121 / 1,197
第五節「交錯する想い 友よ知れ 命はそこにある」
~育費 自信 最後に頼むは~
しおりを挟む
凄惨な過去を乗り越えたちゃなにやっと居場所が出来た。
藤咲家への居候を継続する事となったのだ。
それも政府公認とも言える形で。
当然、勇も両親も乗り気だ。
この一週間で相当な親近感が生まれていたから。
何より、不幸な境遇の彼女を救ってあげたいという気持ちが強かったのも大きいが。
きっと福留もこんな形での解決を望んでいたのだろう。
笑い合い、抱き合う……そんな彼等の姿を前にして、「ウンウン」と頷き微笑んでいて。
出したパンフレットや物件リストなど、もはやゴミ同然。
そう言わんばかりの扱いで適当に袋へ詰めて鞄へと仕舞い込んでいた。
こうして勇達の身辺報告と居住に関する話は終わり。
……という訳にはいかない。
一人暮らしでも手厚いサポートがあったのに居候となったから今まで通り、なんて不釣り合いな事を福留が許すはずも無く。
気付けば微笑みのままにわざとらしいまでに両腕を広げていて。
「さぁではそういう事ですので皆さん、ちゃなさんの事をこれからもどうかよろしくお願いいたします。 あ、こうなった場合の事ももちろん考えていますからご安心ください。 相応の対応はさせて頂くつもりです」
まさに用意周到。
もはや抜かり無し。
そう言われんばかりの手際の良さには藤咲家も苦笑を浮かべるばかりだ。
嬉しさ余って苦などまるで見えはしないが。
「今後、皆さんの相応の行動で経費となりえる場合には補填を付けさせて頂きます。 例えばフェノーダラ王国に個人で移動する事になった場合など、ですねぇ」
これから勇達にはフェノーダラ王国を始め、色んな場所に赴く事も増えるだろう。
勇は特にエウリィとの交友関係での付き合いもあるかもしれない。
しかしそういった場合でも、さすがに毎度毎度政府関係者に送ってもらう訳にもいかず。
という訳で公共の移動手段での移動も考慮し、経費として拠出する事になったのだ。
「それらの支払いに関しては特にお手間を取らせる事は無いように心掛ける予定です。 でも出来ればどこへ行ったか、何をしたかをメールや電話などで報告して頂ければと思います。 でないと経費としてみなされない場合も出かねませんので」
こんな話ともなると、まるで本当に契約したと思わせる様な話ばかりで。
まだ学生な勇とちゃなはともかく、両親はどこか納得したかの様に頷いている。
社会人だからこそわかる馴染みといった所か。
「それとちゃなさんの居候の件ですが、家賃・光熱費の代わりに養育費という形で指定の口座に毎月お振込みさせて頂きます。 概要としましては基本的に固定額、支払いは現在の契約形態が切れるまでとなっております」
「養育費が出るのですか……」
「ええ、ざっと五十万程」
「ごっ、五十万!? た、高過ぎでは!?」
これには勇の父親もびっくりだ。
何せ彼の月給より高いのだから。
「そんなに貰っていいの!?」などと叫んでしまいかねない額なだけに。
だが途端、福留の眉間にシワが寄り。
たちまち困った様な顔付きで「ふぅむ」と唸りを上げる。
「すみません、どうにも庶民感覚ではなかった様ですね。 では毎月二万くらいで」
「「えっ!?」」
―――からの大暴落。
まさかの二十五分の一。
まさに上げて落とさんばかりの急落っぷりに両親揃って身を固まらせていて。
再び口を窄ませた動揺の有様をこれでもかと言わん程に露わとしている。
「ま、まぁちゃなちゃんの事はほ、ほら、お、お金じゃないし……?」
「そ、そうよね、ええ! お、お金じゃ愛情は買えないものね! ウフフフフ!」
しかし本当にこの二人、隠し事が不得手である。
勇も苦手なのが遺伝の所為だという事が手に取ってわかる様だ。
今更「五十万で!」などと、この二人が言える訳も無く。
やはりこれだけの額差を見せつけられれば落胆するのも仕方のない事か。
とはいえ、これもただの福留のお遊びに過ぎないのだが。
「ははは、どちらも冗談です。 毎月最大二十万程まで支払わさせて頂きますのでご安心を」
「え、あ、冗談!? そ、そうですよねぇ、はは……」
どうやら二人共すっかり騙されていた様子。
これには勇も呆れるしかない。
あからさまな二人を前に、片笑窪がキリッと吊り上がったニヒルな笑みを向けていて。
やはりつい今しがた大金を手に入れちゃった男は器量が違う。
ちなみにちゃなは思考停止中だ。
席に戻った後もずっと「ぽやぁ」としたまま。
まだ受け入れられた事の嬉しさの余韻を味わっているのだろう。
「それと変容事件バックアップの関係上、学費も来期から奨学金返済という形で支払わさせて頂きます。 あ、でもこれはちゃなさんの分だけですのでご了承を」
「え? あぁ、まあそれはそうですよね」
それも当然の事か。
勇の家は今こうして平穏無事に存在している訳で。
しかしそう返した勇の父親はどこか残念そうにも見える。
先程の冗談話を引きずっているのだろうか。
さすがの勇もこんな話題を前には余裕も消える。
何故なら、彼自身も実は奨学金制度で入学した身なのだから。
奨学金とは言わば学費借金制度の様なもので、いつかは返さなければならない。
その事は勇も知っているだけに心境は複雑だ。
―――俺の分は今回貰った報酬で早い内に返そうかなぁ―――
などと思える分だけ余裕はあるらしい。
とはいえこれを行ってしまえば、自信の素である貯金額の一部がゴリッと消えてなくなる訳だが。
そんな事を思えば、「支払えるだけの残高あるかなぁ」などと思い。
再び自分の通帳に手を伸ばし、再びその金額を確認する。
そしてやはり書かれた金額に間違いは無いとわかったので。
奨学金を返してお釣りすら来る金額を前に、勇の湧き上がる喜びは抑えきれない。
当人の顔には気付かぬ内に「ニタァ」とした笑みが浮かび上がっていて。
そんな様子を横からまんまるとした目で眺めていたちゃなに気付く事は無かった。
これで本筋と言える話はようやく終わり。
後に残るは幾つかの細かい話だけだ。
自衛隊のバックアップのざっくりとした概要。
受け取ったカードと通帳の細かい仕様。
壊れたままフェノーダラに置き去りの車の補填などなど。
そんな話も今となっては大した話題にもならず、あっという間に時は過ぎて。
気付けば質問も無い程までに落ち着いていた。
「さて、私の用意したお話はこれで以上となります。 長い時間お疲れ様でした」
その時見せた締めのお辞儀はとても堂々と芯が通っていたもので。
その丁寧な姿は勇達も思わずお辞儀で返してしまうほどに美しく。
それと同時に、事の終わりを間違いなく実感させるには十分だった様だ。
ふと勇達が時計を覗けばもう既に夜の九時前。
こうして話をしていたのもおおよそ二時間。
色々と感情的になる事も多かったが、それでも勇達には本当に一瞬の事で。
物腰の低い態度を取る福留だからこそ、勇達もこうして安心して話を聞く事が出来たのだろう。
想像していた堅物政治家のイメージを払拭してしまう程に柔らかい対応だったのだから。
「ご飯前にこんな話してたから余計にお腹空いちゃったわぁ。 福留さん、やっぱり何か食べられていらっしゃったら?」
予め話があるという事を伝えられていた様で、既に御飯の仕込みは終わっている模様。
炊飯器からは香ばしい香りの蒸気が上がり、流し場には加工済みの食材が置かれている。
ほんの少し時間が掛かり過ぎた所為か、野菜は多少しなびているが。
そんな提案を持ちかけながら、勇の母親が台所に立つ。
しかし福留はと言えば―――
「いえ、今日はここでお暇させて頂きますよ。 いち早く孫娘に会いに行こうと思います」
やはり先程話した孫娘の方が大事な様だ。
とはいえ価値観は人それぞれというもの。
話を聞いてよく知る母親だからこそ、「それじゃ仕方ないですねぇ」と頷き返すしかなく。
「福留さん、大変ですね……」
「はは、でもあの子の喜ぶ所は好きなので苦ではありませんよ?」
そうして見せたのはいつもよりも大きな笑顔で。
よほど孫娘の事を溺愛してるのだろう。
「ではここで失礼します」
こうして踵を返し、玄関へと向かう。
その足取りもどこか軽やかだ。
孫娘の事もあるのだろうが、やはり良い形で話が纏まったのも大きいのだろう。
しかしそんな折、勇もその後を付いていて。
見送りかとも思えたが、どうやらそうではなさそうだ。
「福留さん、帰り際で申し訳ないんですが少し相談があるんです」
「おや? なんでしょうか?」
「実は―――」
そう語ろうとする勇はどこか神妙な面持ちで。
そこに何かしらの深い理由を察して福留も静かに耳を貸す。
そうして打ち明けられたのは、福留すらも頭を抱えてしまう程に難しい提案だった様で。
「うーん、それは今すぐ答えは出せませんねぇ。 ですが検討はしましょう。 それで勇君の自由度が上がるならばいざ仕方ない範疇と言えますから」
「ありがとうございます。 答え、待ってます」
でもその反応は予想以上に好印象。
膨らんだ期待が勇に深いお辞儀を促していて。
福留もまんざらではなかったのだろう。
勇に微笑みを返すと、それを最後に藤咲家宅を後にしたのだった。
こうしてこの日突然始まった福留との対話が終わりを迎え。
今後、勇達の変容問題での対応が遂に正式な契約として履行される事となる。
これから彼等の非日常は常態化するのだろう。
けれどもう狼狽えはしない。
躊躇いも無い。
その迷いも、悩みも、こうして打ち明けられたから。
後はただひたすらにその解決策を追い求めて突き進むだけだ。
その身に秘めた力を思う存分に行使して。
その地盤はもう整ったのだから。
藤咲家への居候を継続する事となったのだ。
それも政府公認とも言える形で。
当然、勇も両親も乗り気だ。
この一週間で相当な親近感が生まれていたから。
何より、不幸な境遇の彼女を救ってあげたいという気持ちが強かったのも大きいが。
きっと福留もこんな形での解決を望んでいたのだろう。
笑い合い、抱き合う……そんな彼等の姿を前にして、「ウンウン」と頷き微笑んでいて。
出したパンフレットや物件リストなど、もはやゴミ同然。
そう言わんばかりの扱いで適当に袋へ詰めて鞄へと仕舞い込んでいた。
こうして勇達の身辺報告と居住に関する話は終わり。
……という訳にはいかない。
一人暮らしでも手厚いサポートがあったのに居候となったから今まで通り、なんて不釣り合いな事を福留が許すはずも無く。
気付けば微笑みのままにわざとらしいまでに両腕を広げていて。
「さぁではそういう事ですので皆さん、ちゃなさんの事をこれからもどうかよろしくお願いいたします。 あ、こうなった場合の事ももちろん考えていますからご安心ください。 相応の対応はさせて頂くつもりです」
まさに用意周到。
もはや抜かり無し。
そう言われんばかりの手際の良さには藤咲家も苦笑を浮かべるばかりだ。
嬉しさ余って苦などまるで見えはしないが。
「今後、皆さんの相応の行動で経費となりえる場合には補填を付けさせて頂きます。 例えばフェノーダラ王国に個人で移動する事になった場合など、ですねぇ」
これから勇達にはフェノーダラ王国を始め、色んな場所に赴く事も増えるだろう。
勇は特にエウリィとの交友関係での付き合いもあるかもしれない。
しかしそういった場合でも、さすがに毎度毎度政府関係者に送ってもらう訳にもいかず。
という訳で公共の移動手段での移動も考慮し、経費として拠出する事になったのだ。
「それらの支払いに関しては特にお手間を取らせる事は無いように心掛ける予定です。 でも出来ればどこへ行ったか、何をしたかをメールや電話などで報告して頂ければと思います。 でないと経費としてみなされない場合も出かねませんので」
こんな話ともなると、まるで本当に契約したと思わせる様な話ばかりで。
まだ学生な勇とちゃなはともかく、両親はどこか納得したかの様に頷いている。
社会人だからこそわかる馴染みといった所か。
「それとちゃなさんの居候の件ですが、家賃・光熱費の代わりに養育費という形で指定の口座に毎月お振込みさせて頂きます。 概要としましては基本的に固定額、支払いは現在の契約形態が切れるまでとなっております」
「養育費が出るのですか……」
「ええ、ざっと五十万程」
「ごっ、五十万!? た、高過ぎでは!?」
これには勇の父親もびっくりだ。
何せ彼の月給より高いのだから。
「そんなに貰っていいの!?」などと叫んでしまいかねない額なだけに。
だが途端、福留の眉間にシワが寄り。
たちまち困った様な顔付きで「ふぅむ」と唸りを上げる。
「すみません、どうにも庶民感覚ではなかった様ですね。 では毎月二万くらいで」
「「えっ!?」」
―――からの大暴落。
まさかの二十五分の一。
まさに上げて落とさんばかりの急落っぷりに両親揃って身を固まらせていて。
再び口を窄ませた動揺の有様をこれでもかと言わん程に露わとしている。
「ま、まぁちゃなちゃんの事はほ、ほら、お、お金じゃないし……?」
「そ、そうよね、ええ! お、お金じゃ愛情は買えないものね! ウフフフフ!」
しかし本当にこの二人、隠し事が不得手である。
勇も苦手なのが遺伝の所為だという事が手に取ってわかる様だ。
今更「五十万で!」などと、この二人が言える訳も無く。
やはりこれだけの額差を見せつけられれば落胆するのも仕方のない事か。
とはいえ、これもただの福留のお遊びに過ぎないのだが。
「ははは、どちらも冗談です。 毎月最大二十万程まで支払わさせて頂きますのでご安心を」
「え、あ、冗談!? そ、そうですよねぇ、はは……」
どうやら二人共すっかり騙されていた様子。
これには勇も呆れるしかない。
あからさまな二人を前に、片笑窪がキリッと吊り上がったニヒルな笑みを向けていて。
やはりつい今しがた大金を手に入れちゃった男は器量が違う。
ちなみにちゃなは思考停止中だ。
席に戻った後もずっと「ぽやぁ」としたまま。
まだ受け入れられた事の嬉しさの余韻を味わっているのだろう。
「それと変容事件バックアップの関係上、学費も来期から奨学金返済という形で支払わさせて頂きます。 あ、でもこれはちゃなさんの分だけですのでご了承を」
「え? あぁ、まあそれはそうですよね」
それも当然の事か。
勇の家は今こうして平穏無事に存在している訳で。
しかしそう返した勇の父親はどこか残念そうにも見える。
先程の冗談話を引きずっているのだろうか。
さすがの勇もこんな話題を前には余裕も消える。
何故なら、彼自身も実は奨学金制度で入学した身なのだから。
奨学金とは言わば学費借金制度の様なもので、いつかは返さなければならない。
その事は勇も知っているだけに心境は複雑だ。
―――俺の分は今回貰った報酬で早い内に返そうかなぁ―――
などと思える分だけ余裕はあるらしい。
とはいえこれを行ってしまえば、自信の素である貯金額の一部がゴリッと消えてなくなる訳だが。
そんな事を思えば、「支払えるだけの残高あるかなぁ」などと思い。
再び自分の通帳に手を伸ばし、再びその金額を確認する。
そしてやはり書かれた金額に間違いは無いとわかったので。
奨学金を返してお釣りすら来る金額を前に、勇の湧き上がる喜びは抑えきれない。
当人の顔には気付かぬ内に「ニタァ」とした笑みが浮かび上がっていて。
そんな様子を横からまんまるとした目で眺めていたちゃなに気付く事は無かった。
これで本筋と言える話はようやく終わり。
後に残るは幾つかの細かい話だけだ。
自衛隊のバックアップのざっくりとした概要。
受け取ったカードと通帳の細かい仕様。
壊れたままフェノーダラに置き去りの車の補填などなど。
そんな話も今となっては大した話題にもならず、あっという間に時は過ぎて。
気付けば質問も無い程までに落ち着いていた。
「さて、私の用意したお話はこれで以上となります。 長い時間お疲れ様でした」
その時見せた締めのお辞儀はとても堂々と芯が通っていたもので。
その丁寧な姿は勇達も思わずお辞儀で返してしまうほどに美しく。
それと同時に、事の終わりを間違いなく実感させるには十分だった様だ。
ふと勇達が時計を覗けばもう既に夜の九時前。
こうして話をしていたのもおおよそ二時間。
色々と感情的になる事も多かったが、それでも勇達には本当に一瞬の事で。
物腰の低い態度を取る福留だからこそ、勇達もこうして安心して話を聞く事が出来たのだろう。
想像していた堅物政治家のイメージを払拭してしまう程に柔らかい対応だったのだから。
「ご飯前にこんな話してたから余計にお腹空いちゃったわぁ。 福留さん、やっぱり何か食べられていらっしゃったら?」
予め話があるという事を伝えられていた様で、既に御飯の仕込みは終わっている模様。
炊飯器からは香ばしい香りの蒸気が上がり、流し場には加工済みの食材が置かれている。
ほんの少し時間が掛かり過ぎた所為か、野菜は多少しなびているが。
そんな提案を持ちかけながら、勇の母親が台所に立つ。
しかし福留はと言えば―――
「いえ、今日はここでお暇させて頂きますよ。 いち早く孫娘に会いに行こうと思います」
やはり先程話した孫娘の方が大事な様だ。
とはいえ価値観は人それぞれというもの。
話を聞いてよく知る母親だからこそ、「それじゃ仕方ないですねぇ」と頷き返すしかなく。
「福留さん、大変ですね……」
「はは、でもあの子の喜ぶ所は好きなので苦ではありませんよ?」
そうして見せたのはいつもよりも大きな笑顔で。
よほど孫娘の事を溺愛してるのだろう。
「ではここで失礼します」
こうして踵を返し、玄関へと向かう。
その足取りもどこか軽やかだ。
孫娘の事もあるのだろうが、やはり良い形で話が纏まったのも大きいのだろう。
しかしそんな折、勇もその後を付いていて。
見送りかとも思えたが、どうやらそうではなさそうだ。
「福留さん、帰り際で申し訳ないんですが少し相談があるんです」
「おや? なんでしょうか?」
「実は―――」
そう語ろうとする勇はどこか神妙な面持ちで。
そこに何かしらの深い理由を察して福留も静かに耳を貸す。
そうして打ち明けられたのは、福留すらも頭を抱えてしまう程に難しい提案だった様で。
「うーん、それは今すぐ答えは出せませんねぇ。 ですが検討はしましょう。 それで勇君の自由度が上がるならばいざ仕方ない範疇と言えますから」
「ありがとうございます。 答え、待ってます」
でもその反応は予想以上に好印象。
膨らんだ期待が勇に深いお辞儀を促していて。
福留もまんざらではなかったのだろう。
勇に微笑みを返すと、それを最後に藤咲家宅を後にしたのだった。
こうしてこの日突然始まった福留との対話が終わりを迎え。
今後、勇達の変容問題での対応が遂に正式な契約として履行される事となる。
これから彼等の非日常は常態化するのだろう。
けれどもう狼狽えはしない。
躊躇いも無い。
その迷いも、悩みも、こうして打ち明けられたから。
後はただひたすらにその解決策を追い求めて突き進むだけだ。
その身に秘めた力を思う存分に行使して。
その地盤はもう整ったのだから。
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる