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第三十四節「鬼影去りて 空に神の憂鬱 自由の旗の下に」
~弾頭、射す~
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エイミーが押したのはいわゆるセーフティ全解除のボタン。
後は目標に向けて照準を合わせ、管制官が発射させるのみ。
もうその行動を阻害する物は何も無い。
彼女のたった一言だけで、無数の核ミサイルが目標に向けて空を飛ぶのだ。
「さぁ、グランディーヴァ……ユウ=フジサキ、ここへ来るのです。 自ら焼かれる為に!!」
指令本部巨大モニターでは既にワシントンD.C.周辺の状況が映し出され、ありとあらゆる角度から監視情報伝達が行われている。
地表部に至っては立体状となった地形が細かく描かれており、どこに何があるかがハッキリとわかるほど。
後は来たるべき時を待つだけだ。
アルクトゥーンが次に姿を現す時を。
すると、何かを見つけた監視員が突如として大声を張り上げた。
「機影!! 機影を発見!! 位置、ワシントン直上!!」
「来た……ッ!!」
途端モニターに一つの光が灯る。
それはくっきりとした十字を描いたシルエット。
まさにアルクトゥーンのシルエットそのものだったのだ。
「衛星画像出ます!!」
その時映し出されたのは、光り輝く十字の影の映像。
そこにはかの巨大な形が浮かび上がっていたのである。
鮮明でこそ無いが、ハッキリとわかる程に地球表層と剥離した存在として。
高官達が、ロドニーが、監視員が、全構成員が。
そしてエイミーが。
必ず来ると言って憚らなかった存在が宇宙空間に姿を現したのである。
今まさに彼等の居る街のはるか上空で。
厳密に言えば成層圏ギリギリの高さ、人類が簡単には到達出来ない領域。
だからこそ予想しえた状況に、エイミーが堪らずその場に立ち上がる。
歓喜と優悦に塗れた笑いを高々に打ち上げながら。
「キャッハハハハッッ!!! きき来た!! 来たた!! 来たァーーーーー!!!!」
全ては狙い通り。
こうする事も、こう至る事も。
そして彼女がこう言い放つ事も。
「周辺待機の核ミサイルを目標へ向けて、全・弾・発・射せよッッッ!!!」
発見した時から既にターゲットへ向けてのロックオンは済んでいる。
後はこの一声を待つのみだった。
エイミーの指示を受け、管制官が核弾頭の発射コントロールキーを次々押していく。
彼等に躊躇う事は許されない。
迷う事はエイミー達の役目であり、発射する事だけが彼等の役目なのだから。
「一番から十番の発射を確認」
「三十から四十―――」
「全基発射を確認、全て問題無くターゲットへ向けて飛翔を開始」
今頃遥か彼方、この地からは見難い基地から核弾頭が打ち上げられているのだろう。
この指令室では弾頭全てをコントロールする事が可能だ。
軌道もしっかりシミュレーションされており、指令部内の立体映像にてしっかりと刻まれている。
無数の弾頭が撃ち上がる様はまるで空へと伸びる塔を描くかのよう。
一点に向けて曲線を描きながら上昇していく様をありありと映し出す。
核弾頭は全て着弾式。
今回の目標は大きくとも小さな物体一つ。
大量破壊兵器の様に目標地点上空で爆破する必要は無いからである。
一点に対して最大のダメージを与えるには、爆心地に近ければ近い程良いのだから。
故に核弾頭を一斉に発射したのだ。
目標であるアルクトゥーンへ無数の核弾頭を確実に着弾させる為に。
逃げ道を何一つ無くさせ、広範囲で爆破する為に。
その殆どがきっと別の爆破に巻き込まれて無為に消えるだろう。
だが敵を撃滅する為に、勝利する為にも加減する事は許されない。
無数の軌跡がアルクトゥーンの信号地点へと迫り。
あっという間にその距離を詰めに詰め、もう間も無く着弾を迎えようとしている。
誰しもがその一瞬を逃すまいとモニターから目を離せない。
エイミーですらも歓喜に打ち震えながら釘付けだ。
最高最上の勝利を求めるあまり、その目を血走らせながら。
そして誰もが注目する中―――遂に緊迫の瞬間が訪れた。
「一号弾頭、着弾します!!」
管制官がそう声を上げ。
エイミーが。
高官達が。
そこに居る全ての人員達が顔を強張らせる。
その一瞬に動きを止め、最後の瞬間を見届ける為に。
螺旋を描く様に刻まれた軌跡が目標地点へと達し。
たちまちリミットを刻む数字が「00:00」を映し出した。
―――だが、何も起きない。
軌跡が目標地点を過ぎ去っていったのだ。
「あれ、なんだ? なんで爆発信号が来ない?」
「か、各基、目標地点を通過!?」
「馬鹿な、あれだけの巨体があの数のミサイルを全てすり抜けたとでも言うのか!?」
代わりに訪れたのは指令本部を包む戸惑いの声。
誰しもが目を、耳を疑い、あらゆる情報を確かめようと各所のモニターへと顔を動かす。
エイミー達もそんな彼等の有様を前に戸惑うばかりだ。
「な、何が起きたのですか? 核弾頭が直撃したのではないのですか!?」
「それがどうやら……全弾外したと」
高官の一人がそう答えた途端、エイミーの眼が大きく見開かれる。
彼が一体何を言っているのか、一瞬では理解出来なかったのだろう。
「外し……外すしせたとはなんですか。 外せさないのではないないのですか」
「エイミー、何を言って……」
「は外す? 弾頭核す外す? 外し何故はずずず―――」
途端、まるでろれつが回っていないかの様な意味のわからない言葉を羅列するエイミー。
震えた様な唇の動きを刻み、瞳孔も激しく揺れ動かしながら。
突然の彼女の様子が高官達に困惑を誘い、核弾頭の事すら頭から抜け落ちさせる。
余りにも奇妙な彼女の言動は、護衛のボディガードですら狼狽えさせるほど。
「エ、エイミー……気でも狂ったか」
そうとしか思えない程にその様子は異常だったのだ。
僅かに遡る事、核弾頭着弾予定時刻直前。
成層圏を降下するアルクトゥーン大のシルエットがそこにあった。
その姿は直下または直上から見ればとてもそっくりと言えただろう。
だが横から見れば、たちまちその姿は平べったい光の膜で出来た物で。
その中心に居たのは……なんと茶奈。
【翼燐エフタリオン】を展開しながら滑空する茶奈であった。
なんと、彼女がアルクトゥーンを偽装していたのだ。
持ちうる命力を使い、アルクトゥーンの形を模した高濃度命力フィールドを展開。
それを地上と人工衛星が写し撮り、アルクトゥーンだと錯覚させたのである。
アストラルエネマの力を行使すればこの様な芸当などなんて事は無い。
成層圏から離れ過ぎなければ命力消失は避けられる。
これはア・リーヴェから伝えられた事実。
それさえ守れば、この様に思う存分力を奮う事が出来るという訳だ。
そんな時、彼女の目に煙を吐きながら飛来する無数の何かが映り込む。
それは核弾頭。
巨大な敵意とも言える姿を前にすれば、彼女とて恐れもするだろう。
思わずその顔をしかめさせ、不機嫌さを醸し出す。
「あの大きな姿はやっぱり馴れませんね。 こんな物はもう必要ありませんっ」
するとたちまち展開してたデコイフィールドが光を失い形を崩していく。
もう偽装する必要は無いからこそ、力の供給を止めたのである。
茶奈が起こした行動はそれだけには留まらない。
そのまま間髪入れずに腰に下げた【ユーグリッツァー】を手に取り。
迫り来る弾頭へとその杖先を掲げ、力を込め始めたのだ。
その時放たれしは光の円環が幾重にも重なり創られた光の環珠。
領域一帯を支配する―――全てを飲み込む浄化の光珠であった。
その光珠を残し、茶奈が一瞬にしてその空域から離脱する。
至る結果を見届ける事も、跡目に引く事も無く。
その直後、アメリカ軍指令本部のミサイル管制映像に百を超える『LOST』の赤文字が一瞬にして浮き上がる事となる。
途端、騒然としていた現場に多重エラー音の残響が包み込んだのは言うまでもないだろう。
では、アルクトゥーンはどこへ消えたのだろうか。
どこへ行ったのだろうか。
答えは実に明瞭だ。
勇達は作戦司令部直上二百メートル先への到達を果たしていたのである。
核弾頭が発射された時にはもう既に。
後は目標に向けて照準を合わせ、管制官が発射させるのみ。
もうその行動を阻害する物は何も無い。
彼女のたった一言だけで、無数の核ミサイルが目標に向けて空を飛ぶのだ。
「さぁ、グランディーヴァ……ユウ=フジサキ、ここへ来るのです。 自ら焼かれる為に!!」
指令本部巨大モニターでは既にワシントンD.C.周辺の状況が映し出され、ありとあらゆる角度から監視情報伝達が行われている。
地表部に至っては立体状となった地形が細かく描かれており、どこに何があるかがハッキリとわかるほど。
後は来たるべき時を待つだけだ。
アルクトゥーンが次に姿を現す時を。
すると、何かを見つけた監視員が突如として大声を張り上げた。
「機影!! 機影を発見!! 位置、ワシントン直上!!」
「来た……ッ!!」
途端モニターに一つの光が灯る。
それはくっきりとした十字を描いたシルエット。
まさにアルクトゥーンのシルエットそのものだったのだ。
「衛星画像出ます!!」
その時映し出されたのは、光り輝く十字の影の映像。
そこにはかの巨大な形が浮かび上がっていたのである。
鮮明でこそ無いが、ハッキリとわかる程に地球表層と剥離した存在として。
高官達が、ロドニーが、監視員が、全構成員が。
そしてエイミーが。
必ず来ると言って憚らなかった存在が宇宙空間に姿を現したのである。
今まさに彼等の居る街のはるか上空で。
厳密に言えば成層圏ギリギリの高さ、人類が簡単には到達出来ない領域。
だからこそ予想しえた状況に、エイミーが堪らずその場に立ち上がる。
歓喜と優悦に塗れた笑いを高々に打ち上げながら。
「キャッハハハハッッ!!! きき来た!! 来たた!! 来たァーーーーー!!!!」
全ては狙い通り。
こうする事も、こう至る事も。
そして彼女がこう言い放つ事も。
「周辺待機の核ミサイルを目標へ向けて、全・弾・発・射せよッッッ!!!」
発見した時から既にターゲットへ向けてのロックオンは済んでいる。
後はこの一声を待つのみだった。
エイミーの指示を受け、管制官が核弾頭の発射コントロールキーを次々押していく。
彼等に躊躇う事は許されない。
迷う事はエイミー達の役目であり、発射する事だけが彼等の役目なのだから。
「一番から十番の発射を確認」
「三十から四十―――」
「全基発射を確認、全て問題無くターゲットへ向けて飛翔を開始」
今頃遥か彼方、この地からは見難い基地から核弾頭が打ち上げられているのだろう。
この指令室では弾頭全てをコントロールする事が可能だ。
軌道もしっかりシミュレーションされており、指令部内の立体映像にてしっかりと刻まれている。
無数の弾頭が撃ち上がる様はまるで空へと伸びる塔を描くかのよう。
一点に向けて曲線を描きながら上昇していく様をありありと映し出す。
核弾頭は全て着弾式。
今回の目標は大きくとも小さな物体一つ。
大量破壊兵器の様に目標地点上空で爆破する必要は無いからである。
一点に対して最大のダメージを与えるには、爆心地に近ければ近い程良いのだから。
故に核弾頭を一斉に発射したのだ。
目標であるアルクトゥーンへ無数の核弾頭を確実に着弾させる為に。
逃げ道を何一つ無くさせ、広範囲で爆破する為に。
その殆どがきっと別の爆破に巻き込まれて無為に消えるだろう。
だが敵を撃滅する為に、勝利する為にも加減する事は許されない。
無数の軌跡がアルクトゥーンの信号地点へと迫り。
あっという間にその距離を詰めに詰め、もう間も無く着弾を迎えようとしている。
誰しもがその一瞬を逃すまいとモニターから目を離せない。
エイミーですらも歓喜に打ち震えながら釘付けだ。
最高最上の勝利を求めるあまり、その目を血走らせながら。
そして誰もが注目する中―――遂に緊迫の瞬間が訪れた。
「一号弾頭、着弾します!!」
管制官がそう声を上げ。
エイミーが。
高官達が。
そこに居る全ての人員達が顔を強張らせる。
その一瞬に動きを止め、最後の瞬間を見届ける為に。
螺旋を描く様に刻まれた軌跡が目標地点へと達し。
たちまちリミットを刻む数字が「00:00」を映し出した。
―――だが、何も起きない。
軌跡が目標地点を過ぎ去っていったのだ。
「あれ、なんだ? なんで爆発信号が来ない?」
「か、各基、目標地点を通過!?」
「馬鹿な、あれだけの巨体があの数のミサイルを全てすり抜けたとでも言うのか!?」
代わりに訪れたのは指令本部を包む戸惑いの声。
誰しもが目を、耳を疑い、あらゆる情報を確かめようと各所のモニターへと顔を動かす。
エイミー達もそんな彼等の有様を前に戸惑うばかりだ。
「な、何が起きたのですか? 核弾頭が直撃したのではないのですか!?」
「それがどうやら……全弾外したと」
高官の一人がそう答えた途端、エイミーの眼が大きく見開かれる。
彼が一体何を言っているのか、一瞬では理解出来なかったのだろう。
「外し……外すしせたとはなんですか。 外せさないのではないないのですか」
「エイミー、何を言って……」
「は外す? 弾頭核す外す? 外し何故はずずず―――」
途端、まるでろれつが回っていないかの様な意味のわからない言葉を羅列するエイミー。
震えた様な唇の動きを刻み、瞳孔も激しく揺れ動かしながら。
突然の彼女の様子が高官達に困惑を誘い、核弾頭の事すら頭から抜け落ちさせる。
余りにも奇妙な彼女の言動は、護衛のボディガードですら狼狽えさせるほど。
「エ、エイミー……気でも狂ったか」
そうとしか思えない程にその様子は異常だったのだ。
僅かに遡る事、核弾頭着弾予定時刻直前。
成層圏を降下するアルクトゥーン大のシルエットがそこにあった。
その姿は直下または直上から見ればとてもそっくりと言えただろう。
だが横から見れば、たちまちその姿は平べったい光の膜で出来た物で。
その中心に居たのは……なんと茶奈。
【翼燐エフタリオン】を展開しながら滑空する茶奈であった。
なんと、彼女がアルクトゥーンを偽装していたのだ。
持ちうる命力を使い、アルクトゥーンの形を模した高濃度命力フィールドを展開。
それを地上と人工衛星が写し撮り、アルクトゥーンだと錯覚させたのである。
アストラルエネマの力を行使すればこの様な芸当などなんて事は無い。
成層圏から離れ過ぎなければ命力消失は避けられる。
これはア・リーヴェから伝えられた事実。
それさえ守れば、この様に思う存分力を奮う事が出来るという訳だ。
そんな時、彼女の目に煙を吐きながら飛来する無数の何かが映り込む。
それは核弾頭。
巨大な敵意とも言える姿を前にすれば、彼女とて恐れもするだろう。
思わずその顔をしかめさせ、不機嫌さを醸し出す。
「あの大きな姿はやっぱり馴れませんね。 こんな物はもう必要ありませんっ」
するとたちまち展開してたデコイフィールドが光を失い形を崩していく。
もう偽装する必要は無いからこそ、力の供給を止めたのである。
茶奈が起こした行動はそれだけには留まらない。
そのまま間髪入れずに腰に下げた【ユーグリッツァー】を手に取り。
迫り来る弾頭へとその杖先を掲げ、力を込め始めたのだ。
その時放たれしは光の円環が幾重にも重なり創られた光の環珠。
領域一帯を支配する―――全てを飲み込む浄化の光珠であった。
その光珠を残し、茶奈が一瞬にしてその空域から離脱する。
至る結果を見届ける事も、跡目に引く事も無く。
その直後、アメリカ軍指令本部のミサイル管制映像に百を超える『LOST』の赤文字が一瞬にして浮き上がる事となる。
途端、騒然としていた現場に多重エラー音の残響が包み込んだのは言うまでもないだろう。
では、アルクトゥーンはどこへ消えたのだろうか。
どこへ行ったのだろうか。
答えは実に明瞭だ。
勇達は作戦司令部直上二百メートル先への到達を果たしていたのである。
核弾頭が発射された時にはもう既に。
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