事にも適していて。
瀬玲やナターシャ、ディックを乗せてもなおその速度を維持している。
そして乗っているのはそれだけではない。
その中央に高々と備えるのは―――大型のキャノン砲台。
ディックの要望のままに取り付けられる事になった唯一の武装だ。
その名こそ存在しないが、敢えて形容するなら【電磁命導砲】
命力を電磁力に変換出力する事で、光速に近い弾速砲弾を放つ事が可能な兵器である。
アメリカ軍が独自開発した新兵器だが、出力に見合った性能が発揮出来ずにお蔵入り。
それがアメリカ戦後に搬入され、ディックの目に留まった事が装着のキッカケだ。
その後、研究班によって改善・効率化が施され、【エテルコン】の命力増幅能力を以って完成に至る。
それが今こうして、ディックの手に委ねられているのだ。
これが勇達の誇る新装備の全容。
その秘密は、今までに得た全ての情報の集大成とも言えるもの。
かつて世界に初めてもたらされた古代三十種と同等の最高峰素材。
今までに培われてきた魔剣製造技術と現代技術が織り交ざった混成製法。
使用者の体や要望に合わせて最適化・能率化を突き詰めた設計思想。
勇が素材を報せ。
カプロが考案し。
藤咲徹が設計し。
研究員達が仕上げた。
これらが揃って成した完成度はもはやかつての魔剣を遥かに凌駕する。
最高峰の名を欲しいままにしてきた古代三十種さえも例外無く。
それ程とも言える最強の武装が今ここに揃ったのである。
「遂にこの時がきたんだってなぁ……!!」
そう咆えたのはディック。
だがその様相は今までのひょうひょうとした顔付きとは全く異なる。
怒りと気力に満ち溢れた瞳は、鋭く熱く。
砲台操舵幹を握る手は力強く。
敵を見据える意思は、誰よりも何よりも荒々しく。
「人の女をたぶらかしたテメェラをゼッテェーに許さねぇ!! 【救世同盟】はブッ潰すッッッ!!!!」
怒らないはずも無かったのだ。
許せる訳も無かったのだ。
リデルを、リューシィを巻き込んだ【救世同盟】を。
だからこそ男は戦場で咆哮する。
愛する者達を脅かした者達を退ける為に。
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